「オートマが壊れたので修理して欲しい」と入庫してきたT社のミニバン
まぁ正確にはCVTなんですけどね。
はじめましてのお客さんなのですが、そりゃもう絶望の淵と言うか、悲壮感全開❗️
多分、色々なところに相談に廻ったのだと思います。
どこに行っても絶望的な返答しか得られず、残る選択肢はもう廃車か…っていうよくあるパターンのヤツです。
そんなしょっちゅうあっては困るんだけどね
治らなかったら部品代(CVTF代)だけでいいよって伝えて作業開始。
「もう廃車しかない」って所まで追い詰められているのであれば迷ってる暇は無く、とにかく作業を始めてしまわないと前に進みません。
症状は変速ショックやら滑りやら、その後ドーンと追突されたように急に衝撃が加わると言う、これもアルアルですねぇ。
作業を進めていると…
おのれぇー❗️
またオマエか
このサステ◯ナですが、ATFもCVTFも動粘度が低すぎなんですよ❗️
カタログスペック的には、とんでもなく高い粘度指数によって低温でもサラサラで、高温でも粘度低下を起こさないと言う理屈です。
粘度指数は素直にスゴイです。しかし、これってやっぱり机上の空論ってやつで、割と早い段階で粘度が低下してきます。粘度指数が下がってくると言えばいいのかな?
高温で粘度が保持できなくなるんです。
そうなると自慢の粘度指数もすっかり天に召されて、ただのシャバシャバなATF and CVTFになってしまうわけです。
このステッカーが貼ってある車両のATやCVTの故障修理が本当に多い❗️
個人的には絶対に避けた方が良いと思います。そういう意味では、腕が不確かなガソリンスタンドや量販店での交換は少し考え直した方が良いのかもしれません。
普段(車検など)からお世話になっている店舗で、信頼できるメカニックや、顔のきく店員さんがいらっしゃるなら大丈夫だと思うんですけどね。
一応フォロー(笑)
とりあえず、洗浄用の CVTFを使って、廃油の回収と摩耗粉を洗い流す作業に入ります。
ドレンを外すと、熱が加わっているとは言え全く粘度を保てていないCVTFがビチャビチャと出てきました。
頭も顔も床も… メチャクチャ飛び散って最悪です。
床は段ボールを敷いてますけどね。予想通りなんで…
ちょっとマーブルになりかけですが、まだ回復可能か?
微妙な所ですが、蘇生率70%と言った所でしょう。
お客さんも「進めてください」って事なので、ある程度までやっちゃいます。
あと、抜けたCVTFの写真を「ほらこんなに真っ黒だよ」って掲載しても、だいたいどの車のATFやCVTFも汚れていて当然ですし、代わり映えのしない写真なのでもう良いかなぁーと(笑)
ちなみに、マーブルと言うのは、回復不可能な状態に近づくにつれて、抜いたATFや CVTFが廃油受けで層を作ってマーブル模様になります。
こうなるともう復活は無理です。金属や磨材の物理的な摩耗は交換しか修理方法がありません。
一回で⒋5Lほど抜けるので、3回ほど交換すればOKでしょう。
オイルパンめくらないのか?って思うかもしれませんが、オイルパンをめくるとストレーナーも交換すると思います。今回の場合は「回復する」と言う見通しが立ってから最後に仕上げとして交換するのが良いと判断しました。
3回目の交換でも、目視ではあまりキレイになったような印象はありませんが、問題はこれで油圧が復活してくれるかどうかです。
あえて学習はリセットせず、どこで異常をきたすかを見ていきます。
まぁロックアップでしょうけど。
ちなみに、この判断はCVTFが高温状態でないと判定が出来ません。
ちょっと走って油温を上げると、時々変速に失敗する時があります。ソレノイドが物理的にダメな場合は、変速せずに強制的に戻されるか、しばらくして急に変速するって感じ。
CVTは無段変速と言われますが、ロックアップやスタートクラッチ(ホンダ)など、従来のAT車の機構と似た部品も存在するんです。
これで一旦お客さんに返却します。
そこそこ普通に走れるようになったし。
5千kmくらい走って、次のオイル交換のタイミングで改善しているようであれば、ストレーナーを交換してもっと高性能なCVTFを入れます。
症状が再発したり、酷くなるようであればまた相談しましょう。←廃車も視野に入れて…
と、こんな感じですね。
私にとっては日常でも、たぶんお客さんにとっては非日常(笑)
なんとか軽症で済みそうでよかったです。