折り返しを見たら作者のお姉さんが美人で驚いた。
九つのお話が収められた短編集で、日常のなかにある小さいけれども大切なできごとや転換点が人物の心情をていねいに描きながらつづられています。
食べ物や家の描写がこまかくて、わたしにはなじみのないインド風の暮らしですが情景がよく浮かびました。
物語は秋風が吹くような寂しさを感じさせる結末が多いですが厭味な感じではありません。生きていれば避けされない悲しみをちょうどよい(わたしには)テンションで書いているように思います。
訳もあっさりしていてとても読みやすかった。女性的な文体にしなかったことがかえってこの作品の魅力を高めたと思います。
六つめのお話「セン夫人の家」にとても心に響く言葉がありました。
セン夫人はインドから夫の転勤に伴ってアメリカへやってきた老齢の女性で、昼間の仕事として主人公である小学生の男の子のシッターを始めます。学校が終わると少年は夫人の家に行き夫人が大量の野菜の皮むきをするのを見ながら話をします。
ある日、セン夫人はにぎやかな故郷を思い出して今いる場所の静かさを嘆きます。静かで眠れないことすらある、と。そしてふと漏らします。
―――「ねえ、いま胸が張り裂けそうに叫んだら、誰か来てくれるかしら」
静かな口調でこぼされた言葉、でもその中にある切実な想いに胸を打たれました。
わたし自身そんなふうに思う夜がたまにあります。誰でもいいからそばに来て、って。
これもまた、秋の夜長に読むには良い本だったなあと思いました。
停電の夜に (新潮文庫)/ジュンパ ラヒリ

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