彼女の紅茶 #A CUP OF TEA 2020。 | aroma relax -haru. ~町田市相原のちいさな一軒家サロン~

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アロマの香りとオールハンドでのオイルトリートメントで頑張る女性の心と体をやさしくほぐせるサロンづくりを目指しています。



紅茶、といえばすぐに頭に浮かぶ友人がいます。



今日はその友人と紅茶のはなし。
長いけど、してもいいですか。



友人とは、初めての、いわゆるママ友です。



今から17年ほど前。
私たち夫婦は、縁もゆかりもない相原という土地に引っ越してきました。
そこは、主人の通勤に程よいということだけで選んだアパート。
いつか子供を産んで育てるにも静かでよさそうかな、と。



若さゆえ、全部がただ勢いだけで進んでいて
思い返すと自分のことながらハラハラします。



1年後、息子を授かり熊本での里帰り出産。
両親、親戚に常に囲まれ賑やかな毎日でした。



そこから一転、
知り合いも親戚もいない相原に息子を連れて帰ってくると。



しーん、と静かな部屋に小さな小さな赤ちゃんと二人きり。



アパートは、実家の昔ながらの一軒家と違い
狭くて、密閉されていて、寒い。
そう。
まだ夏なのに寒く感じました。



そして一日が長く果てしない。
主人はなるべく早く帰るよう努めてくれましたが、それまでの時間が長いのです。



あ、そっか、誰とも喋ってないからだ。



しばらくして、そう思い至りました。



時間を持て余して疲れる。
そんな感覚は初めてでした。



もちろん赤ちゃんは可愛くて。
好きな人が一生懸命お父さんをしている姿は微笑ましく。
ベビーカーを車に積んで週末出掛けたり。
喜んだり笑ったり。
楽しい思い出もたくさんあります。



むしろ今となってはそういうことしか思い出すことはありません。
都合よく良い記憶だけを掬いとっている感じですね。



でも今回。
彼女とその紅茶のことを思い出した途端。
あの日々の薄暗い部分もまた一気に雪崩れこんできました。
久しぶりに見た陰の記憶もまた懐かしいものです。



彼女は坂の上の一軒家に住んでいました。



イギリス人のご主人と、息子と一才違いの女の子をもつ、わたしより年若いママでした。



初めて出会ったのは、坂の途中。
ふたりともベビーカーを押してすれ違いざまのこと。



「こんにちは!」



目の覚めるような明るい声に驚いたのを覚えています。
『笑顔』のお手本のようなキラキラとした笑顔でした。



「わあ、かわいい!何ヵ月ですか??」



息子を見て話しかけてくれて、すぐにお喋りが始まりました。



それから仲良くなるのに時間はかからず、
連絡先を交換し、お互いの家を行き来するようになりました。



「おひまなら、今日遊ぼう♪」
「うちのプール出しましたよー」
「一緒にランチしませんかー」
「バレンタインのチョコ買いたいから、ベビーカー押して橋本まで歩いて行きません?」
「家族で多摩動物園行こう!」



そんな感じで
彼女は最初から一貫して臆することなく、
真っ直ぐにわたし達親子と付き合ってくれました。
一気に日常が色づいていきました。



お母さんになって初めて
下の名前で呼びあえる友人ができて
すごく嬉しかったことも覚えています。



そして彼女はお菓子作りも得意でした。



時には紙袋にザクザクッとクッキーを入れて持ってきてくれたり。
焼きたてのバナナケーキも厚めにカットして出してくれたなぁ。



手作りのおやつってこんなに美味しいの?
と、感動して。
今思えば、彼女の影響でわたしもお菓子作りの真似事を始めたのかもしれません。



そして、そのお供でよく淹れてくれたのが
彼女の紅茶です。
(前置きが長くなっちゃいましたね)



ご主人の母国イギリスから取り寄せたという紅茶。
なのに、ティーバッグです。
箱入りの茶葉をティーポットで…というものではなく。
ころんと丸いティーバッグタイプのお手軽な紅茶。



