ギュスターブ・モローは、象徴主義を代表する
画家の1人です。
……象徴主義って何でしょうか?
象徴主義とは、19世紀後半に起きた芸術運動です。
最初に文学で起こり、やがて、音楽、美術にも
影響を及ぼしました。
美術の象徴主義は、印象派と同じ時代に発展しました。
印象派が「光や空気感などの一瞬の印象」を
描いたのに対して、
象徴主義は、「目に見えないものを、
目に見える形にして」描こうとしました。
19世紀は、産業革命などにより、社会が大きく
変化した時代でした。
科学技術を信奉する人がいた反面、
社会の変化に対して不安や反発を覚えた人もいて、
人間の内面世界を描こうとする土壌ができました。
象徴主義は、不安や苦悩、生死、夢などを
神話や文学、花などのイメージを用いて表現しました。
幻想的・空想的・神秘的な画風です。
ラファエル前派は、象徴主義の一派とみなされる
場合もあれば、そうでない場合もあるようです。
モロー(1826~1898)
モローは、象徴主義の先駆者です。
聖書やギリシャ神話を題材にした、幻想的な世界を
描きました。
モローは、
「目に見えないもの、ただ感じるものだけを信じる」
と語ったといいます。
「出現」、1876年頃、ギュスターブ・モロー美術館
この絵については、
「ギュスターヴ・モロー展―サロメと宿命の女たち― その2」と
「ギュスターヴ・モロー展―サロメと宿命の女たち― その3」を
お読みください。
「オルフェウス」(または、「オルフェウスの首を抱くトラキアの娘」)、1865年、オルセー美術館
オルフェウスは、ギリシア神話に登場する吟遊詩人です。
獣さえ虜にするほどの竪琴の名手でした。
オルフェウスは、妻が死ぬと、彼女を取り戻すために
冥界に下りました。彼の奏でる竪琴の見事さに、
冥界の人々も涙したといいます。
冥界の王は、オルフェウスの妻を返すことを認めますが、
「地上に出るまでは、後ろを振り返ってはいけない」
という条件をつけます。
しかし、オルフェウスは、地上まであと一歩のところで
後ろを振り向いてしまいます。
条件に背いたため、彼は、妻を取り戻すことが
できませんでした。
……日本神話でも似たような話がありますね。
その後、妻を失って悲嘆にくれるオルフェウスは、
女性たちの誘いに応えなかったために怒りを買い、
八つ裂きにされて、首と竪琴は川に投げ込まれました。
モローの絵では、娘が、オルフェウスの首を
竪琴に載せて運んでいます。
彼の首と娘は、穏やかな表情で向き合って
いるように見えます。
→「象徴主義って何? その2」に続きます。