前代未聞。

タクシー高速道で、縁石に激突し、
横転大破。乗客と共に運転手も死亡。

乗客は、出光タンカー社長の松尾氏。

「運転中に、病死(タクシー運転手が)と見られるそうだ。」

これ、誰にでも、明日はあなた、の可能性があるが・・・。

松尾一郎社長の座右の銘は
「Men for Others, with Others」

出光タンカー社長・松尾一郎氏、新エネ輸送の準備進める

 出光タンカー社長 松尾 一郎氏 出光タンカー社長 松尾 一郎氏
紙面ビュー
 7月1日付で出光タンカーの社長に就任した松尾一郎氏は脱炭素の潮流、コロナ禍、ウクライナ危機と取り巻く環境が厳しさを増す中で、「出光興産グループの基盤である燃料油事業の原油・石油製品の安全・安定輸送の使命を果たしつつ、将来の新エネルギーについても、必要となる外航輸送の準備を遅滞なく進め、サポートしていく。また低炭素商材など多様化するグループの輸送需要を積極的に取り込み、業容の拡大を目指す」と抱負を語った。昭和シェル船舶との合併から2年が経過し、統合効果(シナジー)も高まった出光タンカーの戦略などを松尾氏に聞いた。

(聞き手 鈴木隆史)

 ――就任の抱負を。

 「私は2021年7月に出光興産の製品需給部長から出光タンカーに異動した。出光興産での約30年間のキャリアの中では、生産計画や製油所の生産管理など石油製品の供給の仕事をメインとしてきた。外航タンカーの運航、輸送に携わるのは初めての経験となった」

 「原油・石油製品を取り巻く環境は、カーボンニュートラル・脱炭素の機運の高まりと内需減退により、需要減少が見込まれる。これらに3年目に入ったコロナ禍、ウクライナ危機が重なり、事業環境は不確実性の高い状況にある」

 「そうした中、出光興産グループの基盤である燃料油事業は今後も国内への石油製品の安定供給の継続と併せてカーボンニュートラル・循環型社会へのエネルギー・マテリアルトランジションへの取り組みを押し進めている。そのような状況に対し、当社も原油・石油製品の安全・安定輸送による貢献と新エネルギー輸送においても遅れることなく輸送体制の整備を進める」

 「また原油・石油製品以外にも出光興産グループが扱う石炭、ケミカル品などの外航輸送を当社が担っているが、今後もアジアを中心に需要拡大が見込まれ、さらにカーボンニュートラル社会に向けた低炭素商材の需要も伸びていくだろう。これらの輸送需要をしっかりと取り込み、業容の拡大を目指したい」

■黒字を確保

 ――22年3月期の決算をどう総括するか。

 「22年3月期は経常利益8億7400万円で黒字だったものの、前の期(21年3月期)と比べて75%の減益となった。22年3月期はコロナ禍が継続し、原油需要は大きく停滞、一方で圧倒的な船腹供給過剰が継続しVLCC(大型原油タンカー)市況の低迷が長期化した1年だった。ただ出光興産グループの石油製品や潤滑油、石炭などで底堅い輸送需要があり、黒字を確保できた」

 「足元のVLCC市況は依然低いものの、最悪期は脱した。23年3月期は市況回復による一定の業績改善を期待している」

 ――昭和シェル船舶との統合から2年が経過した。これまでの取り組みをどう評価するか。

 「統合によりVLCCの船隊規模が10隻から21隻へと倍増し、原油輸送の効率性が高まった。スムーズなエネルギーサプライには規模が重要だと改めて感じている」

 「安全運航や環境対応に関して、お互いの文化を認め合い統合効果が出始めている。例えば倍増した船隊の安全運航への取り組みとして、新たに用船安全チームを立ち上げ、自社管理船だけでなく用船への安全啓蒙(けいもう)を強化した。また水際の安全強化として出光興産グループの製油所・事業所へのバースマスター派遣の内製化を進め、安全の一元管理の実行に向け取り組んでいる」

 ――出光タンカーの現在の船隊規模は。

 「VLCCが21隻。そのうち自社管理船が5隻、定期用船が16隻だ。VLGC(大型LPG〈液化石油ガス〉船)は6隻(自社管理船2隻、定期用船4隻)、そのほか石油製品、石炭、潤滑油やケミカル品の輸送をスポット用船で実施している」

 「VLCCについては21隻の運航船を出光興産グループ向けに投入し日量100万バレルの製油所需要をカバーしている。VLGCについては出光興産が出資するアストモスエネルギー向け定期用船契約に投入している」

■中古買船も検討

 ――次世代燃料焚(だ)きを含めた船隊整備の方針は。

 「グループの原油輸送需要に応じてVLCCの船隊規模を調整していく方針だ。リプレースには環境規制に対応した船の導入を優先するが、中古買船も含めて検討している。足元では23―25年の船台が埋まっており、船価も高騰している。EEXI(既存船の燃費規制)やCII(燃費実績の格付け制度)などの新たな環境規制も控えており、今は発注するには難しい時期だ。こうした外部環境と一船一船の輸送契約を見ながら適宜判断していきたい」

 「重油に代わる次世代燃料船についてはLNG(液化天然ガス)、アンモニア、メタノール焚きなどいろいろ候補があるものの、船舶燃料として供給安定性が低いなど、それぞれクリアしなければならない課題があり決定打がない」

 「当社では若手社員を中心とするTeam―PNG(Project Next Generations、若手中心の次世代船舶、新エネルギー輸送などを調査するチーム)を結成し、次世代燃料船の情報収集を行っているが、現状ではVLCCではLNG2元燃料船が最適解と考えている。ただ、LNGはカーボンフリーではなく、最終型ではない。今後の技術開発状況や供給安定性などを見ながら、適切なタイミングで次世代燃料船の投入を検討していく」

 まつお・いちろう 88(昭和63)年横浜国大経済卒、出光興産入社。13年北海道製油所副所長、15年国際需給部次長、17年需給部長、21年出光タンカー副社長、22年7月から現職。神奈川県出身、59歳。座右の銘は「Men for Others, with Others」。


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