謙遜も会話の中で、時には重要であるが、勝負に赴く人間として


あまり否定的な言葉は慎みたいものである。


大会で他のチームのコーチとの会話である。挨拶代わりのやりとり


が始まる。


「選手の状態、どうですか?」


「いやあ うちは駄目ですよ、ただ出るだけですから」


横にいる選手はきまり悪そうな顔をしている。


できればこんな会話は避けたいものである。選手が可愛そうである。


何のためにこの日のためにやってきたのか。選手がコーチに対して


不信を感じかねない。選手の微妙な心理を察してやらなければいけ


ない。


私は、こう言ってきた。


「たぶん、今日はなんとか行って欲しいね。やってみないとわからない


けどね」


選手が柱の向こうで聞いているかも知れない。


このあたりからレースが始まっているのである。自分の選手に自信を


持ちたいものである。