『朝雪录(朝雪錄)Coroner’s Diary』
2025年 7月~ 中国 全38話
出演
沈莞・秦莞→李兰迪(李蘭迪)
燕迟(燕遅)→敖瑞鹏(敖瑞鵬)
李蘭迪の愛らしい顔面だけでも観てられる笑
ネタバレ 第1話~第6話。
大理寺卿の沈毅は、おそらく冤罪を着せられて一家を皆殺しにされるが、娘の沈莞だけは、両親や共に暮らしていた秦氏に逃がされ一人生き延びる。
父親の遺言では、仇討ちなど考えず二度と京には戻らぬよう記してあったが、沈莞は父親の冤罪を晴らすため、亡くなった秦莞の身分を借りて秦府へと戻っていく。時代劇では子供に恨みを背負わせる親も多い中、娘が人生を失わぬよう遺言で残すとは、立派な父親である。
沈毅が晋王と結託して瑾妃を殺めた罪などと開幕では言われていたが、晋王が自害したため、真相は沈毅の部下である李牧雲の証言から明らかとなったという。そのためコイツが悪巧みの一味なんだろうと予想はつくが、今の段階では、晋王や李牧雲がどんな人間なのかは全く分からない。
この開幕の描写で仇討ちものだと思っていたが、秦莞(となった沈莞)には、医学だけでなく検死学の知識もあり、その力を発揮して事件を解決していくミステリー要素もある。自分のような謎解きが苦手な質でも、このドラマは謎に見やすく先が気になって視聴が止まらない。あまり中文が難しくなく理解しやすいところも見やすさの一つだが、李蘭迪が可愛いすぎるってのもあるかも笑
幼い頃に病弱だった秦莞(本物)は、父親と共に秦家を出て長い間戻っていないため、秦莞として秦府へ戻った沈莞を見ても別人だとは気付かない。実の息子ではない男の娘を、祖母は孫とも思わず煙たがり、その態度に倣って一家全員の秦莞への扱いは冷たい。
それでもこの秦府はただの足掛かりであり、この先、京へ戻って父親が貶められた真相を探ることが目的の秦莞は、この家での扱いはさほど気にしていない。この後、大長公主の命を救って直ぐに立場が逆転したため、謎の嫌がらせでイライラさせられずに済んだのも良い。
安陽侯府(大長公主の屋敷)で、主治医のような立場を得た秦莞は、まずは京へ戻るための機会を掴むために、安陽侯府での信用を築くことにする。ここで燕遅に出会うわけだが、なんか会ったことある気がする、と言っていた理由は後々明かされるのだと思われる。
睿王世子である燕遅は朔西軍の統帥であり、沈毅と共に貶められた晋王の件を調査している。大伯母を救っただけのポッと現れた秦莞の存在も、沈毅一家の殺戮の件で顔色の変わった姿を見逃さず、何か繋がりがあることを薄々感付いている。
最初は何か怪しいと秦莞を疑っていた様子に見えたが、その医術と検死の能力に感嘆したのか、3話などでは既に惚れてしまっているように見える、、、秦莞の手に触れた従弟かなんかの手を振り払ってたしな笑
その燕遅の好意に茯苓は気付いているが、本人は、ひょっとして朔西軍の専属医にされるのかも、困るな、、、という思い違いで、高級な工具を贈られたことも好意だとは全く思っていない笑
秦莞の人柄の良さと賢さで得た人脈が、結果的に進まねばならない先の近道となっているが、目的はあれど、それを利用しようとする下心ではないところが良い。
一つ目の事件は、身内同士の痴情のもつれで安陽侯府を巻き込んでの騒ぎとなったが、嫡子と庶子の立場の違いでこんなにも違ってしまう人生が哀しい。兄(嫡子)の知らぬところで既に狂っていた弟(庶子)に、恨み言を吐かれた魏兄がさすがに気の毒だったよ。
この間も、二人が全面的に協力して解決へ進むことも、秦莞の華麗な活躍も見ていて楽しい。
次は、秦家で起こる事件を追うことになるが、あんな一介の屋敷でもとんでもない深い闇が潜んでいて、どこまで露わになるのかと先が気になる。
秦家も安陽侯府も嫡子や庶子が多く、その息子娘も入り混じると、こいつは誰?ということがしばしばある。ただそうキッチリ把握せずとも話はかなり分かりやすい。
追記ネタバレ 第7話~第10話。
秦府の闇が深すぎる、、、
燕遅が刑部へ移り、按察使の地位を得たため、その助手として堂々と事件の調査が出来るようになった秦莞は、秦府の闇に葬られていた真相解明を始める。
