【支配のための核兵器と自衛のための核兵器】

ロシアが戦略核兵器の演習をするというので、西側メディアは、ロシアが核兵器で脅していると大騒ぎしている。実際には、演習は定期的に行なっているもので、アメリカでもどこの国でもやっているようなことにすぎないらしい。ただ、NATO諸国がウクライナに軍隊を出すとか、ウクライナの外からミサイルでロシアの領土を攻撃するとか、この頃発言していて、ロシアとしては、その方向でいったら、どこへ行き着くのかを示す必要があるのだと思う。

プーチン大統領は、2022年2月に軍事介入が始まった当初から、これはロシアの存続がかかった戦いなのだということを言っていた。ウクライナ内部での紛争が、何故ロシアの存続に脅威を与えるのかということは、当初は理解できなかったけれど、この2年で、NATO諸国の狙いはロシアを弱体化させて、政権を乗っ取ることだったということが、だんだんとわかっていった。ウクライナは、2014年に起こったクーデターで、アメリカの傀儡政権に入れ換わったのだけれど、それはウクライナにロシアと戦争させて、ロシアを弱体化するためだったのだ。

アメリカは、核兵器を作った最初の国で、唯一実戦に使った国でもある。アメリカの政府は、軍事産業資本に支配されているけれど、彼らはまさにアメリカを、軍事力で脅して世界中を支配するマフィアのような国にしてしまったのだ。それで第二次世界大戦後、アメリカは世界中で戦争を起こしては、多くの国々を事実上の属国のように支配してきて、一度も攻撃されることがなかった。核兵器を持っている国を攻撃することはできない。そのため、アメリカの覇権支配から逃れようとする国は、自らも核兵器を所有することで、アメリカの脅しから身を守るしかなくなった。

核戦争の危機と言ったら、1962年のキューバ危機がある。10月16日から十日ほどの間、世界は核戦争の危機にさらされたと言われている。ソ連がキューバに核ミサイルを配備したからだという話だったけれど、改めて調べてみたら、実はアメリカの諜報機関がしかけていたことから来ていたことがわかった。ソ連は、理由もなくアメリカを攻撃しようと思って、キューバに核ミサイルを配備したわけではなかったのだ。キューバがアメリカに乗っ取られそうになっていたから、核ミサイルを配備することで、アメリカの侵攻からキューバを守った。それで、当時のキューバのカストロ政権は、政権を守ることができたわけだった。

キューバ危機の3年前に、キューバ革命が起きて、カストロが政権を取ることになったのだけれど、それまでのキューバはアメリカの傀儡政権に支配されていた。キューバの農地の7割が、アメリカの企業の所有だったというから、つまりは事実上の植民地だったのだ。カストロ政権は、アメリカの傀儡政治家を排除して、農地を接収し、国有にして、利益が国民に還元されるようにしていた。

それでアメリカの諜報機関が、カストロ政権を転覆させて、キューバを再び傀儡政権にしようとしていたのだ。そのために、キューバの亡命者たちを反革命軍として組織していた。キューバの亡命者たちというのは、つまりはアメリカの傀儡政権下で、賄賂をもらってはキューバの農地などを売り渡していた売国奴たちだということになる。こういう人たちに武器を持たせ、軍事訓練をして、キューバを攻撃させようとしていたのだ。

当時のケネディ政権は、軍部に説得されて、米軍が介入しないのであればということで、この作戦を承諾したそうだ。しかし、亡命者の反カストロ軍は作戦に失敗して敗退した。それで米軍はやはりキューバに侵攻しようとしたのだけれど、ケネディが承諾しなかった。そうでなかったら、米軍がキューバに侵攻して、イラクやリビアのようなことになっていたかもしれない。アメリカの諜報機関の目的は、まさにそれなのだ。解放戦争といって、政権を転覆させ、大統領を殺害して、事実上の植民地にすること。
その後、ケネディ政権はマングース作戦というカストロ暗殺を含むカストロ政権転覆計画に切り換えて、1962年10月までにはカストロ政権を転覆させる予定だったそうだ。キューバ危機は、まさにその10月に起こったのだ。

