【イスラムが残虐だという嘘】

イスラエルへのイランの報復攻撃では、イスラムが野蛮で残虐だという話は真実ではなかったということを、世界中の人々にはっきりと見せてしまったようなところがあると思う。もちろん、アメリカの傘下にある国の主流メディアでは、イランが理由もなくイスラエルの市街を攻撃してきたかのように報道していたから、それだけ見たら、イランはやっぱりイスラムだから恐い国なのかと思った人も多かったかもしれない。しかし、イランがイスラエルを攻撃したのは、イスラエル軍がシリアのイラン大使館を爆撃して、大勢のイラン人を殺したからであり、その報復として、イランは大使館を攻撃した空軍基地を爆撃したのだ。イランは、市街地も市民も狙っておらず、軍事施設だけを破壊した。イスラエルの報告では、被害を受けたのは空軍基地の周辺にいた子供が一人だけだった。

それで、イランが残虐だと非難しているイスラエルの政治家たちを見て、いったいイスラエル軍がガザでやっていることは何なのかと、思わないではいられない。ガザでは、もう半年も続く攻撃で、3万人以上の人が犠牲になっていて、そのうち約半数は子供なのだ。イスラエル軍は、ハマスの戦闘員を攻撃しているのだと表向きは言っているけれど、病院や避難所などを無差別に攻撃している。それなのに、イランの攻撃でたまたま巻き添えになった子供一人が犠牲になったと言って、イランは残虐だと非難しているのは、あまりにも見え透いているように思える。

これまで、イスラムは野蛮で残虐な人々だという印象が、メディアによって繰り返し植えつけられてきたのだ。イラク戦争でも、リビアやシリアでも、いつも同じだった。イスラム教徒が残虐行為を行なったという話がまことしやかに語られて、アラブ諸国に対する攻撃が正当化されてきた。イスラム教徒は、神のためなら人を残虐に殺すのも正義だと信じている、というようなことが言われてきた。しかし、今回のイランの報復攻撃の仕方は、軍事施設だけを破壊して、市民を犠牲にしないという、実に見事なものだった。イスラエル軍がパレスチナに対してやっていることと比べたとき、イスラムが野蛮だという話は、実はまったくの嘘だったのではないかということに、気づかされてしまうのではないかと思う。

2020年に始まった奇妙なパンデミックや、その2年後に始まったウクライナ紛争で、メディアがどのように操作されているのかを見てきた人たちは、昨年10月に起こったパレスチナのイスラエルへの襲撃も、同様な煽り報道が行われていたのを見て取っていた。パレスチナのハマスの戦闘員が、イスラエルの市民に残虐行為を行なったというようなことが報道されていたけれど、こうした報道も、つまりはイスラエルへの軍事支援を正当化するためのものだったようだ。

ちょうど今日、パレスチナのイスラエル襲撃事件の真相を扱ったアルジャジーラのドキュメンタリー番組「10月7日」がネットで公開されたところだった。これは、当時の現場を見た証言者の話やアナリストの話、その戦闘で亡くなったハマスの戦闘員が撮影した映像などを集めて調査したもので、ハマスがイスラエルの市民に対して残虐行為を行なったという話は、実は作られた話にすぎなかったことがよくわかる。

赤ちゃんが首を斬られたとか、子供が手を縛られて焼かれたとか、女性がレイプされて殺されたとか、恐ろしい話がいくつも語られていた。アメリカの大統領や外務大臣も、そうした話を公に語っていた。ところが、こうした話のほとんどが、実は一人のイスラエルの警備隊の人が語ったものにすぎず、他に何の根拠もなかったことがわかったのだ。死亡者のリストには、それに該当する人物はいなかった。その話を語った証言者は、画像を持っているといって、ジャーナリストにスマホを見せていたけれど、残虐な画像だから、公開したくないと言って、カメラには画像が映らないようにしていた。しかし、その画像を見たジャーナリストは「私には殺された子供は見えませんが?」と不審な表情で言っていた。

イラク戦争のときも、イラク兵がクウェートの病院の新生児室で子供を保育器から放り出して殺していたという話を、ナイラという女性が語っていたけれど、それはまったくの作り話にすぎなかったことが、あとになってわかった。小さな子供が残虐に殺されたというような話を語るのは、どうも常套手段なようなのだ。そうした話は、議論の余地なく悪いという印象を与えて、容易に多くの人の感情に訴えるからなのだろう。

ガザ周辺の野外音楽フェスティバルの人たちをハマスが襲って、残虐に殺したということが報道されていたけれど、それについては、国連の調査団が視察すると言ったのに、イスラエル側がそれを拒否したのだそうだ。現場にいた人の証言や、スマホで撮影した映像などを見ると、ハマスというよりも、イスラエル軍がハマスも市民も一緒くたにして攻撃しているような状態で、多くはイスラエル軍が撃ちまくっていた弾に当たって死んだということだった。国連の調査を拒否したのは、遺体を調べたら、イスラエル軍の弾が出てきたりする可能性があったからなのかもしれない。

