しかし、札幌の空はそう簡単に味方してくれません。週間天気を1日に何回もチェックしていましたが、最初は晴れだったのが当日に近付くに連れて、曇りのち晴れ、曇り、曇りのち雨、やがて雨、みぞれ、雪、2年前と全く同じのコンディションに変わっていきました。
そして、レース当日。完璧な天気予報でスタートの9時にはしっかりと雨が降ってきましたが、幸いなことにこの日は風がほとんど吹いていませんでした。しかし、2年前よりも気温が低く、スタート時の気温が2℃ということで、やはり厳しすぎる条件です。でも、2年前の雪辱を果たすべく、もうやるしかありません。
今回もサブスリーのペースランナーに付いて走ります。前回の反省を生かして、厚めの手袋、耳を覆うニット帽、長袖のロングTシャツにポンチョ、腹には腹巻を巻いてホッカイロを張り付けるという防寒スタイルで挑みました。アップの時には感じませんでしたが、やはり走り始めるとかなり寒いです。走っていると身体が温まってくるかと思いきや、全くの逆で走るに連れてどんどん体温が奪われて冷えていきました。
1周10kmのコースを周回しますが、2kmあたりから緩やかな下りのため、ペースランナーは4分を切ろうかというくらいまで上げて走ります。これは速すぎると思い、無理には集団に付きませんでした。6km過ぎの折り返し後からは徐々にペースを落とすので、難なく集団に追い付きました。9kmからの2kmは4分30秒まで落として、10km通過は見事に帳尻が合い、42分21秒でサブスリーペースぴったりです。ペースランナーは、トータルではなく1周10km毎にペースを合わせていることを察しましたが、公園内以外はさほど高低差を感じないので、そこまで極端にペースを変動させなくても良いように思いました。
2周目からもペースランナーに付きましたが、競技場を出てからの登りが1周目よりも10秒以上遅いペースです。そして、折り返しまでまたペースが上がります。この頃から雨が強くなってきて、時々みぞれに変わり、河川敷コースに大きな水溜りが出来始めていました。段々と身体が冷えてきて、腕に感覚がなくなっていきます。呼吸は苦しくないですが、とにかく寒さで身体が動かなくなってきました。ペースが上がって集団から離されますが、折り返し後にまた落としているはずなので、追いつけるだろうと思っていました。見える位置にはいるものの、なかなか追いつけません。競技場を出てからのスローペースがあったので、1周目ほどペースを落としていませんでした。河川敷を出て公園に向かうコースはかなり狭く、一列になって走るのでペースが落ちてしまいます。そこが18kmくらいですが、ペースを落とさない集団から一気に離されました。20km通過は、1時間24分44秒、この10kmが42分23秒でしたので、まだまだサブスリーペースです。
しかし、3周目に入ると急激に身体が動かなくなり、公園の登り坂を過ぎて下りに入っても全くペースが上がりません。手がかじかんでランパンに入れたエネルギージェルも塩サプリも取ることができませんでした。みぞれは視界を遮るほどの大きな雪に変わり、ここからペースを上げられるわけもなく、もうサブスリーは不可能になってしまいました。
これは、まさに2年前と全く同じ状況です。むしろ2年前よりも早い段階でサブスリーを諦める事態になりました。河川敷に出て遠くに見える集団を見ながら、2年前から何も成長していない自分に腹が立ち、悲しくなりました。1km5分を超える完全なジョギングペースになってしまいましたが、2年前と違って風が穏やかなために、このペースなら走り続けることはでき、競技場へ帰ってきて30kmを通過しました。
2年前は30kmで止めてしまいましたが、ますます悪化する天気と続々とリタイアするランナーを横目に見ても、今年は止めるという選択肢はなく、4周目に突入しました。後で考えると2年前も歩きが入るようなペースになって5時間くらいかけてならフィニッシュまで行けました。結局は自分に負けてしまっていたのです。レースに出ると全てが上手くいくとは限りません。自己ベストから程遠い記録になりそうな時、はっきり言ってそんな記録はいりません。でも、よほどの故障ではない限り、最後までレースを捨てずにゴールすることが大事と思います。2年前のリタイア後に自然と流れてきた涙は、サブスリーを逃した悔しさではなく、行こうと思えば行けたのにレースを捨ててしまった自分に対する情けなさだと4周目の登りを終えて入ったトイレで気付きました。
その後は、河川敷に溜まった水溜りを避ける力もなくバシャバシャと浸入してシューズをずぶ濡れにしながら、5分30〜40秒くらいのペースで淡々と走り続けました。
競技場に戻って40kmを通過し、いよいよ公園内の最後の2,195kmコースへ入ります。2年前は走れなかったコースですので、前日に下見をしていました。寒さで凍える身体に鞭を打ってラスト1kmからは少しだけペースを上げるとあっという間に競技場が見えてきて、無事に公式タイム3時間23分59秒でフィニッシュしました。
絶対にここでサブスリーを掴むと強い思いを持って挑んだのでもちろん悔しさはあります。それでも、この時期の北海道だからこそ体験できるとんでもないコンディションの中で一度も歩くことなく走り切って、2年前は受け取れなかった完走証をもらうと、不思議と悔しさよりも清々しい気分になっていきました。それは、まだ気合いを入れれば行けるのにレースを捨ててしまった2年前の情けない自分と決別できたことによるものでしょう。記録は納得のいくものではないですが、このレースは自分でもよく頑張ったと胸を張って言えます。こういう辛くても最後まで諦めずにゴールまで走り切ったレースは、必ずや今後に生かされるものと確信しています。だから失敗レースでもレースを捨てるようなことはしてはならないんだと、今思います。
色んなことを学んだ2016年のラストレースでした。