ポルトガルの夕焼けは美しい。

 四月頃から一滴の雨も降らなかったポルトガルも、九月の中旬あたりからそろそろ雨期に入り、雲がではじめる。

 雨期のはじまりには、急に風が吹きだしたかと思うと、どこからやってくるのか、真っ黒い雲が沸きたち、にわかにバチャバチャと音をたてて雨が降りはじめる。
 粘土質の地面はたちまちにぬかるんでしまう。

 雨期と云っても日本の梅雨の様な雨量はなく、一週間降ったり止んだりがあったかと思うと、次の一週間は全く降らないと言った具合。

 でも夏の晴れと違うのは雲があること。
 そしてその雲が美しい。
 とりわけ夕陽に映える雲は筆舌では尽くせない。

 様々な紫、様々なピンク、様々な赤、様々なオレンジが、様々なグレーと混ざり合って刻々と表情を変えていく。
 遠くには昼の名残のトルコブルー、そして輝くプラチナの白。

 夕陽自身もその色を変えつつ、また幾分かたちも変えつつ、惜しげもなく瞬く間に沈んで行く。
 ときたまカモメの黒い影がさえぎり「ハッ」と我にかえる。
 絵を描いていてもその筆を置き、呆然と見いってしまう。

 ワインを片手にしたいところだ。
 それもできたら熟成された年代物のポルトワイン。
 ポルトワインの深い赤とその夕焼け色はぴったりとコーディネイトする。

 残念ながらそんな時はほんの一刻でしかない。
 短すぎる。でも短すぎるから又いいのかも知れない。

 ユーラシア大陸の西の果て、ポルトガルほど夕焼けの似合う国はない。
 もうそこには海しかない。出て行かざるをえなかったのか、やがて大航海時代がはじまり、ポルトガルに巨万の富をもたらすことになる。
 そんな過去の栄光を投影しているかの様な夕焼けにも思える。
 ポルトガルに「サウーデ」。

 美しすぎて絵にならないと言う事があるが、まさにそんなオウトブロ(十月)の至福のひと時である。VIT

 

(この文は 2002年10月号の『ポルトガルの画帖』の中の『端布れキャンバスVITの独り言』に載せた文ですが 2019年3月末日で、ジオシティーズが閉鎖になり、サイト『ポルトガルの画帖』も見られなくなるとの事ですので、このブログに少しづつ移して行こうと思っています。)

 

 

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