でも、それはそれは美味しいのです。
香りは濃く豊かで、クセのない味は何杯でも飲める飽きない味。
ひとくち飲んで、すぐ「これ好き!」と言ったように思います。



うれしそうに「でしょー??」と言って
20個ほどもジップロックに詰めて帰りに持たせてくれました。



「こんなに悪いよー」
と言うと
「100個単位(確か…)で箱買いして取り寄せてるからダイジョブ!」
と。



それ以降も「まだある?」とたまに確認してくれては
「持ってきたよー」と渡してくれました。



主人もその紅茶の大ファンで、その頃はよく淹れてふたりで飲んでいました。
彼女=紅茶、で主人の中ではいまだにインプットされています。



さて、ある日。
「ちはるさんは、将来どうしたい?」
と何気なく聞かれました。



一瞬、ドキッとしました。



お母さんである彼女の口から「将来」という言葉が出たことに意表を突かれたのです。



世間一般的には、結婚や出産はゴールで
そこから始まる人生は家族でつくるもの。
だから母になってまで自分の将来や夢を
あえて思い描くべきものではない、と。



きっと普通はそうなんだろうと
いつのまにか強く思いこんでいたから。



けれど反面。
実は、わたしにはひそかにまだ思い続ける夢がありました。
自分の人生の、まだこれからの「将来」に
ひとつ刻みたい夢。



でもそれはあくまで「ひそかに」思うことであって、
声をあげることはやっぱり世間的にナシだろうと暗黙に飲み込んでいました。



なので、彼女があまりにあっさりと
隠すことなく、恥じることなく
「将来どうしたいか」と声にしてくれたことに一瞬驚きはしましたが、
同時に震えるような感動すら覚えました。



ですがその時、わたしが何をどう答えたか、
しばらくすっかり忘れてしまっていました。
彼女の問いかけの衝撃だけは鮮明に覚えていたのに。



数年後、彼女とのひょんなやりとりから
どうやらわたしがあの時彼女に自分の夢を打ち明けていた、という事実が分かりました。
きっと、うれしくなって嬉々として話をしたのだと思います。



自分のことは忘れていましたが、彼女の話した内容は覚えていました。
(そして彼女は彼女で、自分の言ったことは忘れていた、という 笑)



「わたしはね、この紅茶をたくさんの人に広めたい。どんな形になるか分からないけど、例えば家で紅茶とお菓子を出すカフェみたいな…」



15年ほど前。
当時自宅サロンという概念もなかった時代。
スマホもないし、ブログやSNSも身近になかった。



けれど、彼女が言う「家でカフェみたいな」ものの話はすごくリアルに目に浮かびました。



それを聞いてわたしも家で何かできないかな、とワクワク思ったこと。
今の-haru.に確実につながっています。
(わたしの夢とはまた別ですが…)



そして、息子が3歳になった頃かな。
彼女はご主人の転勤で引っ越すことになりました。



彼女がいる相原にずっと住みたくて
土地を探して家を建てたので
正直すごーく寂しかった。



でも。
縁もゆかりもないこの土地で
孤独と時間に押し潰されそうだったわたしに
底抜けの明るさと、真っ直ぐな心で
彩りをさしてくれたこと。
ほんとうに感謝しかありません。



今でも彼女が住んでいた家の近くを通ると
当時のことを思い出します。



ザクザクと音をたてるクッキーも。
なんにでも合う彼女の紅茶も。
プールも、動物園も。
大切な大切な思い出です。



何年かに一回、忘れた頃にLINEが鳴ります。
明るい音です。
な、気がします(笑)



-haru.にはるばる足を運んでくれたこともありました。
そして今は街のカフェで本格的に働いてます。
そこはシフォンケーキがおすすめらしく
クール便で前ぶれなく届いて驚きました。
ふわふわで本当においしかった。



彼女の将来が、あの時思い描いた方向に進んでいることが今はとてもうれしいです。



わたしのは。
まだ、叶うのは先みたいです。
叶うかどうかも分からない。
でもそれも、彼女なら笑わずに聞いてくれる気がします。



あ~会いたくなったなぁ。
また紅茶飲みながら語り合いたいね。



そうそう。
困ったことに、わたしは今も変わらず
頑なで、保守的だから。



わたしの夢がまだ続いてることを知ってる友達はあなたしかいないのよ。






はちみつバードさんのクリスマス特別企画に参加させて頂きます。

彼女の紅茶を思い出せてしあわせな時間でした。ありがとうございました。




教えてもらったバナナケーキ。
久しぶりに焼いてみたよ(^-^)


余談ですが、彼女のご主人が作るマッシュポテトも忘れられない〰️(笑)