ハマスが襲撃を計画していることは、イスラエル政府も知っていたはずだというのだけれど、ハマスの戦闘員が国境を破って出ると、いつもなら厳重に警備されているのに、そのときはイスラエル軍がいなくて、容易に出られてしまったのだそうだ。そのさまを撮影している映像も出てきた。ガザは周辺を刑務所のように高い塀と警報装置で囲まれていて、いつもなら生命の危険を侵さなければ、外に出ることなどできなかったのに、そのときは簡単に出られたというのだ。

戦闘を予想して国境を越えたハマスの戦闘員たちは、誰もいないので混乱して、周辺のキブツに入っていって、略奪したりしていたことはあったらしい。ハマスの戦闘員ではなく、ガザの市民もたくさん出ていたから、そういう人たちがお店に入って物を盗ったりしている映像もあった。しかし、当時キブツにいた人の証言では、ハマスというよりも、そのあとに来たイスラエル軍が撃ちまくっていて、死んだ人たちはそれで撃たれて死んだのだと言っていた。キブツの建物は、壁や屋根に大きな穴が開いていたけれど、これはハマスが持っていたライフルみたいな武器で開くような穴ではないことは明らかだ。ハマスの戦闘員たちは、Tシャツにサンダルみたいな格好で、ライフルみたいな小さな武器しか持っていなかったのだから。あとからやってきたイスラエル軍が、戦車でやってきて、あたりを撃ちまくっていたのだ。

ハマスが捕虜を連れてガザへ戻ろうとするのを、イスラエル軍がヘリコプターで上から攻撃している映像もあった。多くの人がバラバラとガザの方へ走っていっているのを狙って撃っているのだけれど、それがハマスなのか、イスラエルの捕虜なのか、あるいはパレスチナの市民なのかの区別はつかない。その攻撃で殺されたイスラエル市民も少なくなかったはずだという。ハマスの捕虜になって返された女性は、ハマスがイスラエル軍から守ってくれたのだと言っていた。イスラエル軍が無差別に撃ってくるのを、ハマスがガザに連れて行って助けてくれたのだと。

イスラエル軍がイスラエル市民を殺していたなど、そんなはずがないだろうと思えるけれど、しかしネタニヤフ政権は、これまでもいつも何かと理由を見つけては、ガザを攻撃していたのだ。10月7日のハマスの襲撃をきっかけに、ガザの人々を皆殺しにする勢いで攻撃し始めたことを考えれば、イスラエル政府は、これだけのことをするための理由を何とかでっち上げたかったのだろう。それで、ハマスが攻撃を計画しているのを知っていて、わざと防備を薄くして、周辺を襲わせた。その上で、軍隊を出動させて、ハマスを攻撃すると見せかけて、イスラエルの市民を攻撃していた。それで、これだけの残虐行為をやられたのだからと、ガザでジェノサイドを行うことを人々に納得させたわけだ。実際、イスラエルの人たちは、多くの人が犠牲になったために、感情的になってパレスチナ人を憎んでいた。

ある国が残虐行為を行なったという話をでっち上げて、戦争を正当化するようなことは、実はもう百年以上も前から行われていたようなことだった。百年くらい前にも、ロシア人がドイツ女性を残虐に殺したという話が語られて、それがロシアに侵攻しろというドイツの国民感情になっていたということだった。その話も、実はまったくのでっち上げに過ぎなかった。

いつも、子供とか女性とかが殺されたという話なのだ。毎回そういう話が語られて、それが憎悪を煽り、戦争に加担させられていく。そうしたことが百年以上も繰り返されていたのだけれど、2020年から、それが変わってきたようだ。パンデミックにしても、ウクライナ紛争にしても、情報操作によって煽られていることに気づく人が増えていった。そして、そのたびに、恐ろしい存在だと思わされてきたものが、実はそんなものではないということに気づかされていったのだ。ウクライナ紛争では、ロシアが恐ろしい国だというのは作られた話だったことがわかった。パレスチナの紛争では、イスラム教徒が実は女性に礼節を尽くす人たちだったことがわかり、今度のイランの報復攻撃では、軍事大国イランは国際法を遵守して市民を犠牲にすまいとする国なのがよくわかった。

結局のところ、私たちはある人々が恐ろしいと思わせられて、それでたがいに殺し合うようなことをさせられてきたのだ。だけど、落ち着いてよく見れば、恐ろしい人々などではなかったことがわかる。2020年の頃から、風の時代に入って、もうどっちが強いかで支配し合う時代ではなくなってきているからなのかもしれない。本当は共に生きていける同じ人間だったことが、少しずつ見え始めているのだと思う。もし、それが見えてしまったら、もう私たちは戦争などする必要がなかったことがわかる。行き違いがあったら、話し合いで解決すればいいことなのだから。

実際、昨年くらいからそれまで互いに敵対し合っていたアラブやアフリカの国々がロシアや中国の仲介で友好関係を結んで結束し合うようになっていった。それも、まったく何ということもなく、結束してしまったのだ。おそらくは、互いに敵対させられていたカラクリさえわかってしまえば、人間はもともと違いを超えて共生していくようにできているからなのだと思う。


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