禁忌の地とされていた竹藪で、使用人が殺められていたことで始まった秦府の事件は、次から次へ屍が積み重なり、遂には井戸に封印されていた十三人の少女たちの亡骸へと導かれる。
何人もの無辜の命が奪われたことに秦莞も燕遅も胸を痛めるが、元々持っている二人の性質や抱える大義はよく似ているため、互いの心中を理解し、目の前の事件を追いながらその心も救い合う姿は既に一体感がある。
燕遅の好意は分かりやすいが、秦莞にはまだ色恋よりも真相究明が優先となっているため、あからさまな進展はない。
それより沈毅の一人娘の行方を調査していた燕遅は、秦莞が沈莞だと気付いたようだね。
秦府では、祖母を筆頭に三房の誰もが怪しく、特に主である三爺は分かりやすいクズである。その息子である秦琛は初めから何か腹に一物を抱えているように見えたが、度々、采荷と目配せをしていたことで、初めは采荷が正室なのだと思っていた、、、(采荷は祖母の侍女。)
結果的に、三爺が買った少女達を追って現れた楊夫人をそのまま娶って、娘を人質に取って言うことを聞かせていた三爺がほんまのクズなのだが、楊夫人は殺められた娘を追って自身も井戸へと身を投げたようである。
侍女として長い間潜んでいた采荷は、実は楊夫人のもう一人の娘であり、家族を殺められた仇討ちのために秦琛をだまくらかして、現在もそれを遂行中である。
三爺へ毒を盛り、秦琛の妻とその腹の子にも害を加えているのは、おそらく采荷なんだろう。ひょっとしたら妻と腹の子への害は采荷の仕業ではないという展開もありえるが、この三房の存続を阻止しようとしているため、三爺以下、秦琛や秦琛の子も対象にはなる。
秦琛は、狂おしいくらい采荷に溺れているため、利用されているという事実は絶対に認めない。これまでも采荷のためにその手を汚してきた秦琛は、遂に秦莞へも手を掛けるが、あと一人殺めるくらいこの男にとっては何でもないんだろう。華麗に燕遅が現れて救うことは予想できるが、この事件はまだ続きます、、、
謎解きドラマはあまり観ることがないけど、この類の次々と謎を解き明かして最終的に解決していく流れに爽快感はある。
李蘭迪が可愛いすぎる。(何度も言う笑)
つづく
追記ネタバレ 第11話~第16話。
秦府三房の存続を断って完了するはずだった采荷の復讐は、秦琛によって妻と腹の子だけは守られ、祖母を含む三房の男衆は全て命を落とす。最後に秦琛を殺めたものの、一緒に火に呑まれた采荷の秦琛への想いは、利用していただけの存在ではなかったようだ。仇討ちという恨みを背負って残された人間は、憂いのない生を歩むことが許されず、毎度この様に散っていくことがちょっと切ない。
嫡子を失くした秦府では、庶子である二哥が残って家名を継いでいくのだと思うが、秦湘や秦霜、そして秦莞は、後に現れた三哥(秦琰)へ連れられ京に上り、忠勇侯府へと向かうことになる。
少し前に、晋王と沈毅が貶められた事件の協力を燕遅から打診された秦莞は、そもそも彼と共に京へ向かう予定だった。
大長公主や岳凝へ別れを告げに訪ねた先での、周到な燕遅の提案は、岳凝の兄との婚姻話に発展せぬよう、大長公主の孫の地位を獲得させてしまった。これで岳凝とも、その兄とも兄妹となり、燕遅にとっては都合の良い話へ進んだ結果に、実に満足そうだったな笑
それでも一旦は、秦家の面目上、京への旅路は秦琰に随行する格好となる。安陽侯府の養女になっても、秦家の娘という立場はそのままキープされる仕組みはイマイチ分からん。
残務を処理して後から秦莞を追うことなった燕遅は、秦莞と片時も離れることに耐えられず、飲まず食わずで昼夜馬を走らせ、息も絶え絶えで三元村へと辿り着く。一足先に出発した秦家一行が、降られた雪で三元村に立ち寄ることになったためである。馬の足蹴りがなければ命を落としていたかもしれぬ燕遅の想いが、溢れすぎてその勢いに圧倒される笑
三元村では、大師兄の孫皓月(季肖冰)が住まう百草園へしばし滞在することになるが、ここでは妖怪が若い娘を攫うと噂される事件が多発していた。
