■ 渡辺省亭 / 6館同時開催展覧会情報

■ 渡辺省亭 / 濤川惣助と組んで赤坂離宮の天井画コンペに参加し、並河靖之を破る

 

 

京都府文化博物館学芸員の植田彩芳子さんや

美術家の山下裕二先生らを中心に再評価が進む画家がいる。

 

その名も渡辺省亭(わたなべせいてい)。

 

より多くの人たちにこの画家のことを知ってもらうべく、

展覧会が検討されたのだが、

なにしろ知名度がまだあまりない。

 

そこで各地から一か所に集めて大々的な展覧会を催す代わりに、

省亭の絵を所有する美術館が同時期に企画展や

常設展の一部として展示をすることで

広く見てもらおうということになった。

 

 

特に注目は、東京国立博物館の展示。

省亭は赤坂離宮の花鳥の間を装飾している七宝焼の下絵を描いており、

その貴重な絵が現在東京国立博物館で展示されている。

 

 

6カ所同時展示の各館展覧会情報は以下の通り:

 

 

1) 東京国立博物館

3月7日(火)~4月16日(日) 常設展

「雪中群鶏」及び、迎賓館下絵30枚のうち12枚を出展

展示内容は以下の通り

 


赤坂離宮下絵 花鳥図画帖

 

 

下絵の中の一枚をクローズアップ。

こちらは「駒鳥と藤」。

このように省亭は、落ち着いた色合いで上品な花鳥画を完成させた。

 

1枚ごとにそれぞれ違う鳥と草花を組み合わせており、

それらがバランスよく配置されている。

 

 

 

上述の通り、省亭は濤川惣助と組んで赤坂離宮の天井画を手掛けたが、

実は制作者はコンペで選ばれた。

 

ライバル七宝家の並河靖之も別の絵師と組んでそのコンペに参加したのだが、

最終的に選ばれたのは省亭・濤川ペア。

 

理由は、濤川惣助がもつ無線七宝の技術の方が

並河靖之の有線七宝の手法よりも花鳥をテーマにした装飾に向いていたから、と聞く。

 

確かにぼかしなどを有効に駆使できる無線七宝は

有線七宝よりも絵画的な気がする。

(庭園美術館で見た並河靖之の作品も素晴らしいのだけれど

やや意匠的なイメージがある。)

 

 

ただ、省亭がそうした濤川の技術をうまく下絵で表現したことも

一役買ったかもしれない。

 

 

 

 

ほかに「雪中群鶏」も展示中。

 

 

 

 

2)山種美術館

2月16日(木)~4月16日(日)及び

4月22日(土)~6月18日(日)

それぞれコレクション名品選と花の企画展内にて各2点ずつ。

 

 

3) 松岡美術館

3月22日(木)~5月14日(日)

企画展「美しい人びと」(後期)で4点

 

 

4) 根津美術館

4月12日(水)~5月14日(日)

特別展で1点出展。

 

 

5) 迎賓館赤坂離宮

一般公開情報は: http://www8.cao.go.jp/geihinkan/koukai.html

花鳥の間「渡辺省亭下絵による濤川惣助の七宝焼」30枚

 

赤坂離宮見学の折りに見たこの七宝焼は実に印象に残っている。

下図の作者が渡辺省亭だったことは知らなかったが、

七宝独特の輝きを放ちながら色鮮やかでイキイキした花鳥たちが

そこかしこに息づいていた。

 

 

6) 加島美術

3月18日(土)~4月9日(日)

約30点 (観覧無料)

 

 

 

3月10日付けのエントリーにも記した通り、

省亭はパリで印象派の画家たちと交流し、

画家たちの面前で即興で描いた、いわゆる席画に

署名をしたうえで、エドガー・ドガにプレゼントしたこともある。

 

江戸~明治~大正時代を生き、

パリの美術カタログには名前が掲載されるほど

知られた存在だった。

 

 

http://www.watanabeseitei.org/