リード・マイ・リップス(Sur mes lèvres) | 一言難盡

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Ture courage is about knowing not when to take a life,but when to spare one.



『リード・マイ・リップス(Sur mes lèvres)』

2001年 フランス


監督 ジャック・オーディアール


出演

ポール(ヴァンサン・カッセル)

カルラ(エマニュエル・ドゥヴォス)




たまたま観た映画。たまたまな割りにすっかりのめり込んで観てしまった。


っていうか、ヴァンサン・カッセル、よくわかんないアクション俳優だと思っていたのに、この映画の彼はやばいくらい素敵。最近観た映画だと、ジェームス・マカヴォイの「トランス」に出演していたが、この映画ほどの異彩は放っていなかった。


ネタバレ


主人公のカルラは、補聴器なしでは音が聞こえない。それが故に、人の唇を読む技が自然と身についてしまった。

人間の本当の言葉を遠くからでも唇を通して理解できるため、それに傷つけられてきたカルラは、人との接触をあまり好まず、孤独な生活を送っていた。


刑務所から出てきたばかりのポールに出会ったのは、いうなれば運命なのかもしれない。

孤独で刺激もない生活を送っていたカルラには、ポールの境遇が新鮮だったのだろう、初めは興味本位で仕事を与える事にしたのかもしれないが、そうこうしているうちに、まだ愛情ではない一種の情が沸いてくる。

誰にも頼らず生きていけると思っているポール、しかし結局頼る人間はカルラで、無意識にカルラに依存し、必要としていることを自分ではわかっていない。孤独なカルラもまた、この身よりもない元犯罪者に依存し、放っておくことができないのである。


フランス映画では、ちょっと珍しいプラトニックな関係。

自分のためにカルラを利用している男ポールと、それをいやだむかつくと言いながらも、結局見捨てる事ができないカルラの関係は、肉体よりも魂の繋がりさえ感じてしまう。

自分勝手に振舞う男に見せながら、肝心の部分ではポールをヒーローのように魅せる部分はほんと巧いなぁ。

たとえ、自分だけが逃げるための飛行機のチケットを準備していたとしても、その時になればこの男は絶対にカルラを置いては行けないのである。



↑この映画で一番エロいシーンを挙げるとするなら、ボスの家に隠れていたカルラをポールが見つけ、カルラの耳元でなにかを囁くこのシーン。

ただの情だったのが、愛情に変わっているがわかる。