季肖冰が謎めいた役柄で登場したことで、もうこの人じゃん、、、という予想は付いたが、続けて孫皓月の妻が病に伏しているという話で、この妻を救うために若い娘を攫っているんじゃないかという思いに囚われる。それがそのまんまの展開だったことに一番驚いた、、、いや、あらぬ方向から無理矢理犯人を仕立ててくるより、心の準備が出来ている分、断然その方が良いんだけど。
妻を蘇らせるためだけに無辜の命を次々と奪っていた孫皓月は、そんなことが不可能だと分からぬくらい愛していたとみえる。或いは、分かっていてもその望みに縋らなければ生きてはいけなかった哀しい男である。
秦莞に付いてこの旅路に参加した岳凝は、序盤から既に好感の持てる娘だったが、今回などは、武闘派である彼女の活躍に目を見張るものがある。
怪しげな男にだまくらかされ拉致られた秦湘を、監禁された孫皓月の秘密の地下室から救う過程で、からくり床の罠に落下しそうなところを細腕と腹筋で支えて娘二人を救った上に、やけっぱちの孫皓月の心中に巻き込まれて、水中へ引きずり込まれる秦湘を、やはり細腕で引っ張りあげ、もう片方で秦莞の手を絶対に離さない岳凝の心意気は並大抵ではない。
それでも岳凝の命を守るため、秦莞は自ら手を放して水中へと消えていくのだが、壁を打ち破るやいなや、迷いもなく渦に飛び込んだ燕遅が重ねて胸熱である。なんだこの燕遅って、、、めちゃ素敵なんだけど。
この早い段階で、秦莞が沈莞だと気付いていることも、その秦莞への想いも明かした燕遅だが、これで、隠している身分によって、この関係が複雑になることを懸念していた秦莞の不安はなくなってしまった。元々、燕遅の好意はダダ漏れだったが、想いを伝えたあとではそれがより一層増している。なんというか敖瑞鵬の表情には愛があるな。
因みに、崔紹陽(秦琰)と張珹朗(宋捕頭)はセットかなってくらい同じ作品に出演しているね笑(白月梵星に関しては+敖瑞鵬、程泓鑫など)
主が不在となった百草園は師兄に任せて、秦家一行、燕遅白楓は豫州へと足を進めるが、段々と過去の事件に結びつく人物に近付きつつある。
まず、序盤に名前が出ていた裏切り者らしき李牧雲は、大理寺卿に出世していた。おそらく恩師を裏切って手に入れた地位なんだろうと燕遅も予想はしているが、他にも秦琰と塩運送の話をしていた龐家や、その仲間である劉仁励などが過去の件と関係していれば、割と大規模で悪事が行われていたことになる。
そもそも秦琰が秦家の娘三人を引き取りに来たのは、その娘たちを利用し、あわよくば太子に嫁がせるかなにかで、忠勇侯府を盛り立てるためだが、ここで汚職などに手を染めれば破滅ではないのか、それとも既に悪事に手を染めているのかな。
つづく
追記ネタバレ 第17話~第20話。
李牧雲は、過去の裏切りで得た地位に就き、涼しい顔をして任務をこなしているようだが、表面上は一応、厳格に大理寺の責任を果たしているように見える。ゆえにこの男への疑いは誤解ということも有りえるが、今はこの人物像が見えないため善悪どちらなのか分からない。
十五年前に、龐輔良や劉仁励、覃夫人が犯した罪は、羨望や嫉妬、私欲を満たすための張家の殺戮だったため、晋王と沈毅の件に掠ってはいなかった。
龐輔良は、銭のために人を殺めた過去を持ちながら、お家のために嫁がされた妻に暴行を働くような相変わらずのクズだったが、その妻の侍女として龐家へ潜り込んでいた晴娘(清嬛)に無残に命を獲られる。その仲間である劉仁励、覃夫人も同じく、己の犯した犯行手段によって晴娘に命を奪われるが、これも身内を奪われた晴娘の仇討ちの結果だった。
亡くなった者は戻って来ないと分かっていても、先の采荷や晴娘の立場になれば、手を下した相手に直接制裁を加えたい衝動が起きるのは自然である。復讐の手段は違えど同じ思いの秦莞もまた、その気持ちに同調され憎しみが募っただろうと想像する。それでも自身の持つ能力と頼りに出来る仲間と共に、法に則って罰を与える方を選んだ秦莞には、この先生きる道がある。
そんな選択も方法も分からず、たった一人でやり遂げる決意を持ってその手を汚した先の二人には、仇討ちのためだけに生きることが鎖のようでもあって哀しい気持ちになった。
