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 焼成後の窯の中、白炎の熱気がわずかにのこる。焼き尽くされた後のその香りが好きだ。
    
      多くの想いが揺らめき始める。
 
 ヒマラヤ、しんしんと成層圏から垂直に降ってきたような一面の冷気の中、シュラフの表面は
薄く霜がはりついていた。そしてカンチェンジェンガは深い蒼から赤へ染まった。
 
 春、幼い頃、もぐり込んだ里山の中腹の穴は、古墳の入り口だった。懐中電灯の弱い光、
鮮やかにオレンジ色の渦文様が現れた。
 
 中米、低地ジャングル、空気は極限まで水分を含み、そして暑い、ハミングバードが舞い飛び、
頭上の樹間からわずかに見える青空、原色の大きな鳥が叫びながら飛び去った。屹立するマヤの遺跡を
登りきると密林の上に出た。嵐の空王、盾ジャガー王、風が吹いた。眼下にはどこまでも分裂する緑の文様が広がった。
 
 ウォーレス線を越えると植相は、大きく変化した。大地はインド洋までいっきに続いている。スコールの雲は全速力で走るバイクに瞬く間に近ずき、最初のカンポンの手前ですべてをずぶぬれにし、通りすぎた。野焼きの後の火がそこここでくすぶる。土器作りの村は、ひなびた空気が漂っていた。スコール後の強い陽射しで、そこらじゅうが輝いていた。軒下で老婆が彫文の施された壺を磨き続けていた。

 標高3500メートルに在る町、レー。暗いほどに蒼い空。ゆっくりとそして無理やりに足を押し出す。肺が酸素を欲する。崩れ落ちそうな王宮の背後の丘。小さなゴンパが在る。そこからはカラコルムとヒマラヤの間に広がる扇状地、草木の無い月の高地が一望できた。気流が聞こえる。昼下がり、まどろむ。ふと眼を開けると若いラマが立っていた。彼は堂の扉を開く。ラマに続いて中に入った。バター灯明と読経、極彩色の世界が渦を巻く。