検証シリーズの４回目は最終回で、社台サラブレッドクラブの2022年募集馬（現３歳）の活躍馬について、募集時の馬体との相関関係を考える。

ここでいう活躍馬の定義を以下とする。

①２勝以上（2024年５月19日現在）

③回収率100％以上（１口馬主DBを参考にした）

①②の両方の条件を満たす馬をリストアップした。

５頭が該当した。

この５頭の募集時の体高・体重を「新・測尺評価法」に基づき、プラスは赤でアミをかけて表示している。

【当たり馬選定の決定打】新・測尺評価法を解説します｜【１口馬主講座】トンボのめがね（１）すべての馬の測尺を一律に比較するのはナンセンスブログ『相馬の梁山泊』や『相馬の水滸伝』で何回も書いている新・測尺評価法が難しい、わからないという声が多いようなので、もう一度解説します。測尺は１歳のある時点（社台・サンデー・G１は５月末から６月初旬）の時期に一斉に募集馬の体高・管囲・体重を計って発表している。この数値を一律に比較して優劣を考え…

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この年は全体的に社台サラブレッドクラブの募集馬の馬体重がサンデーサラブレッドクラブの募集馬に比べて小さい馬が多かった。

活躍馬でも小さい馬（評価がマイナスの馬）が多いのはこうした傾向を反映している。

体高がプラスは５頭中４頭。

体重がプラスは５頭中２頭。

体高・体重ともにプラスは５頭中２頭という結果となった。

体高・体重ともにプラスの馬（イフェイオン、イーグルノワール）が両馬とも重賞を勝っている。

「新・測尺評価法」の威力をまざまざと見せつけている。

と、言いたいところだが。

G1を２勝したジャンタルマンタルの体重評価がマイナス５.９と明らかに悪い。

これをどう考えるか。

ジャンタルマンタルの募集時（６月９日）の397kgからの体重の推移を社台サラブレッドクラブホームページをもとに記してゆくと。

（）内は「新・測尺評価法」による評価

2022年６月９日(442日齢)：397kg(－5.9)

↓

2022年９月２日(530日齢)：438kg(－7.6）

↓

2022年10月7日(565日齢)：449kg(－6.4）

↓

2022年11月4日(593日齢)：459kg(－6.7）

↓

2022年12月2日(621日齢)：465kg(－5.2）

↓

2023年1月6日(656日齢)：461kg(－14.4）

↓

2023年２月３日(684日齢)：476kg(－３.９）

↓

2023年3月3日(712日齢)：487kg(＋4.6）

2023年1月6日に－14.4を記録しているのは、この時期に急速に調教ピッチを上げているからだ。

このように、厳しい調教が始まっていったん体重が減るが、その後、２月３日に－３.９とマイナス分を徐々に解消し、3月3日にはついに＋4.6と平均を追いつき、追い越した。

激しい調教が始まり、運動量に伴い消費カロリーが増えることで食欲が増す。

この結果、大幅な馬体重の成長を遂げたと解釈することができる。

ハードな調教をこなしつつ、体重を増やすことができるのは、G1馬のポテンシャルを示す条件なのかもしれない。

以上をまとめると、ジャンタルマンタルは２歳の調教過程で大幅な体重増加を実現した。

他馬に比べて成長の時期がワンテンポ遅れたという見方もできる。

いずれにせよ、レアケースではあるが、募集時の体重の大幅マイナス評価が直接レースパフォーマンスに結びつかないこともあることは銘記しておく必要があるだろう。

ただし、この場合も、ジャンタルマンタルの体高評価はプラス1.0で、将来成長する可能性は示していたことも付け加えておきたい。

追記

改めて考え直した結果、ジャンタルマンタルの真相がわかった。

下の表はサラブレッドの馬体重の成長曲線を示したもの（『JRA育成牧場管理指針』から引用）だが、3月生まれのジャンタルマンタルは、むしろ４月生まれの成長曲線に近い。

ジャンタルマンタルは当初、約１か月成長が遅れおり、他の３月生まれの馬より晩成気味であった。

これは、この馬の個性とみなすことができる。

【検証／募集時のジャンタルマンタルの馬体】社台３歳馬を検証