京都府宇治市で音楽教室&ピアノ教室
「アルペジオミュージックスクール」を主宰しております
磯部太美枝です
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台風10号が近づいている様で、落ち着かない毎日です。皆さま、どうぞお気をつけください。
「日本のピアノコンクールについて思う事 ⑥」 として、前回予告させていただきました「コンクール前に行われる審査員によるレッスン」について書きます。いろいろなケースがあると思いますが、私の経験を中心に書いていきます。
以前の投稿でも書きましたが、私の生徒さんが初めて参加したコンクールは「かやぶき音楽堂ピアノデュオ連弾コンクール 子どもの部」です。
「ザイラーがコンクールが開催するので、あなたの教室からも参加しませんか?」
とフランク先生から電話をいただいたのが、きっかけでした。
そのコンクールがとても楽しかったので、生徒さんとの希望もあり気楽な気持ちで、4人の生徒さんが堺国際コンクールに申し込みました。そしてその事をフランク先生に報告したところ、
「そのコンクールはとてもレベルが高いので、もし参加するなら私がレッスンしてあげるから連れて来なさい」
と言われました。
当時の私は純粋というか、世間知らずというか、バカでしたので
「私の生徒を、ピアニストであるフランク先生がレッスンしてくださるんですか!」
と喜んで、4人の生徒さんに付き添ってレッスンに行きました。
これがフランク先生の、コンクールに向けての孫弟子レッスンの始まりの経緯です。そしてこの孫弟子レッスンはこの後昨年まで、20年余り続けてきました。
ある先生が、生徒の中で特に優秀な生徒を単発で自分の先生にレッスンをしていただく、いわゆる「孫弟子レッスン」は、音高音大に進みたいという意志の生徒に対して、昔からよく行われていました。
この孫弟子レッスンが、子供のピアノコンクールが盛んになるにつれて、コンクールのためにも頻繁に行われる様になったように思います。それはフランク先生だけでなく、他の先生方も同じと思います。フランク先生のところに、私以外の先生の生徒さんが多数レッスンに来られていましたし、入賞者記念のプロフィールなどをみていると、先生とその先生の先生の名前が書かれているのをよく目にしました。
さてこのコンクールに向けての孫弟子レッスンは、本当に必要でしょうか。
私の場合を振り返って考えてみます。
フランク先生のレッスンは、兵庫県西宮市で行われていました。マンションの4階と5階にレッスン室が2つあり、雰囲気はヨーロッパ風で、いろいろな絵や写真が飾られていました。
レッスンは楽しく、いつも丁寧にご指導いただきました。コンクールに向けては、レッスン2回と練習会というケースが多かったと思います。練習会は、レッスン室にフランク先生の生徒さん、私の生徒さんの様なフランク先生の生徒の生徒、孫弟子が集まりコンクールの曲を発表して、演奏後はフランク先生からコメントをいただくというものでした。
コンクール本番の前に、フランク先生のレッスン、そして練習の会という目標ができると、練習にも熱が入り、演奏レベルはあがりました。フランクのレッスンを通して多くを学び、練習の会では他の生徒さんの演奏から刺激ももらいました。
そんなフランク先生のレッスンの様子について、過去のアメブロに多数投稿しています。その投稿を読めば、フランク先生のご指導によりすばらしい成果があがったと思われるでしょう。
ですが本当にそうだったのでしょうか。もちろんそういう部分もあり、いままでの投稿に嘘はありません。
だからといってそれが全てではありません。物事には表事情と裏事情があって、普通は裏事情は語らず、自画自賛は避け謙虚な気持で語るでしょう。私もこれまでずっとそうしてきましたが、今回は今まで語ってこなかった部分を、少し品がないですが自画自賛しながら、事実を正直に書いていきます。
興味のある方は、引き続き読んでみてください。
まずコンクールに参加する事ですばらしい成果をあげてきたのは私、努力してきたのは生徒さん、それを支えてくださったのはご家族の皆さんです。フランク先生のレッスンはそのきっかけにすぎません。
レッスンでいろいろコメントをもらいますが、はっきり言ってそんな事はすでに分かっている事がほとんどです。分かっていてもまだそのレベルまで到達していないだけです。一般の子供のレッスンのむずかしさは専門的なところではなく、そこに至るまでのところです。その事は、街のピアノの先生なら、みなさんお分かりと思います。そしてその部分については、フランク先生をはじめ、コンクール審査をされている様な先生方にとっては専門外の話です。つまりはっきり言って何の役にもたちません。
