ミックス。 | 一言難盡

一言難盡

Ture courage is about knowing not when to take a life,but when to spare one.

『ミックス。』

2017年 日本

 

監督 石川淳一

 

脚本 古沢良太

 

出演

富田多満子(新垣結衣)

萩原久(瑛太)

吉岡弥生(広末涼子)

佐々木優馬(佐野勇斗)

落合元信(遠藤憲一)

落合美佳(田中美佐子)

 

 

日本映画やドラマでいつも不安に思うのは、母国語なだけに分かる、役者の棒読みや棒演技を見せられることだが、この映画の主要の役者陣は素晴らしかった。他の大根役者陣だったらだいぶ評価も違ってたかもしれない。

 

ネタバレ

 

恋に破れ、田舎に帰ってきた元天才卓球少女多満子と元ボクサーの萩原を中心に、卓球を通して人生の一歩を進めようともがくフラワー卓球部のメンバーが描かれる。

それぞれが切なる想いを抱え、大会に出るべく卓球に向かう姿が真摯に時に滑稽に描かれているこの映画は、役者の巧みな演技と脚本、演出の手練れた技であっという間に時間が過ぎる。

端役で出演している小日向文世や蒼井優、実際の卓球選手のエースの人らも本人役で出演されていて、ちょっと胸が躍る出演陣となっている。

 

序盤の、多満子の幼少時から28歳で恋に破れ、田舎に帰るまでの様子が無駄なく簡潔に描かれていて、後のメインストーリーにより重点を当てている時間の配分がうまい。

他のメンバーの過去や、現在歩んでいる人生も編集で要所にカットが入り、本当に無駄がなく且つ分かりやすく描かれていてテンポが良い。

 

 

最初に口火を切って試合に向かう引きこもりの優馬と、それに駆り立てられ、諦めていたフラワー卓球部員が後に続く姿は、すでに前へ歩き出しているように見える。

ここからクライマックスに突入するのだけど、最後の試合の演出がいい。まず、選手名のクレジットを出すタイミングがいい。あれこの人の名前出たっけ?まだだっけ? 今か!というタイミングで選手名が登場するこの演出は胸熱。

更に、球を打つ多満子と萩原、それを応援するチーム全員の表情がいい。一歩前だ、一歩前だ、という母親の言葉と、全員のこれからの人生を重ねたその言葉を背景に、フラワー卓球部員のそれぞれのドラマが垣間見えて痺れる。

 

中盤に役者の演技や演出の熱量を抑えてきてのこの最後は、これこそクライマックスだよ、という盛り上がりを見せられ、思いがけず胸を衝かれた。