今回の、火の中から秦莞を救う重力無視の連携がめちゃファンタジーだったね笑
新たに登場した皇族の燕離は、実に晴れやかな男で相手役の岳凝と絶妙に合っている。
権力を欲するお家のために、娘を(自分へ)嫁がせようとする輩どもにうんざりしているようだが、同じような境遇の岳凝も、嫁いでしまえば家に縛られることにひたすら不満を抱えている。
そのため、俺らが婚姻を果たせば解決するんじゃね?という利害の一致のもと、酔った勢いで勝手に夫婦になることに決めてしまった。このハツラツとした同類の二人がおもろい笑
確かにどちらも皇族だし、身分的には全く問題ないね。
豫州の事件を解決し、やっと京へ到着した秦莞は、早速、忠勇侯府の繁栄のために利用されつつある。口調は優しいが、全て太子に媚びを売るための駒にするためである。忠勇侯府は親父も息子も狡猾で、豫州の件を見ても、危うくなれば途端に梯子外しで逃げ切り、あらゆる人物を利用して漁夫の利を得ようとしている。
太子の憂いを取り除くため、死体を凌辱する連続殺人事件の解決を打診された秦莞は、それでも父親の件を調査するための足掛かりを得たという思いで嬉しそうではあるが。
相変わらず全力で秦莞を助け、その周りにも気を配る燕遅だが、地方では世子の名で黙らせられたことも、京城では皇族や権力者が多すぎて若干難しくなりそう。
その皇族に関しては、どこもかしこも王ばかりで何がなんだかという感じだが、成王(四哥)が覇権争いで太子を貶めようとしている悪者なのだけは分かる笑
つづく
追記ネタバレ 第21話~第22話。
京城に着いてからは、これまでにはなかった権力闘争が目前で行われ、そこに興味のない秦莞や燕遅にも面倒は及んでくる。
婚衣の仕立て屋だった変態は、秦莞の検死能力と燕遅の調査能力であっという間に捕らわれ太子の手柄となるが、邪魔立てが失敗に終わった成王は面白くない。元々、皇帝の妻同士が争って、息子をけしかけているせいだが、後ろ盾に有利な権力を持つ家柄から娶る娘までも決められている。皆が権力を欲して娘を皇宮へ送り込もうとし、皇宮もまた力のある家柄を欲する殺伐さが、これまでの地方での空気とは違う。この雰囲気の中では、京に着くまでに、燕遅が想いを伝えていたことが今となっては良かったと思う。
そこに小医仙の異名を持つ秦莞が現れ、太后を救ってしまったため、忠勇侯府は太子妃の座を奪われないかとギラめき立つ。えっと、、、勝手にライバル視されて迷惑なんだけど。
ほぼその地位が確定している(が、皇后が焦らしている)朝羽を、太子も心得ているようだが、一方で、秦莞の賢さに見惚れてこちらも欲しがっているように見える。皇后なんて、気に入ったなら側室にすればいい、とか言っちゃってる。いやいやこっち見んなよ迷惑なんだけど、、、皇帝から賜婚などを頂戴したら拒否出来ないではないか。それでも燕遅が、これまでの功績で皇帝に寵愛されていることが若干救いではある。
その燕遅は、朔西軍の統帥であるため皇宮の覇権争いからは外れたところにいるかと思っていたが、ちまたでは睿王が燕遅の母親を自ら殺めたという不吉な噂が流されており、何者かが燕遅の足を引っ張っている。これも立場を侵されることを恐れる意地汚そうな成王とその母親かもしれん、、、
燕離に至っては、そもそも皇族の血筋ではない。
父親である義王は、元々、傅成業の軍の中でも優秀な部下だったため、その妹を妻に娶り睦まじく暮らしていたが、ほどなく傅成業の謀反に巻き込まれてしまった。義王は皇帝(当時は太子)に忠義を尽くし、身体を張ってその命を守って亡くなったため、その功績を称え、死してから義王という名と燕という姓も与えられた過去がある。
皇帝が燕離を見る目から察すると、自分の命を救った人間と謀反を起こした家の人間の子である燕離の存在には若干の複雑な思いがあるらしい。
とにかく燕離は、燕という姓を名乗っていても、皇族だとは認められてはいない。ゆえに皇宮の意地悪連中に蔑まれて育ったはずだが、正常な倫理観を持ち朗らかに成長したのは、父親の血と母親の教育の賜物なんだろう。今回も、宴席の端と端でキャッキャして岳凝と手を振り合う姿が睦まじすぎてにんまりである。
