【戦争が作られる時代が終わる】

5月2日は、ウクライナのオデッサで、マイダン政権に反対する人たちの抗議デモが、暴力的に弾圧されて、多くの死傷者を出した事件があった10周年だったそうだ。2014年にキエフのマイダン広場で、EU加盟を要求するデモが行われていて、そこに過激な民族主義者のグループが加わって、暴力的なクーデターに発展した。それにより、ウクライナの政権はその過激な民族主義者に乗っ取られた。この政権が、ウクライナ民族至上主義を唱えて、ロシア語を話す人々を弾圧し始めたのだ。そのため、ロシア語を話す人々が多い東部で、この政権に抗議するデモが行われた。それが、いたるところで暴力的に弾圧された。

その弾圧というのが、通常の抗議活動で使われるような、催涙ガスだとか放水車だとかその類ではなかった。金属バットで殴る男たちがいて、銃を持って撃ちかかってきたり、戦車まで出てきたりもした。オデッサでは、デモの人たちが攻撃されて、労働組合会館に逃れると、過激な民族主義者たちが建物に火をつけた。そして、火から逃れようとして、人々が窓から出ようとするのを、銃で撃ってきて、道路に降りた人を、金属バットで殴り殺していた。

どう考えても凶悪な犯罪なのだけれど、捜査も行われず、誰一人として責任を問われなかった。ウクライナを追われた政治家のヴィクトール・メドヴェージェクは、この事件があった10日前に、マイダン政権の政治家たちが集まって、計画を立てていたということを、オデッサ騒乱10周年のインタビューで語っていた。オデッサの惨劇は、過激派グループが偶発的に起こした事態ではなく、計画的に行われていたというのだ。メドヴェージェクは、そのインタビューの中で、その政治家の名前も明かしていた。彼らは、この過激派グループをオデッサに運んでいたのだそうで、そのうちの一人は、計画が成功した報酬として、オデッサ知事のポストを得たということだ。

ウクライナでこのような暴力的な政権乗っ取りが行われたのは、ウクライナをロシアと敵対させて、戦争させるためだった。アメリカ政府は、プーチン政権がソ連崩壊後、ロシア経済を建て直して、NATOに対抗できる軍事力を持ってしまったのが、気に入らなかったのだ。何しろNATOは、ソ連崩壊後、世界中で不法な戦争のやり放題だったのだから。それで、何とかまた経済を崩壊させようとして、かつてソ連の一部だった国々の政権を乗っ取って、ロシアと敵対させようとしていた。それで、2年前にロシアがウクライナに軍事介入することになったけれど、この事態を引き起こそうとして、実はもう10年も前から計画が実行されていた。

5月2日は、1945年にソ連軍がベルリンを制圧して、ブランデンブルク門に国旗を掲げた記念日でもあった。79年前のことだ。ナチ政権に乗っ取られていたドイツは、やはり過激な民族主義者に支配されていて、ユダヤ系の市民を弾圧していた。しかし何よりも、ナチ政権はソ連のロシア人に敵対していて、ソ連に侵攻したドイツ軍は、いたるところで市民を虐殺していた。

当時ヨーロッパのあちこちにあったユダヤ人強制収容所には、ロシア人も多く収容されていて、虐待され、虐殺されていたのだ。この強制収容所は、実はもともとユダヤ人を収容するために計画されたのではなく、ロシア人を収容するためだったのだということを、ロスコスモスの元代表のドミトリー・ロゴジンが、ロシア在住のドイツ人ジャーナリスト、アリーナ・リップのインタビューで言っていた。しかしソ連は、ドイツ軍にモスクワまで侵攻され、最も多くの犠牲を出しながら、ドイツ軍をベルリンまで追い返し、第二次世界大戦を終結させた。

つまるところ、80年以上前にドイツに起こったことも、10年前にウクライナに起こったことも、同じことだった。ロシアを攻撃するために、英米のグローバリストたちが、まわりの国の政権を乗っ取って過激化させたのだ。そのために、もともとロシアと関係の深かったドイツやウクライナが分断させられて、敵対させられた。ウクライナなどは、関係が深いどころか、もともと同じ一つの国で、民族的にも違いがないのに、それでも違いがあるかのように思い込まされたのだ。

