ヴォルテールの長年の伴侶、シャトレ夫人。

 

しかし、彼女が「浮気」がしたからたって、ヴォルテールが怒る筋あいなんか、ないのでは?

 

ご自分だって、姪のドゥニ夫人に心を奪われているじゃないのさー

 

そう反論したくなっちゃいますが、ヴォルテールには、やっぱりムカつく理由があるのです。

 

実は、シャトレ夫人は、たいへんな賭けグルイでして。

 

お仲間たちとのカードゲームで、さんざん負けて、借金で首が回らない。

 

ヴォルテールは、エミリーに泣きつかれて、何度も自腹を切って助けてあげた。

 

シレーのお城の改修も、資金の出どころは、ヴォルテール。

 

それだけ尽くしている自分を、影で裏切って、若い男とよろしくやっているとなると。

 

腹の虫が収まらないのも、当然のことでありましょう。。。

 

ただでさえ、激情家のヴォルテール。

ある日、シャトレ夫人を思いっきり責めました。

 

しかし、敵もさるもの!!

 

ワタクシが本当に愛しているのは、アナタですわ。

 

いけしゃあしゃあと、エミリーは言う。

 

でも、このごろアナタは病気がちでしょう。ワタクシ、アナタの健康が何よりも心配ですの。

 

どれだけアナタと愛しあいたいと思っても、それがアナタの健康を害するかもしれない、と思うと、ワタクシ、心配で、とてもそんなことをお願いできませんの。

 

でも、ワタクシは、アナタより一回り下で、まだ女ざかり。

 

ですから、アナタもよくご存じのサン・ランベールさんに、アナタが果たせないことをしていただいたのですワ。

 

アナタの身代わりになってくれたサン・ランベールさんを、どうか赦してさしあげてくださいましネ。

 

涙ながらに、殊勝に語るエミリーに、ヴォルテールはいとも簡単にホダされて。

 

わざわざサン・ランベールを探して、彼と抱擁し、あらためて固い友情を誓ったのでありました。。。

 

頭の回転の速いエミリーさん。圧倒的に、彼女の勝ち!!

 

とはいえ、それで事が済んだと思ったら、大間違い。

 

なんと、それからまもなくシャトレ夫人は、自分が妊娠していることに気がついたのです!!

 

父親は、もちろんサン・ランベール。

 

貴族の既婚婦人が、愛人の子を宿す。

 

そんなとき、たいていは、「からだの具合が悪いから、温泉に行って療養する」という口実のもと、田舎でこっそり出産し、うまれた私生児を里親に預けて、涼しい顔して、また宮廷に戻ってくる。

 

でも、シャトレ夫人の場合、ロレーヌ公国に滞在していて、スタニスラス王の承諾がなければ、退去できず。

 

ブッフレール公爵夫人はじめ、サン・ランベールとの情事は、宮廷人の知るところとなっている。

 

出産は、ロレーヌでするとしても。

 

問題は、本当の夫、シャトレ侯爵。

 

妻が愛人とのあいだの子どもを産み、それが公然の秘密として知れ渡っているとしたら。。。

 

赤っ恥をかくのは、夫です。

 

さあ、どう取り繕うのか、エミリーさん?

 

絶体絶命、第二弾!!

 

つづきます。