母の本業は占い師、副業はセラピスト。
そのため店内はゆったりくつろげるような自室的な感じのつくりになっている。
外見はレンガ作りの小さな家で、見た目は喫茶店に見える。来訪者の中には安らぎを求めてくつろぎにやってくる人も多い。
占いの依頼は近年のインターネット普及でもっぱら最近はメール相談が増えているそうだ。
それでも母は対面を大事にしていて悩み事によってはこちらから出向くこともある。
そして今日の訪問者は古風に直筆の手紙で悩みをつづり、直接会いたいといっているそうだ。
母はちょっと癖のあるお客様と苦笑いしていた。
『ガララン』玄関の青銅色のベルが揺れた。お客様ご来店の合図。
母が音に反応して顔を上げるとすでに依頼人は対面のいすに静かに座っていた。
母は驚いたがすぐに冷静な顔に戻って「いらっしゃいませ、手紙を拝見いたしました」柔和な笑顔で出迎えた。
依頼人の名前は『島崎美貴』26歳。彼女は肩が出た白いレースのワンピースに、白い薄手のガウンをまとってハンドバックを抱えるように持っていたそうだ。そして艶やかなロングヘアーが神秘的な雰囲気を出しかなりの美人だったらしい。しかし艶やかな外見とは裏腹に存在感が薄く、目は母を見てはおらずどこか遥か彼方を見ているようだったそうです。
母はこのときこの女性に何か違和感を感じたようだったがその時にはわからなかったらしい。
「手紙をみてくれたんですよね。どうしても孝之さんと相思相愛になりたいんです。彼を私に振り向かせるためのおまじないをしてください」
真剣な表情で、ハンドバックを胸に抱きしめて懇願していた。
しかしその真剣な目には輝きはなくどこか病的な印象が強かった。
母の印象は深い愛情というよりほしいものは何でも手に入れたいというわがままな子供のように見えたそうだ。
「美貴さん。あなたは孝之さんと結ばれてその後どうしたいの」
「何をいっているの?結ばれるのが当然じゃない。じゃま取り巻きを排除するのよ」
彼女はその時を想像して恍惚していたようです。
「そうですか、少し準備に時間がかかります。孝之さんの身辺も調査が必要となります。また1週間後にお越しくださいませ」
不服そうな彼女の顔から邪気を感じたそうです。
「それ以上は待てませんよ」
『ガララン』玄関の青銅色のベルが揺れた。
ボクが帰宅したのはそのころだった。母は入ってきたボクを見て何か言おうとした。しかしテーブルの真向かいにあるいすを見て何も言わなかった。
「ただいま母さん。どうしたの」
「いいえ。なんでもないわ。それより鏡は預けなかったのね」
「鋭い。よく分かったよね」
「店の玄関から入って来るからよ。急ぎの報告がある時はいつもそう」
「あれ、いつもそんな事していたっけ」
ちょっと苦笑いをして母の向かいのいすに座らせてもらった。そのいすにはいままで誰かすわっていたような温もりを感じた。
神主さんの話では鏡とボクは霊的に強いつながりができてしまったらしい。そのため引離しても鏡がボクのそばを離れない。しかも絆が強くてお払いができないらしい。結局今日は魔よけにお札をもらってきただけだった。そのお札もどこまで効くのか定かでないものなのだ。
一通り報告を終えると
「そう、なら任せるしかないわね。母さんは午後予約が入ってないからちょっと出かけてくるわね」
と母は仕事の依頼で何か調べに行くとこにしたらしい。
夕飯の時間には戻るからという母をボクは玄関で見送り、店を休業にして置いた。
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