その一方で、今アメリカでは、学生たちの反戦デモが激しくなっている。大学でウクライナやガザの反戦デモが行われていて、警察が弾圧に入っているそうだ。アメリカ政府がウクライナやイスラエルを支援し続けていて、米軍の兵士たちも傭兵という名目で、ウクライナや中東へ送られている。そのような状況で、学生たちが抗議デモを行なっているのを、警察隊が催涙ガスやトウガラシスプレーで攻撃しているのだ。それで、この2週間で1500人も逮捕したということだった。まるで、ベトナム戦争当時の反戦運動と同じだ。いかに筋が通らなくても、いかに国民が反対していても、どうしても戦争を続けようとするアメリカ政府は、抗議活動を弾圧しようとして、国民に暴力を振るっている。

フランスでも、5月1日のメーデーに行われたデモで、多くの人々がウクライナやイスラエルへの軍事支援への反対を訴えていて、ここでも警察隊が放水したり催涙ガスを使ったりしていた。これもまた、ベトナム戦争当時の反戦運動を思わせる。フランスも、マクロンが軍隊をウクライナに送ると言い出して、騒ぎになっていたけれど、2022年からもう傭兵という名目でフランス軍の部隊がウクライナに送られていた。ロシア軍が兵舎をミサイル攻撃して、60人ものフランス兵が一度に犠牲になったこともあった。

ベトナム戦争も、国民の負担が重くなり、アメリカやフランスで反戦運動が激しくなった結果、米軍は撤退することになった。ちょうど十日ほど前に、アメリカの議会でウクライナへの支援が可決されたとき、ロシアの外務省報道官マリア・ザハロワは、アメリカはベトナムやアフガンのときと同じように、屈辱的な敗退を迫られることになるだろう、と言っていたけれど、その事態がすでに起こり始めているようだ。

やはりソ連の一部だったグルジアでは、今、外国のNGOを規制する法案をめぐって、激しい抗議デモが行われている。しかしこの抗議デモは、アメリカやフランスの反戦デモと違って、ソロスなどのNGOが組織しているものだ。アメリカの諜報機関は、グルジアもウクライナと同じようにロシアと敵対させようとして、工作を続けている。アメリカの諜報機関は、NGOを使って、民主化のためという名目で、反政府活動を組織して、政権を乗っ取るので、外国のNGOを規制する法律は、その影響力を抑えるために、必要なものなのだ。グルジアは、大統領がアメリカ政府の傀儡なのだけれど、与党の中には、グルジアのウクライナ化を防ごうとする政治家も多いらしい。それで、政府が出している法案に、大統領が反対するという、妙なことになっている。

ちょうど5月1日に、この法案が過半数で議会を通り、法律が可決されるまでには、もう一回議決を行う必要があるというところへ来たそうだ。そのため、抗議デモが激しくなり、テロも起こっていて、負傷者が出ているという。アメリカの諜報機関としては、この法律ができてしまったら、外国のNGOは外国のエージェントとして登録しなければならず、資金の流れをすべて報告しなければならなくなる。そうなったら、政治工作する活動が秘密裏に行えなくなってしまう。それで、何としてでも通すまいとして、ものすごいお金をデモを組織するのにばらまいているようだ。

しかし、ウクライナの戦争も、ベトナム戦争と同じように、終わる時がもう来ているような気がする。NATOがいくら軍隊を送り込んでも、もうウクライナには勝ち目はない。それでもとにかく、税金がアメリカの軍事産業に流れるから、何とか続けようとしているのかもしれないけれど、もうウクライナ人たちも、意味のない戦争をする気などなくなっているし、NATOの兵士たちも、ウクライナに送られるなどまっぴらなのだと思う。ウクライナでは、もう毎日のように1000人近くの兵士たちが犠牲になっているのだから。

これまでは、国際刑事裁判所も国連安保理も、NATOの戦争責任を問わずに済ませてきたけれど、この2年間で、世界の権力構造はすっかり変わってしまった。もうアフリカもアラブもアジアも中南米も、アメリカの言うなりになる国は少数派になっている。パレスチナの紛争の停戦決議が国連安保理で可決されたり、国際刑事裁判所でイスラエルのネタニヤフ首相に対する逮捕状が出されようとしていることからしても、もう国連機関もNATOがどうにでもできるような状況ではなくなっているのがわかる。

だからこそ、NATO側も必死になって、何とか戦争を続けようとしているのかもしれないけれど、こんな無法がまかり通るような時代は、いつまでも続くものではないということなのだと思う。あまりにも無法なことが当たり前のように押し通されていて、気が遠くなるくらいなのだけれど、こんな時代ももう長くはないのだと思う。

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画像は、アメリカのカリフォルニア大学でのパレスチナ支援キャンプを排除しようとする警察隊。


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