デザインは感じることにある
始まりはアメリカ出張
野村不動産に所属していた1999年に出張でアメリカに行くことになりました。ミッションは「日本の不動産業界がどう変わっていくのか?」を見てくることでした。
1ヶ月にわたりアメリカを縦断してアメリカの不動産市場を視察しました。
そんな出張中でシカゴに着いた翌日が休日ですることもなかったので、気がむくままにシカゴ郊外のオークパークにあるフランク・ロイド・ライトの自宅の視察に向かいました。特に興味があったわけでなく、手にしていた「地球の歩き方」の中に観光地として紹介されていたからです。
当時は会社の経営のことを考えていた時期でしたので、全く美術的なものには興味を持っていませんでした。そのため、折角シカゴに行ったにもかかわらずシカゴ美術館の浮世絵コレクションも見に行きませんでした。
ホテルに来ていたタクシーに乗って指示しても場所が分かりにくいということで、オークパークまで行って住民に聞きながらライトの自宅を目指しました。
感じたことは数字ではなく感じること
建物はアメリカの郊外でよく見かける普通の家でした。心の中では「やはり歴史のないアメリカではこんな家も国指定の美術品にしないといけないのか」と軽蔑しました。建物中は保護されているため、財団の主催するツアーに参加して内見するしかありませんでした。
そんな軽い気持ちで入った家。玄関ホールからライトに心は鷲掴みされました。ともかくどこを切り取っても美術品になるような空間に圧倒されました。至るところに工夫がされていました。訪問した時はちょうどバスルーム周りの改修工事がされていました。
ツアーは何か探検をするような感じで「次に何が出てくるのか?」とも話せるワクワクした空間がライトの自宅の中です。そんなツアーの最後のところでライトが子供たちのために作ったホールに案内されます。ホールへの廊下は狭く薄暗い空間でした。
そんな狭い空間を過ぎると天井の高いホールになります。とてつもなく高く感じる空間。実際には3M程度しかないのですが、狭い空間を通ってますので錯覚で高く広い空間になってました。
ホールを最後に自宅を後にします。外観を見て、「こんなに小さな家だったの?」ってびっくりします。お金のない時期に作った家なので、ライトは一生懸命考えて快適な空間にしています。
ライトの家は、今まで自分が持っていた価値観を根底から覆しました。当時私は、マンションや戸建ての企画をする時には、「できるだけ広い空間」や「できるだけ天井の高い空間」を作ろうとあの手この手を駆使していました。
例えば畳数での表示で大きくするために㎡から畳数への換算での小手先の工夫をしていました。多分今でもマンションや戸建ての企画では使われている手法だと思いますが。あるいは、梁型があればできるでか薄くする工夫をしたりして、数字としての優位性を求めていました。
しかし、そんなことは全く意味がないことで、数字ではなく感じることの方が大切なんだと考えさせられるようになりました。
感じることを考える
人は、数字で認識することは不可能なことなのです。ただ単に皮革検討しやすいように数字で表示しているだけです。感覚の話として、人間が数値に違いがあると感じるのは「1%以上の差」がある場合だと言われています。
分かりやすい話が1グラムと2グラムの違いはわかるけど、100グラムと101グラムの違いは分かりにくいということです。
天井の高さでいえば、最低でも2M(200cm)の高さはあります。そのため、2センチ以上の差がないと差はわからないことになります。しかも、この差の認識は同時に経験した場合になります。実際には違ったモデルルームでの差なの数字的にもっと差がないと感じられないものになります。
この感じられることが実は大切なことであって、数字的に優位性があることが必ずしも住環境としていいとは言い切れないことになるのです。
脳は見た通りに認識しない
人はどうしても
広く感じることが大切