「蜘蛛の糸」
また一人、友が逝った。
接種の後の数十日後だが、家族は全力で否定する。
誰もが罪悪感に苛まれているからこそ、肯定できないでいる。
なんなんだこの世の中は。
人の死は尊いものだった筈だ。
それが今や残された者の心を切り刻む。
今や遺恨だけが残る死がある。
それでも人は平然としている。
何故だ。
日は昇り、日は沈む。
それが30,000回以上繰り返されて人も沈む。
人の手によってそれが縮められる。
戦争に遺憾の意を表している場合か。
足元の友や家族や仲間たちの命が縮められているというのに。
因果関係がないと切り捨てる。
それで医師と言えるのか。
それで為政者と言えるのか。
人の死に無関心になるために医師になったのか。
人の死を隠すために為政者になったのか。
母の死、父の死の時にも感じた虚無感と焦燥感。
蜘蛛の糸にぶら下がるように、ふらふらと。
いつ切れるかわからず。
いっそ今切れればいい。
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