おはよう!

母が動き出した気配を感じて
キッチンに続くドアを
あけると


すぐ目の前に母が
立っていた


わぁ、びっくりした!



あまりの近さに思わず
声が出てしまった



険しい顔をして
カバンを持ち

家を出る!
そのままスタスタと
玄関へ

ついてこないで
私1人で行くから
あんた、子供のことしなさい







実は昨夜、私がテレビを見ていると
何やらパンパン叩く音が聞こえてくる
最初はゴキブリでもでたのかな?
なんて思ってたんだけど

何回も断続的に音が聞こえてきて
これは様子がおかしいなと
母のいるリビングのドアをそっと
開けてみると


母が孫の手を持って
クッションを叩いたり
新聞紙でテーブルを叩いたりしてる



どうしたの?と聞くと



私毎日これだけ家の用事をしてるのに
毎週運動に行けってお父さんが言う!
こんなに私やってるのに
まだやれって言う




母は先週から週に一度

運動メインのデイサービスに通っている




家事や父の世話、こんなにやってるのに

さらにデイサービスに父に行けと

言われたことに

腹が立っているようで




私が

そんなに嫌なら行かなくていいよ

毎週じゃなくても

2週間に1回でもいいんよ



と声をかけたんだけど

座っていた椅子ごとプイッと背を向けて

まるで小さな子供みたいに拗ねてしまった



そんなことが前日にあったので

私は朝母が起きてきたらまず

様子を見ようと準備していたのだ



玄関から出て行こうとする母を

引き留めても今は抵抗するだけだな

と思ったから



出ていく母を一旦見送り

少し間を置いて、遠くから母の後をつけていき

バス停で止まってる母に追いついた




実はこうやって母が家を出るのは

2回目で

2月の終わり頃だったか

父が大きな声で怒鳴ってるなぁと思ったら

父がお風呂に入ってる間に

母は出ていってしまっていて

姉と私と彼、長男で探して探して

姉の家の近くにある

大きな駐車場の隅っこに

ポツンと座っている母を見つけた



あの時の母も今回のように

すごく怒っていて

もう家には帰らない

どこで死のうか考えてた

と真剣に言ってた




バスを待つ母に



どこに行くん?

と聞いても口をキュッと閉じたまま



言葉は出てこないけど

顔は怒りでひきつったり

悲しみで情けなさそうになったり

溢れる気持ちはあるけど

言葉に出せなくてくちびるを震わせたり

母の表情、全身に感情が全て現れていたなぁ




お母さん、バス何時にくるん?



55分



今何時?

お母さんのケータイ見て

私スマホ充電切れたからわからないんよ




55分




じゃあそろそろバス来るね〜




と言ってくるっと後ろにある

バスの時刻表をみると

朝1便は6時55分

と書いてある




お母さん!

バス6時55分よ

今5時55分よ!

あと、1時間もあるじゃん!





と、そこで母と顔を見合わせて

大笑い




やだー

お母さん



えー

そんなぁ

1時間もここで待てんわ

どこか行ってやろうと思ったのにー



なんかお互いの緊張の糸がぷつっと切れて

早朝の静かな街に母と私の笑い声が

大きく響いた




そんなやり取りをしてたら

姉も来て

とりあえず母を姉に任せて

私は一旦自宅に帰宅




最初の家出は徘徊が始まったのかな?

とハラハラしたし


今回も認知症が進行して感情のコントロールが

できなくなってるんだろうと姉と心配した




でもね

今回も、前回の家出の時も

母の話し聞いてみると





父の罵倒罵声をきっかけに

母の堪忍袋がブチ切れての

家出



認知症の影響もあるとは思うけど

自覚ない行動じゃないんだな

とわかって

そのことに安心した





私さ、姉と話しながら

この状況をどうしたらいいか

考えてて


母が自分の気持ちを父に

言えるように背中を押そうとか


母にキツイこと言わない

よう父に言おうかとも

考えてたんだけど



母は前回も今回も


家出したい

帰りたくない

死にたい



なのに私や姉に見つかって

家に連れ戻されるのが

悔し〜って言ってて



母は

「父と分かり合いたい」

より



もう我慢したくない

好きにしたい!

好きにさせてってことかもな?

と思った



バス停から姉の家に移動した母は

姉と朝食を食べた後

歩いて帰るって言ってるんだけど

って姉から連絡きて



お母さんの好きにさせて

と返事した

ただ電話にだけは出てね

と伝えてもらった




前回の家出は

連れ戻されたくないからと

電話には一切でてくれなかったから




しばらくすると

元気にただいまー!

と帰ってきた




家を出て行く時のひきつった表情が

すっかり柔らかい表情になってて
もう大丈夫だなって感じた


さぁ、張り切って掃除するよー
と言う母の声はモヤザワしたものがない
スッキリとしたものだった

そして
改めて私に

「お騒がせしてすみませんでした」
と頭を下げにきてね


私、母に頭を下げられると
なぜか胸が痛む
なんでだろう
気を使われているような
遠慮されてるような
他人行儀な気がしてしまうからかな



ちょっとやめてー
全然気にしてないからー
お母さんよくやってるよー



と、返した




夕方、姉と会って
朝の出来事を話した


姉が1人で歩いて帰る母の姿を
見ていると
途中足を止めて道端の花を見たりして
あの時間がお母さんにはよかったのかも
知れない


次お母さんが家出したいと言ったら
1人で行かせてあげようね

2人でそう決めた



色々な感情が湧いて
1人になりたい!
そう思う時に
1人にならせてあげたい

自分の気持ちに折り合いをつける
時間って必要だ


80歳になった母にだってそんな
時はある

記憶は薄れていくけど
感情は豊かに溢れ出ている母だから

父からも
娘の私達からも
離れた
自分だけの時間


そんな時間を味わわせて
あげたい


妻ではなく
母でもない
1人の人間である時間を




とはいえ、時々住所がわからなくなる
母だから
安心のためGPSで居場所は
すぐにわかるようにもした


私達の準備はオッケーよ!