皇太后を救った秦莞は、早くも皇帝の信頼を獲得し、隣国との宴にも参加させられるが、この場で案の定の恋敵が登場する。忠勇侯府や皇后、太子に加え、前々から燕遅を好いていた様子の隣国の公主が、これから水を差してきそうで面倒だな。
それでも今回は、瀕死の皇太后を秦莞が救い、皇帝に責められる太医をも救う過程にワクワクした回だった。
つづく
追記ネタバレ 第23話~第26話。
男にうつつを抜かし、騙されて命を獲られるところを救われた恩も忘れて、相変わらず秦莞を貶めようとしている秦湘は、何の働きもないくせに、意地悪娘という存在感だけはある笑
しかしこれを上回るのが、燕遅を欲しがっている北代公主である。婚姻を迫って拒否された公主は、燕遅が秦莞と共に居る姿を目撃し、早速「殺ス」とか言っちゃうヤバい娘で、そのまま間髪入れずに本気で襲ってくるのが狂気の沙汰である。
同じタイミングで北代の継承争いも勃発し、北代太子が弓で射られる事件も発生するが、よくもまあ人の国にまで内輪揉めを運び込んで騒ぎを起こすもんだよ、、、公主なんて、一瞬前まで秦莞を追い回しておいて、継承争いで兄貴が命を獲られそうになった途端、殺めようとしたもう一人の兄を責めていた。なんというか、自分は遥かに上を行くキチガイ沙汰を披露しておいて、急に常識的な感性に戻られてもね、となる。
北代の皆が皆、醜い姿を晒している間も、ヒーヒーで逃げ出した秦莞は、どこまでも献身的な燕遅のおかげで命を繋ぎ、その足で射られた北代太子の命を救って、その名声は上がる一方である。
自国の皇族だけでなく、隣国の皇族までもを救って自国の面子を保つことに貢献した秦莞は、大喜びの皇帝によってサクッと郡主の地位を与えられる。燕遅とは安定して絆を深め、大長公主や太后というドえらいお方も味方に付けたりと、面白いくらい順調に前途は開けていくが、その展開も都合が良いとは決してならず、むしろ心地良く観られる。
それでも良い事ばかりではない。
このせいで太子妃の座に固執する忠勇侯府からの逆恨みと、秦湘の嫉妬からの意地悪を躱さねばならない。他にも太子の座を狙う成王からの視線も釘付けにしているが、成王は、秦莞を手に入れようとしているわけでなく、太子側の燕遅を排除するためのあくまで道具として利用する機会を伺っているだけである。太子に至っては既に秦莞へ心を寄せているため、その太子の想いも成王の薄汚い野心もほんと迷惑なんだけど、、、
その合間に入る、燕離と岳凝の兄弟愛なる心の触れ合いが睦まじい。燕離の出自は謀反と忠心の挟間からなる立場の複雑さがあり、そのせいで母親とも近い間柄ではなかったようである。
どこか居場所を失くして生きてきた燕離に帰る場所を与えてくれるのは、きっと岳凝なんだね。
ほどなく起きた、生きたまま皮を剥ぐ連続事件で、行方不明の燕離ではないかと勘違いした岳凝が、ホッとして泣きじゃくるシーンはほのぼのの極みである。
皇宮の禍々しい空気から被る害を考えると若干憂鬱にはなるが、口を閉ざしたままだった瑾妃(晋王が殺めたとされている妃)の息子が、秦莞の存在によって話始めたことはめでたい出来事だった。
つづく
追記ネタバレ 第27話~第32話。
生きたまま皮を剥がされた事件は、過去に同じような案件の犯人とされて囚われていた張洞玄へと導かれる。この過去の事件は当時、張洞玄の罪ではないという方向で沈毅が調査していたようだが、道半ばで亡くなってしまったため、張洞玄はそのまま牢に放置されていた。
序盤は不可解な言動で謎めいていた張洞玄は、すぐに冤罪を晴らしてくれる唯一の二人だと見込んだのか、かつて属していた天道社という怪しい組織の存在やその手口を打ち明けて、秦莞と燕遅の早々の真相解明に一役買った、実に役に立つ男である。
多くの犠牲を伴った私刑ともいえる天道社の殺戮は、社主が自害して一旦は解決するが、未だ残党は見付かっていないため、調査は継続中である。
