婚姻関係にない男女の間に生まれたお子さま(非嫡出子)が、亡くなった父親との法律上の親子関係を確定させ、相続権を得る方法として


「遺言認知」と「死後認知」 という制度があります。



どちらも「父子関係を確定させる」という目的は同じですが、


要件・手続き・最終的な結果 には大きな違いがあります。
 

この記事では、行政書士の視点から、専門用語をできるだけ使わずに、両者の違いをわかりやすく解説いたします。



1. 法的要件の違い

最大のポイントは、

 

・父親の生前の意思表示があるか
・誰が手続きの主体になるか


という点です。

● 遺言認知とは

父親が生前に作成した遺言の中で
「○○を認知する」
と明確に意思表示することで、父親の死亡後に認知が成立する方法です。

父親自身の意思表示が必要

遺言書が民法の形式に適合していること(自筆証書遺言・公正証書遺言)

遺言者に遺言能力があること(満15歳以上・判断能力があること)

※「面倒を見てもらいたい」などの曖昧な表現では認知として認められません。

● 死後認知とは

父親が亡くなった後に、
子ども本人やその法定代理人が家庭裁判所に申し立てる手続き です。

父親の意思表示は不要(すでに亡くなっているため)

裁判所が DNA鑑定や写真・手紙などの証拠をもとに血縁関係を判断

現在、法律上の親子関係が未成立であること

申立ては「父が亡くなってから3年以内」

死後認知は、裁判所が強制的に親子関係を判断するため「強制認知」と呼ばれます。

2. 手続き(実現方法)の違い


● 遺言認知の手続き

父親が生前に遺言書を作成

死亡後、遺言執行者が役所へ「認知届」を提出

子の戸籍に父親の氏名が記載される

手続きは比較的スムーズ

相手方は不要

裁判が必要ないため費用も時間も少なめ

自筆証書遺言の場合、開封前に家庭裁判所の検認が必要

● 死後認知の手続き

子ども本人や法定代理人が家庭裁判所へ「認知の訴え」を提起

DNA鑑定・資料提出などで審理

親子関係が認められれば裁判が確定し、認知成立

役所へ届出

裁判が必要

相手方は検察官(父はすでに死亡しているため)

期間は数ヶ月〜数年

費用は収入印紙・切手・戸籍類取得費用・弁護士費用・DNA鑑定費用など

3. 認知が成立した後の結果について
● 親子関係と相続権

遺言認知・死後認知ともに、認知が成立すると
その効力は出生時にさかのぼります(遡及効)。

つまり、

父親の「法律上の子」として扱われる

嫡出子(婚内子)と同じ相続権を得る

法定相続分・遺留分も同等

戸籍に父の名前が入る

相続税の基礎控除額が増える可能性がある

という効果が生じます。

4. 遺産分割への影響の違い
● 遺産分割前に認知が確定した場合

→ 他の相続人と同じ立場で遺産分割協議に参加できます。

● すでに遺産分割が終了していた場合

既に成立した遺産分割をやり直すことは原則できません。

認知された子は、他の相続人に対して
自身の法定相続分に相当する金銭の支払い(価額の支払請求権)
を求めることができます(民法910条)。

5. 実務上の違い(わかりやすいイメージ)
● 遺言認知

遺言書により手続きが迅速に進むため、
「遺産分割前に認知が成立する」ケースが多く、
結果として金銭賠償だけになる可能性は低めです。

● 死後認知

裁判で時間がかかるため、
他の相続人が遺産分割を先に済ませてしまうことがあり、
その場合は「金銭賠償のみ」となる傾向があります。

◆ まとめ:両者の違いは「父親の意思の有無」

遺言認知は、
父親が遺言という“手紙”で意思を残してくれたケース。

死後認知は、
父親の意思が確認できないため、裁判所に“嘆願”して血縁を証明するケース。

どちらも最終的には同じ親子関係を得られますが、
そこに至るまでの 負担・期間・費用・手続きの難易度 は大きく異なります。

「どちらの制度を使えばよいかわからない」
「認知が必要かどうか知りたい」
「遺産分割が進んでしまっている」

このような場合は、状況に応じた判断が重要になります。
行政書士として、必要な手続きのご相談や書類作成をサポートいたします。
お気軽にご相談ください。