みなさんは、レニ・リーフェンシュタ―ルという女性写真家を御存じだろうか。
彼女はベルリンオリンピックの記録映画『オリンピア』を撮影し、ナチスドイツのプロパガンダ(宣伝ですな)を行った。つまり、ファシズムに協力したという理由で戦後長く非難され黙殺された。ところが1970年以降、アフリカのスーダンに渡り、ヌバ族の写真を撮り続けた。その写真が素晴らしく、自然の生活の中で鍛え上げられた独特の肉体美を活写したスグレものなのだ。
写真集、その名も「ヌバ」の一部を上に引用する。しばし観賞してみてください。
チョコレート色の肌に引きしまった筋肉。静止しているのにもかかわらず、躍動美を感じる。
もちろん、裸の原住民の姿には、性的なものは一切、排除され、性別を越えた人間の肉体そのもの美を伝える。
ギリシャ彫刻の裸の肉体美とも違う。ちょうど、女性の体の線が透けて見えるバレリーナに、性的な魅力とは異なる繊細な美しさを感じとるように、ヌバ族の女性の裸は、研ぎ澄まされたアスリートの肉体を思わせる。
上の文章を書いた後、ネットで調べたが、「研ぎ澄まされたアスリートの肉体を思わせる」という私の直感は当たっていた。
以下、wikipediaの「ヌバ族」の項目を引用する。
   肉体的鍛錬を美徳とし、独自ルールに則った格闘競技が盛んに実施される。
     競技者はを全身に塗して戦い、勝者には アカシアの枝が与えられる。素手で戦うレスリングのほか、棍棒チャクラムなどを使用した競技がある。
なんと、ギリシヤで発祥したオリンピックに似た競技がここアフリカンのスーダンでも行われているのだ!
ベルリンオリンピックを撮ったレニが、なぜ、アフリカに? の疑問がこれで氷解した。
上に引用した裸の女性が向かい合っている写真も、おそらくレスリング競技中のものなのだろう。
彼女たちは、さだめし、アフリカの中井りん、というところなのだろう。
写真集「ヌバ」には、ほかにも顔面全体に彫られた刺青(いれずみ)の写真も掲載されている。
なんとも、おどろおどろしい、というか奇妙キテレツというか、悪趣味といおうか。それが、また反面、独特の美しさも醸し出している。卑俗と高貴、邪悪と神聖、インモラルとモラルとが同居している。
そんなあい矛盾する感想を抱かせる顔面芸術だ。ナチスと聞いただけで、毛嫌いして唾棄する傾向が今でもあるが、トレンチコートをつくったのはナチスであることは、あまり知られていない。1930年代当時のドイツには、美の才能が結集した。
このブログでナチスやファシズムを擁護したり、賛美する意図は毛頭ないが、レニ・リーフェンシュタールのような才気あるアーテイストをナチスに協力したというだけで全否定するのは、盥(たらい)の水と一緒に赤ん坊を流すようなものだ、と思うが皆さんは如何であろうか?