ふと見上げると白いものがチラチラと降り注いでいた。
ーなんか寒いと思った。
雪が降ってきた。1月だから降ってもおかしくはないが、天気予報で降るって言ってただろうか?
レザーのスーツは風は通さないが冷たさが体にこたえる。コートを出さないとな。
「原さぁーん」
ラガーの声がする。寒い中でもあいつは元気だな。やっぱり若さかな。
「雪が降ってきましたね。」
やたら嬉しそうだ。こいつは前世は犬だったに違いない。
聞き込みの報告をして署に戻ることにした。
帰りの車の中で窓の外を見ていると雪がハラハラと落ちているのがよく見えた。じっと見ていると子供の頃を思い出してしまう。
愛されなかった養父母の折檻。雪の中で何時間も立ちつくしていたこと。
でも、あの思い出があるから頑張れた自分がいる。俺と同じ思いを子供たちに味合わせたくない。それが刑事となった今でも心の支えとなっている。
「原さん?」
ラガーの声で思い出の中から現実に戻ってくる。
「雪が積もらないといいな。」
そう言ってラガーに笑いかけた。