オペラ ブログ 4 | アルページュの日記

オペラ ブログ 4

青ひげ公の館に

高級車でやってくる(!)ユディットを、

ソプラノの

ナディアミカエルが

素晴らしいハンガリー語で歌い、


主である青ひげ公を、

マリインスキーの名バスで

まだ30代のミハイル・ペトレンコが

歌った。


ペトレンコのバスは、

レネ王を歌ったバーニクの

強壮な低音と違って、

裏色にとてもナイーヴなものを持ち、


ユーディトに

秘密の部屋=自分の内面

を暴かれるたびに、

すり減っていくような

憔悴の表情を見せる。


自分の心の闇をつきつけてなお、

寛大な愛を注いでくれる

絶対的他者を、青ひげ公は求める。


なんというか、

この話を「男と女の越えられない溝」

といった紋切型に貶めたくない。


「他者という期待とミステリー」の

オペラであり、

ユディットと青ひげはお互いが

光でありシャドウであり、

ひとつの存在なのである。

バルトークの精緻な音楽は、

ただこの物語を語るためだけに

作曲家の全知性が注がれている


圧倒的な世界観だった。


人の心の中にはまた内部があり、

そのまた内部が無限に続いている...。

すべてのミステリーは心にある。


光を見たいと願ったイオランタと、

光を捨てて闇に惹きつけられた

ユーディットもまた


存在の二つの渇望をあらわし、

彼女たちが

二人で一人であるかのような印象を

得た。


演出家の

このような仕事を見せられると、

舞台で起こることの貴重さに

改めて厳粛な感慨をおぼえてしまう。


ゲルギエフの指揮は、

後半のバルトークで

いよいよ冴えていた。


彼もまた「オペラ座の怪人」で、

ピットの中で

幾多もの幽霊を呼び寄せて来た

凄いマスターなのだ。


名作が続いた

2014-2015の

ライブビューイングの中でも、

演劇的な衝撃性において

ベストと呼べる上演であった。