父には嗅覚がありませんでした。
正確に言うと、
子供のころに大怪我をして嗅覚を失ってしまいました。
ある日、私は訊ねました。
「父さんの覚えてるにおいってある?」
彼は答えてくれました。
「あるよ。海とたくわん、かな。」
彼は和歌山県育ち。
畳から竹が飛び出してしまうようなお家に大勢の家族で暮らしていました。
においと記憶はとても密接な関係であることが証明されています。
においから辿ることのできる彼の記憶は人より少ないかもしれません。
雲の上の彼に伝えたいです。
「いま私はアロマが大好きなんだよー」