前回のつづきです。
謎に包まれた褐色の肌の修道女、ルイーズ=マリー=テレーズ。
この女性の出自については、三つの説があるそうです。
そのうちの一つで、もっとも有力なのが、 ルイ14世と黒人女性のあいだの子どもだ、というもの。
もう一つは、国王夫妻からとくべつに目をかけられていた、いわば養女のような娘である、という説。
もっとも、この説は、あまり支持されていないようですが。。。
そして、三つめが、ルイ14世の正妻、マリー=テレーズの子どもだ、という説。
新婚早々に、国王の寵愛をラ・ヴァリエール嬢に奪われてしまった、王妃マリー=テレーズ。
マドリッドから遠くはなれたフランスで、心淋しく暮らしていたようです。
そんな彼女の孤独を慰めてくれたのは、小姓のナボ。
このナボなる人物は、王妃の召使いで、黒人の「小人」でした。
モレ・シュール・ロワン修道院のルイーズ=マリー=テレーズ尼は、この黒人のナボと王妃とのあいだにできた娘だというのですが、本当でしょうか?
信心深いカトリックの国、スペインで育った王妃が、いくら熱愛していた夫に裏切られたからといって、自分も不倫をするとは、到底思えないのですけれど。。。
それに、王妃ともなると、つねに誰かに見守られていて、おおっぴらに浮気ができようはずがない。
出産も、衆人環視のなかでするのですから、王妃に褐色の肌の子どもが生まれたら、一大スキャンダルに発展すること、まちがいなし。
生まれた赤ちゃんの肌が黒かったので、王妃の侍医は、国王の手前、うろたえながらも、「王妃さまが妊娠中、チョコレートを大量召し上がったせいで、お子さんの肌が黒くなったのでございます」と、取り繕ったとか。。。
あるいは、ナボの、王妃を見るまなざしによって、胎児の肌が黒くなったのだ、という噂を聞いて、ルイ14世は。。。
「ふーむ、まなざしとは、そこまで奥深く侵入するものなのだな」
と、意味深な発言をしたとか 。。。
そんなこんなで、もしルイーズ=マリー=テレーズ修道女が王家の隠し子ならば、王妃の子どもではなくて、やっぱりルイ14世の落し胤じゃないかと思うんです。
じっさい本人は、自分は国王の庶子だと思いこんでいたらしく、修道院ではけっこう威張っていたらしい。
修道女を訪ねたマントノン夫人は、そのことについて苦言を呈し、もっと謙虚になるよう諫めたところ、ルイーズ=マリー=テレーズの返事は。。。
「奥様のような高位の方が、わざわざわたくしのもとに足を運ばれて、『あなたは国王の娘じゃないのですから』と仰りに来た、そのこと自体が、わたくしが国王の娘であることを雄弁に物語っていますわ」
ルイーズ=マリー=テレーズは、生涯修道院から出ることなく、1730年に、推定年齢60歳くらいで亡くなったそうです。
以上、ざっとウィキペディアの記事を参照にいたしました。
もし、別の文献に目を通す機会があったら、謎めいたこの人物について、またとりあげてみたいと思います。