高校時代は、世田谷区内の男子校に通っていた。一人、バス停でバスを待っていると、選挙カーがやってきた。今度の選挙に出る人らしく、私の方を向いて、選挙カーから、体を乗り出し、自衛隊か警察の幹部のように、敬礼をした。そこには、私しかおらず、私が見えなくなるまでそのような格好をしていた。私は、高校生であり、しかも横浜市民。選挙権がないのに、不思議な人だなと感じるとともに、ある種の感動と親近感を覚えた。おそらく、この人を生涯の中で投票することもないだろうと思った。
その人物は、小坂徳三郎氏であった。
後年、私は一時、世田谷区内に居住したことがあった。国政選挙があった。その国政選挙は、自民党が政策に失敗し、結果として社会党が躍進するだろうといわれていた。当時は、中選挙区の時代。世田谷選挙区の自民党は、二人。一人は、大物自民党政治家の姻族といわれていた越智道雄氏(上から読んでも、下から読んでも「おちみちお」といわれていた。)。自民党が厳しい選挙戦になると予想されていても、越智さんは、絶対に落ちないとマスコミは予測していた。もう一人の現職の議員が小坂徳三郎氏であった。マスコミの予測では、落選するだろうと想定されていた。
私は、高校時代のことを思い出し、小坂さんに投票した。(越智さんは、何となくイメージとして偉そうに見えたし)
結果は、小坂さんは、危なげなく当選。越智さんは、落ちてしまった。
今、振り返ると、私が高校生のときに敬礼したことは、他でもしていたのであろう。小坂さんは、現在の有権者のためだけでなく次代の有権者のことも視野に入れる政治活動の信念とされていたのではないかと、推測する。