この事件は、秦莞と燕遅が皇帝から直々に捜査を賜ったため、誰にも口出しされることなく調査や検死を進めるが、どさくさで晋王と沈毅が犯したとされる証書も探し出す機会を得た秦莞は、やはりおかしな点を見付けて李牧雲への疑いをつのらせていく。
同時に、成王の野心も太子の牽制も日増しに激化していくが、太子や燕遅を一掃しようとする成王の魂胆はあからさまで、それに気付いていない者はいない。
それを本人は知らぬのか、矛先は簡単そうな秦莞へと向くわけだが、まず成王の仕業だと気付かれていることが猛烈にダサいし、逆に秦莞に泳がされていることにもおまぬけ感が否めない。結果、本音を突かれて激おこで首を絞める成王が浅はか過ぎてやれやれという感じである。飛んで来た燕遅によって杭を打たれた格好となった屈辱も、己の行動が先に責められるため皇帝には進言出来ず、あげく利用価値も何もない女を娶らされるハメになるなど滑稽がすぎるよ、、、太子も同じようなもので、野心はあるものの、ママーと泣きついては諫められるという繰り返しである。
王子二人がしょぼすぎるため、燕遅の生まれ持った正義感とその信念がより引き立つわけだが、燕遅も睿王率いる朔西軍へ汚職の疑いをかけられ、皇帝と睿王の板挟みの辛い立場へと陥る。
皇帝や太子、成王、皆が朔西軍を欲しがり、その内の誰が汚職かどうかも分からぬ件を操っているのかは謎だが、どいつもこいつも怪しい、、、ほどなく朔西軍の虎府争奪で睿王は命を獲られ、それが隣国の仕業とされていたが、秦莞の検死の腕にかかれば実際に起きた事情は見えてくる。睿王の死は嫉妬と猜疑から手を下した皇帝の仕業かもしれないが、晋王と沈毅の件は、誰が手を回した結果なのか分からないな、結局、皇帝なのかもしれん。と見せかけたミスリードの可能性もある笑
天道社も結局この三人の誰かと関係あるんだろうか。晋王の屋敷に埋められていた人物の身元の特定を、積極的に協力した李牧雲の魂胆も全く見えない。
妻が亡くなり、辺境を守るために息子とも離れて京城を後にした睿王は、忠義に厚く実に愛の深い男だった。生きている間には、兄にも息子にもその心が伝わらなかった睿王が不憫すぎて、手記の辺りでは燕遅と一緒に泣いていた、、、というわけで、このドラマ中、間違いなく誰よりも生き様のカッコいい男だった。ゆえに皇帝以下王子の野心しか持たぬ醜い姿が露わとなって、胸のすく思いをしたい。
明日(7月27日)に最終話まで解禁される。
つづく
追記ネタバレ 第33話~第38話(最終話)。
誰もかれもが怪しい中、抜きん出て怪しいのはやはり皇帝である。
晋王の庭に埋めてあった人物を殺めたとして皇后が廃されたことを皮切りに、嘆願に出向いた太子には不敬を働いた罪で封印し、そこから逃げ出した太子を成王の手で殺めさせ、その罪を本人に着せて成王の命を奪う、という全てが皇帝の手で行われていた。
睿王の命を奪ったのは成王だったため、燕遅にとっては殺したいほど憎い相手だったが、剣を突く寸前で踏みとどまる。これまでの様に法に則って罪を明らかにし償わせるためである。
しかしこの燕遅の自制も虚しく、成王はその性根の悪さで自ら剣を刺しご臨終となる。
このせいで王子を殺めた罪を受け処分されると思いきや、皇帝は適当な理由を当てがって燕遅を許してしまった。となると、初めから息子二人は排除する気だったんだろう、ただその理由がその時は分からなかった。
同時進行で、序盤は目立たなかった燕澤の存在感が増してくる。幼くして盲目だった(フリをしていた)燕澤は、母親の死の真相を暴くため遺体を何年も保管していた男である。毒殺されたという事実で皇帝の仕業だということに察しは付いたが、母親の亡骸を葬ることも出来ず、長年抱えてきた疑問を秦莞の検死によって知らされた燕澤は、何か思うところがあるようだったが、その時はこれも分からなかった。
この辺りで一番幼い燕綏が、瑾妃を殺めたのは皇帝だという話を打ち明けたため、晋王と沈毅の冤罪も皇帝の仕業だという事実が濃厚となる。
結果、皇帝は義王が成り代わっていた偽物だったという話に展開して、予想をかすりもしてなかった事実に心底驚いた。
義王?
