■何でもかんでも信じるなよ!

イタリア半島の都市「ヴェネチア」の冠水被害の原因について「地球温暖化による海面上昇が原因です」と、例によって恥も外聞もなく出鱈目な解説をする動画が流布されている。「年間数センチの速度で海面が上昇しているのです」などと言っているが、このような「嘘」も問題だが、この話を信じてしまう人達の知性に問題があると思う。

入浴タイムに浴槽に浸かり、バスタブの内側の壁を見つめていただきたい。自分から見て左右の内壁に接している水面(湯面)の高さは(当たり前だが)同じである。右をヴェネチアと想定して、左を東京と想定しよう。右側の水面だけ高くすることが可能ですか?仮にヴェネチアで、つまり右側の水面が上昇しているなら、その現象は左側の東京でも起きている。片側だけが上昇したり下降したりすることはあり得ない。

同様の嘘が「南の島・ツバルの水没」にも使われているが、その島の周囲の海面だけがなぜ上昇するのか、オカルト現象を説明できる方はいますか?ツバルの冠水被害は「地盤沈下」によるものです。この島は「サンゴの残骸」でできているので、巨大な岩盤によって支えられている土地とは挙動が異なるだけです。

同じように「ヴェネチア」の冠水被害の原因も「地盤沈下」です。これは今に始まったことではありません。この土地は「干潟」であり、もともと軟弱な地表面と不安定な地盤(プレート)で構成された土地です。この上に大都市が建設されてしまったので、その都市の成長過程と同調する形で地盤沈下が加速しています。簡単に言えば「重量オーバー」なのです。

ヴェネチアという都市は5世紀のゲルマン人侵略を防ぐという目的でヴェネチア湾の干潟(湿地帯)に作られた都市です。ゲルマン人がイタリア半島に侵入してきた時、北イタリアの住民たちがこの地へと逃れてきて住みつきました。湿地帯なので足場が悪く生活は不便でしたが、この不便さゆえにゲルマン人たちの侵略欲求も半減したわけです。

干潟は当時から侵入者からの防衛に利用されていました。 普段は船が通れる水路には「案内杭」が立ててあるのですが、有事の際にはその杭を抜いて通行可能な水路のガイドを隠してしまうのです。そのような防衛的な理由から整地や干拓は外敵への備えがなくなることに繋がるため禁止されてきました。

その後9世紀には、フランク王国の侵攻によってさらに奥地であるヴェネチア本島に避難することになり、ここが後に水の都ヴェネチア(ベニス)となります。ヴェネチアの地下にあるプレートは毎年数mmずつ沈下しており、10年で数cm沈む計算。 

ヴェネチアは干潟に建てられた都市で海抜が1m程度しかありません。数百年経てば海抜0cmになってしまう計算となるため事態はかなり深刻です。海抜1mの現在ですら高潮をまともに被っており、年間40回は冠水するので建物の老朽化も早い。 現在がそんな状況なので、プレートが沈むのに伴って被害が拡大していくことは避けられず、数百年後には完全に水没するでしょう。

もう一度、言っておきます。ネット上に流布される情報を何でもかんでも鵜呑みにしないで、ちょっとは考えましょう。ヴェネチアだけで起きる海面上昇など、オカルト現象ですよ!

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