その昔、時々足を向けたカラオケスナックのマスターの話し。彼も若い頃は場末のミュージシャンとして演奏活動していた時期があり、俺とは話が合った。
曰く・・・
「いやあ、TAKU-ZOO君。夜の世界は893との付き合いは避けられないからねえ。色々と苦労するんだよ」
「まあ、そうでしょうね。(経験済みだよ)」
「俺はさあ、ほら、地元で有名なADT組と付き合いがあってね。893の中でもあそこは良心的なんだよ。」
(良心的な893なんていねーよ)と、心の中でつぶやく俺。
「まあ、毎月の経費は仕方ないから払ってるわけよ。」
「ああ、付き合い(みかじめ)ですね」
「大抵の問題は解決してくれるからね。安心料みたいなものだな。」
「安心料ですかあ?」
「そうさ。この間もな、閉店間際にベロンベロンに酔っぱらったチンピラが一人入ってきてな、店で大暴れしやがってな。」
「警察、呼んだんですか~?」
「いや、即ADT組に電話したさ。そうしたらな、おっかねーお兄さんが3人、5分で来たよ。5分だよ。さすがプロだよねー!」
「へえ、それで?」
「もう、チンピラは映画みたいにボコボコにされてな。あっという間に問題解決だよ。」
「へ~え。さすが良心的893っすね!」
「でもな。TAKU-ZOO君。後から請求書が送られてきてな。出張料50万だとさ。いや~まいったよ~。出張料は毎月の経費とは別なんだってな。知らなかったよ~。」
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お分かりだと思うが、店で暴れたチンピラはADT組の仲間だ。典型的なマッチポンプ商法だが、マスターはそれに気づかない。
「助けてやるから金払え」
その手に刃物と拳銃を持っていれば、それは893。その手に注射器を持っていればそれは製薬会社と医者。どちらも「同じ穴のクズ」ってことだな。
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