遺伝子ワクチンのような、「急激に」「特定の抗体だけを」「体内で強制的に大量に産生する」方法は、それだけでエネルギーを消耗してしまします。人によっては細菌感染症や誤嚥性肺炎にかかりやすくなったり、がん細胞を早期に排除できなくなったり、基礎疾患が悪化したりします。

それに対して「緩徐な自然感染による免疫獲得」は、ウィルスとの動的平衡状態(共存・共生)に無理なく導いてくれる可能性があります。しかしそのためには、どのような条件や方法が最適であるのかを研究していくことがこれからの重要な課題となります。

自然感染による免疫獲得は、人類の進化の過程で遺伝子にすでに組み込まれているシステムということから、そのための最適な方法が見つかれば、遺伝子ワクチンによる免疫防御のような強い副反応や後遺症のリスクも少ないと考えられます。

実はこの「緩徐な自然感染による免疫獲得」は、2019年~2020年のパンデミック初期に日本で起こっていたことが、2020年に発表された上久保先生と高橋先生による”Paradoxical dynamics of SARS-Cov-2 by herd immunity and antibody-dependent enhancement”という研究論文の中で明らかにされています。

この論文は、インフルエンザ流行曲線の解析から日本に新型コロナウィルスが上陸した時期を解明したという、世界初の画期的な「ウィルス干渉」に着目した疫学論文です。しかし前例がない全く新しいアプローチということで、その内容を理解し正当な評価をすることができる専門家がおらず、残念ながら現時点ではまだ一般科学誌の査読論文とはなっていません。

この論文の中で、日本人が欧米に比べて新型コロナによる感染者や死者数などが桁違いに少ない、いわゆるファクターXの一要因として、「緩徐な自然感染による免疫獲得」である可能性が示唆されており、今後のパンデミック研究において重要な鍵となると考えられます。

具体的には、訪日中国人観光客による緩徐な自然感染のおかげで、日本人は新型コロナウィルスに対する免疫を獲得していたという内容で、少しずつ変異するウィルスに対して、その都度軽く自然感染していたことが、日本を初めとして東アジアなど中国に近い国々では欧米よりパンデミック被害が少なかった理由ではないかと述べられています。

確かにコロナパンデミック以前は、日本中のどこでも多くの中国からの訪日観光客で一杯であり、「自然感染によるワクチン効果」があったのではないでしょうか。そこで、訪日中国人観光客数の2019年9月から2020年3月にかけてのデータを調べてグラフにしてみました。

データから2019年の訪日中国人の数は過去最高の959万人ということで、1年間に約一千万人近くの中国の人々が日本を訪れていたことになります。新型コロナウィルスが見つかった2019年末から2020年3月にかけては、約248万人もの人が中国から来日しています。

中国では、武漢住民の移動が禁止される1月23日までに約500万人が武漢から脱出し、その内約1万8千人が日本に入国したことが渡航記録から判明しています。このことから、日本人は2020年3月19日に入国制限するまでに、自然感染による免疫を獲得していたということが推測されます。

感染症専門家による古典的対策が唯一絶対的だということで、その効果についての何の検証もなく漫然と継続してきたこの2年間を振り返り、これから何をすべきかを皆で考えていく時期が始まりました。まだワクチンなどの人為的介入がなかった初期の調査研究を再検証することで、多くのヒントが見つかるのではないでしょうか。

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