四十九日までは待っていようと思っていた
けど明らかに使わない物-父の歩行補助機や
杖、ウォーキング用のシューズなどはリサイ
クル店に持って行く準備をする。父の部屋に
入るたびに眺めながら立ち尽くし、父の面影
を脳裏に浮かべる。
12月後半の脳梗塞からの退院後、外出が難
しくなってしまった父。年初の尻餅での圧迫
骨折を負ってからほとんど座ったきりの生活
になった。父が仕切りに私に頼んだのは米粒
を小皿に入れて庭先の台の上に置いて欲しい
と言うこと。何でまたと思い、数回無視した
末対応したが、スズメが食べに来るのを楽し
みにしていたようだ。
その習慣を思い出し、小皿に米粒を入れて
おいておいた。翌日ずべてなくなっている。
雨風に飛ばされてしまったのかと思ったけど、
周りにも一粒も残っていない。
週末父の部屋の整理に入るとちゅん、ちゅ
んとスズメの声が聞こえる。一羽、しばらく
すると二羽、三羽と仲間を呼んで来ている。
父の声が聞こえる。「スズメがかわいいん
だよ」。ここに座って眺めていたんだね。父
のささやかな楽しみに心和む。