あの皇帝に忠義を尽くして命を落とした義王?朗らかで優しく、忠義に厚い燕離の性質はきっと義王の血を継いでいるからだと感心していたあの義王??
となり、見事にその偉業は砕かれる結果となる。
ただ、この義王も太后が産んだ皇族の血脈である。
当時、双子を生んだ太后は、皇族の掟でどちらかを捨てねばならず、身体の弱い義王を皇室から出した過去があった。長くは生きられないと思われた義王はそのまま成長し、ほどなく自分が皇族だったことを知る。
初めは、捨てられた思いと玉座を欲する思い、どちらが勝っていたのかは分からないが、皇帝の命を守ったとされる戦のどさくさで、皇帝を殺めて自分がその座に成り代わっていたのである。既に妻子はいたのだから、この時には自分の築いた家庭より、元の家族の元で権力を得る思いの方が勝っていたんだろう。
この身分の成り代わりが皇宮の不幸の始まりであり、晋王を始め、秦莞の両親、燕遅の母親、燕澤の母親、燕綏の母親は全て皇帝に殺められていた。義王が燕遅のような人間なら、当時の皇帝を殺めず事実を明らかにすることは出来たはずだが、そもそも燕遅だったら、運命を受け入れて皇族へ戻ることもなかったかな。
妬みや恨みに囚われて、義王が皇帝を殺めていなければどうにかなったことも、この罪を犯した時点で、早々に気付いていた太后には、今後の混乱を避けるためには打つ手はなかったのだと思われる。
双子だからという理由で捨てられた義王は気の毒だが、不自由な暮らしを強いられていたわけではなく、むしろ保護された生活を送っていた義王が、皇帝へ成り代わり正体を隠すために犯した罪には同情は全く出来なかった。境遇のせいで、という思いには到底至らない、ただ貪欲に玉座を欲した結果であり、何が可哀想って、そんな男が実父だったと知った燕離が一番可哀想だったよ。
最後は、息子を奪われた皇后や、実は天道社の社主だった燕澤を交えて血みどろの戦いとなるが、これも皇帝が始めていなければなかった出来事である。最後まで母親への想いを手放せなかった燕澤の暴走はあまりに哀しいが、これまでの罪を背負って皇帝も燕澤も血みどろの中でご臨終となる。
終盤の怒涛の伏線回収の勢いが凄すぎて、目まぐるしく過去が明かされていくが、大トリを経て平安が訪れる最後には安堵する。
検死によって亡くなった者の遺憾を解消し、法に則り罪を償わせる当初からの信念はブレずに、因果応報を経て悪事が成敗されたことは、その軸の置き方もどれもバランスが取れていたと思う。
特に主演CPには、揺るがぬ信頼関係が築かれ、不安定なところが全くなかったことが疲労感を感じずに観られた最も良い部分だった。
気の毒だった燕離は、最後にやはり岳凝とキャッキャしながら去って行く姿に救われる。燕離の命を救ったこともしかり、岳凝は最初から最後まで粋だったね。
それでも結局は、李蘭迪がずっとかわいかったという思いが強い笑