乗っ取られる危機に迫られたカストロ政権は、ソ連に援助を求めた。それで、ソ連軍が船に資材を積んでキューバにやってきて、核ミサイルを配備するための軍事基地を建設することになった。かなりの数の軍隊もキューバに来ていたらしい。しかし、そうでもなかったら、キューバは米軍に侵攻されて、再びアメリカの植民地のようにされていたところだったのだ。

1962年の10月に、ソ連の核ミサイルがキューバに配備されていることを、アメリカの諜報機関が発見した。そこから世界が核兵器戦争の危険にさらされた十日間が始まったということだった。しかし、ソ連もキューバも、米軍の侵攻を防ぐために、核ミサイルを配備していただけだった。アメリカがキューバ攻撃をやめさえすれば、核戦争に発展する危険などはまったくなかったのだ。

それが、まるでソ連がキューバを利用して、アメリカを核攻撃しようとしているかのように報道されていた。だから、核兵器戦争まであと一歩というところまで来ていたように思われていたのだけれど、事態はそういうことではなかった。起こったことはつまり、ソ連が核ミサイルを配備したことで、アメリカはキューバと平和的に交渉しなければならなくなったということだった。その結果、ケネディ政権は、キューバを攻撃しないと約束して、ソ連は核ミサイルを撤去した。

アメリカの経済学者ジェフリー・サックスは、アメリカの諜報機関は、他の国の諜報機関とは違って、外国で紛争を起こさせたり、クーデターを起こしたりする作戦を行う機関なのだということを言っていたけれど、キューバ危機の頃は、まだかなり大っぴらにやっていたことがわかる。あの頃は、中央情報局が直接やっていたけれど、後にはNEDのような「民主化のため」の活動をするということになっている政府機関だとか、海外支援のための慈善組織だとかが、その仕事を行うようになっていったのだ。そのために、構造が見えにくくなっていった。しかし、そうした表向きは平和そのもののように見える組織の後ろには、やはり中央情報局がついていて、その指示によって動いている。

そうやって、チベット紛争もウクライナのマイダン革命も起こされたし、最近では、ハンガリーでの反政府デモや、グルジアでの外国のNGOを規制する法案に反対するデモなども、同じようにして組織されていた。つまりは、アメリカのグローバル資本、とりわけ軍事産業資本の利益に反する政権は、そうやって転覆させようとして、あらゆる攻撃が加えられてきたのだ。

そこまで見えてきてようやく、ウクライナの紛争への軍事介入が、ロシアの主権を守るための戦いだったということが理解できる。30年前のソ連崩壊で、ロシアがアメリカのグローバル資本の言うなりになる政権に入れ換えられたあとで、プーチン政権ができて、政治腐敗を一掃してしまった。それで、西側のグローバル資本はそれまでのようにロシア経済を搾取することができなくなった上、アメリカの国外での政権乗っ取りに軍事介入してくるようになった。それで、プーチン政権を転覆させて、ロシアを再び言うなりになるようにしてしまおうという作戦だったのだ。そのために、ロシアが軍事介入する以外にないところまで、ウクライナ軍にドンバスの住人を虐殺させていた。

その後、ドンバスは住民投票でロシア併合が決まり、ロシア軍はドンバスを次々と解放していっていて、ウクライナ軍は壊滅状態だ。それなのに、西側諸国はウクライナに停戦させようとせず、軍事支援をやめようとしない。普通の方法で勝ち目がなくなったからか、ミサイルでロシアの国境の街を爆撃したりしている。それで今、ウクライナの外からロシアをミサイル攻撃することも許容の範囲だと言い出しているのだ。つまり、ロシアを核攻撃することもあり得るという事態になっている。

ロシアが核兵器を保有しているのは、まさにそうした事態に備えてのことなのだ。西側の軍事産業資本にとっては、自分たちが攻撃されないなら、他の国が核攻撃で廃墟になってもかまわないらしい。実際、できたばかりの核爆弾を、日本で2回も投下したし、その破壊力を見ていながら、さらに破壊力の強い爆弾を作り続けていた。まさに気狂いに刃物といった状況なのだけれど、これに対抗して主権を守るためには、同等の核兵器を保有して、何かのときには、それを使う用意があるということを示すしかない。それによって、相手を正気に戻して、平和的に交渉する道があることを、思い出させるしかないわけだ。

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画像は、キューバ危機当時のフィデル・カストロ


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