アーリィアの目の前で盾となったシュウが吹き飛んで行った。一頭目は左側からの攻撃で防いだが、折り重なって突進してきた2頭目にやられてしまった。

そして2頭目の突進は勢い衰えずアーリィアの目前へと迫っている。

この段階で自分は死亡が決定したと覚悟していた。もう今の自分にはどうすることもできないことはう疑いようがない。

いまだに全身を強打した時のシビレが引かず指ひとつ動かずにいた。

ティガレックスの顔についた赤いキズがランプのように揺れてゆっくりと動いている。

人は死ぬ寸前には何もかもスローに見えるということを他人事のように思い出していた。アーリィアはさらに迫る赤い軌跡をただ見ているしかなかった。



 その赤い軌跡の間に黒い影が割って入ってきた。それは人影に見えアーリィアはとうとう幻覚まで見え始めたと思った。そして視界全体が右へ流れて行き、背後でものすごい激突がした。気づくとアーリィアは幻覚と思っていた青年に抱き抱えられていた。アーリィアがよく状況を把握する前に青年はポーチからモドリ玉を取り出し投げ付ける。緑の煙幕が立ち込めると同時にアーリィアは意識を失っていた。



 アーリィアは研ぎ石の甲高い音で目が覚めた。目を開けるとそこはテント内の簡易ベッドに寝かされていた。そしてテントの入り口であぐらをかいて太刀の手入れをしている青年の姿が見える。青年の装備はポッケ村では見ることのないものだった。

確かあの装備は『アセルス』シリーズだったと思う。先程のアイルーのような身のこなしの青年にはとても似合っている。防具の特徴は頭部のキノコ状のヘッドに銀縁ゴーグルとアイルーのような目と髭の飾りがあり、腰のポーチにはアイルーの尻尾に似たものもついていた。どことなく獣人アイルーを髣髴させるようないでたちである。色は赤く、赤虎と呼ばれるアイルーと同じ色。全体的には軽装スピード重視の服に近い防具である。

「この人はドンドルマのギルドから派遣されたのだろうか」とアーリィアははじめに思った。

以前ドンドルマの町へ師匠と出掛けたときにこの装備をしている人を見かけたことがあったからだ。

でもすぐに否定した。ギルド関係者はギルドナイドと呼ばれ服装も違う、それにさほど緊急事態が起こらなければ介入することありえないからだ。



 アーリィアが無言で見つめていると、真紅の太刀『スビースネークⅡ』に研ぎ石をかけていた青年が気づいた。蒼穹のような碧い瞳がとても神秘的で、ドキドキしながら見つめてしまう。

「にゃにゃ!アーリィア殿気がついたであるか」

アーリィアの中で何か割れた。

「イケメンなのに。頭わるそう」と思わずつぶやいてしまった。

「にゃにゃどうしたのにゃ。まだ痛むところがあるのかにゃ」

「いいえ、助けてくれてありがとう」慌てて礼をいい咄嗟に誤魔化した。どうやらその青年には聞こえなかったらしい。冷や汗をぬぐうとアーリィアはベッドから出た。


左矢印思い出の太刀その13   思い出の太刀その15 右矢印


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