なのにレッスン料は高額です。そういう先生方のレッスン料の相場は、「私たちのお月謝=先生方の1レッスン料」かと思います。そしてレッスン会場までの交通費も時間もかなりかかります。
そんな負担があってもレッスンに行く1番の理由は、はっきりいって「点数アップ」です。前にも書きましたが、子どものコンクールにおいて、コンクールに参加する様な子は、教室の中で優秀な生徒です。その生徒が練習を積み重ねてやってきますので、みんな上手で大きな差はありません。なので審査の先生方が何気なくつける1点の差で、審査結果は大きく変わってきます。
レッスンを受ける事が点数アップにつながりいい成績が取れなければ、レッスンを受ける意味がないとは言いませんが、少なくなるでしょう。
「コンクールはゲームみたいなもの、結果は気にしなくてもいい」
フランク先生はよくそう言われますが、コンクールに参加する子供たちは、真剣に賞を目指して全力で努力します。そして頑張っても賞が取れなかった時はとても悲しみ「ピアノをやめる!」という子もいるのです。
審査員の先生方にとっては「気にしなくてもいい」小さな事かもしれませんが、子どもにとっては一大事だという事をもっと知っていただきたいです。
そして私は「賞をとらせてあげたい」という気持ちから、審査員の先生の好みに合わせた演奏に導く指導を行い「本当にそれが生徒さんのためになるのか」と自分に問いかけています。
印象を良くするため、衣装にこだわり、ステージマナーも教えていますが、そこから礼儀を学ぶのは良い事と思いますが、「手をお腹に当てての不自然なおじぎ」を大真面目にしている女の子を見ると、これでいいのかと疑問を感じています。
コンクールに参加するためには、日頃のレッスンのお月謝のほかに、出演料が必要です。その上審査員の先生のレッスン料に交通費となると、金銭的な負担もかなり大きくなります。レッスンに付き添っていく私にまで、お礼を用意してくださる保護者の方も多く、ありがたいと思いながらも申し訳なく思ってきました。
冷静に考えれば、生徒を紹介して付き添いまでしてくれる先生にお礼をしなければならないのは、それによって営利を得ている先生の方と思えてなりません。
長々と思いつくままに書いて来ましたが、「日本のピアノコンクールについて思う事 ⑥ 孫弟子レッスンは必要か」の結論は、私の考えでは、指導経験が浅い若い先生は別として、基本的には「不必要」です。
一般の子どものピアノコンクールについての指導は、その道のプロである、私たち街のピアノ教師に任せてほしいです。私たち街の教師は、生徒さんのレッスンをしながら、生徒募集にも労力を注ぎ、自分の練習や教材研究、生徒指導について学びながらがんばっているのです。
審査員の先生方は、本格的にピアニストを目指して学びたい生徒の指導に専念していただきたいです。そのためには審査に時間をとられ、レッスンにまで時間をとられていては、ピアニストとしての魅力が失われ、優秀な生徒にとっても、弟子であった私たちにとっても、学びたい先生でなくなってしまいます。ベテランになっても、常に自分を磨く姿を見せる事こそが、コンクール前のレッスンより、生徒さんに与える影響は大きいと思います。
と私がアメブロに書いたところで、審査員の先生方が私のアドバイスに耳を傾けてくださるとは思えません。ですから私たち街のピアノ教師が自分の指導に自身を持ち、点数欲しさに審査員の先生のレッスンを受ける事をやめないと、この悪しき習慣はずっと続いていくでしょう。
「他の先生にも言っておいてあげたから!」(私の生徒に加点すること)
昨年のコンクール予選のあと、先生から何気なく言われた一言、
この一言に、私ははっきり言ってとても腹がたちました。
「審査って、やっぱりそんなもんなの?」
「それを口にする?」
「そんなコンクールはいらない!」
これが今年コンクールに参加しなかった、そしてできれば今後ももう参加したくなくなったきっかけでした。
今後コンクールに参加するかどうかは、生徒さんの希望を聞いて考えていきます。ですがもう上記の理由により、フランク先生はじめ審査員の先生のレッスンに生徒を連れて行く事は、全てやめる事にしました。
お盆休みから「日本のピアノコンクールについて思う事」について①〜⑥まで連続で書いてきました。そうこうしているうちに夏休みが終わり、2学期が始まりました。
「日本のピアノコンクールについて思う事」はまだありますが、一旦休憩して他の話題も挟んでいこうと思います。ぜひまたのぞいてみてください。