百日紅の花 第三部・31 | ありこのカコとハレとケと

ありこのカコとハレとケと

気まぐれに色々と。暇潰しと見せ掛けて、実は盛りだくさんなお役立ちネタがてんこ盛り!!…とか言われてるといいなぁ~~~~…

父を囲み3人で家族の思い出話を語り、それで仮眠室で朝までぐっすり眠ることができたのなら…どれだけ楽になれただろう。私はそれが当たり前のことだと思っていた。父もせめて、朝の6時頃までは病室に居られるのかと思っていた。これからの動きは、敵を増やす言い方かもしれないが【病院は既に死んだ人間からはお金はとれないし用は無いんだな】と言いたくなるものであった。


ある程度の時間までは看護師さんも私たちが父を囲んでしみじみすることを許してくれていたが、一定の時間になると、笑顔の中にも【早く出ていってくれないかなぁ】というメッセージを感じた。

午前2時頃になり、そろそろ次の場所…つまり、霊安室に移動するように促された。母と弟は荷物をまとめて、もうここには来ないような体制でいた。

『え?お父さん霊安室に移動したら私たちだけでもこの仮眠室で少し身体を休める時間とか有るんでしょ?なんでそんな片付けてるの?お金払ってんだよ?!』

『何言ってるの、これからそんな暇なんか無いよ、これからのこと…お葬式のこととか係の人が霊安室に来るから、あんたも荷物をまとめて、布団も悪いけどたたんでおいてくれる?』

眠剤を飲んでぐっすり眠りたかったはずの母が、今は逆に私に渇を入れる体制になった。運搬係の方々が病室に来て、ストレッチャーで霊安室に運ぶ準備をすると、またしばらくの時間、3人で廊下で待たされた。大荷物を3人で分担して持って、ではご一緒にいらしてくださいと付いて行く。父の姿は頭から足の先まで真っ白い布が掛けられていた…と言うより、今、思い出すあの時の様子は布が掛けられると言うよりも上から下まで白い包帯でぐるぐる巻きにされていたような印象だ。

ストレッチャーごと何人かで乗り込んだ時にその姿を間近で見た時に私は、何だかギャグ漫画の主人公が大ケガをして包帯をぐるぐる巻きにされたような姿に見えて、ちょっと笑っていたかもしれない。

お父さん…最後まで笑わせてくれるよね~…ぼんやりとそんな気持ちでいた自分がいた。