『わたしはダニエル・ブレイク I Daniel Blake』
2016年 イギリス
監督 ケン・ローチ
出演
デイヴ・ジョーンズ(ダニエル・ブレイク)
ヘイリー・スクワイアーズ(ケイティ)
ディラン・マキアナン(ディラン)
ブリアナ・シャン(デイジー)
数々の映画賞を監督、出演者共に総なめ?にしていた映画。
カンヌ映画祭では2016年のパルムドールを受賞した。
この監督の撮った、キリアン・マーフィー主演の『麦の穂をゆらす風』というアイルランド独立戦争でのIRAのメンバーとなった若者たちの葛藤と戦いを描いた作品も2006年にパルムドールを受賞している。
常に、弱き者に寄り添うような映画を撮り続けているケン・ローチは83歳におなりになったようだが、昔からずっとブレない作品を作っておられる。
労働者階級、いわゆる裕福ではないダニエルを中心とする周りの仲間たちと、融通の効かない役場の人間たちとの関わりなどを中心に描かれる。
これはイギリスの話だが、本当にこんなに複雑で分かりづらく、融通の効かないシステムなのだろうか。それだけではなく相談に来る人々を虫けらのように扱っている。きちんと税金を払っている国民にだ。
ダニエルのように真面目に働いてきた人間もいれば、楽して支援を受けようとする悪い人間もいるはずだから、役所の人らの気持ちも分からないでもないが、真剣に取り組めば答えは出そうな気がするのに。
ここで出会ったシングルマザーのケイティとその子供との関係を深めてゆくダニエル。妻を亡くして一人ぼっちで孤独だったダニエルの生活に少し光が灯ったような日々がここから始まる。
ケイティと子供たち、そしてダニエルの隣に住む黒人の若者(名前忘れた、、)お互いに裕福ではない者たち同士だったが、それを互いに支えあい思いやる気持ちは、役所の冷たい人間達とは比べ物にならない豊かさである。
社会的弱者の気持ちは同じ境遇を背負った人でないと分からないものもあるだろう。己の生活だけでも精一杯なはずだが冷たく突き放すことなく手を差し伸べる愛は深い。
この、I,Daniel Blakeというタイトルも終盤でこれか!となったときの気持ちの震える瞬間は観た人なら経験したかもしれない。
先に書いたように、カンヌ映画祭でケン・ローチは2度パルムドールを獲っている。というかパルムドールを送られる作品は往々にしてこのような人々を描いた作品のような気がする。
審査員はきっと上流階級の人々なので、私達貧乏人の生活を作品で見て貧乏人の生活が想像出来るのか、どういう風に心を動かされて賞を贈るのか、そこの本当のところを聞いてみたい。
前に、はと やまって方が「貧乏な時がなかったから貧乏人の気持ちが分からない。」と言ってた事があった気がするけど、それを聞いて、なるほどそれもそうだね。と思ったのを思い出した。
ケン・ローチの新作『家族を想うとき』
2019年12月13日公開。