「日本の食を守ることも日本の命を守ること。」

ある酒造店が出した意見広告。

【ローカル経済を壊しているのは、誰か】

公表されている資料から、例えば兵庫県の感染経路別患者数※1のパーセンテージを見ても、家庭52.1%、職場16.2%、福祉施設7.5%などに対して、飲食店は最下位のわずか2.9%です。にもかかわらず、飲食店にはコロナウイルス感染防止策として極めて厳しい営業時間制限などが掛けられています。

しかし、制限を課している職員の人たちそのものが、深夜遅くまでの会食を続けていたことが、誰もこの制限の実効性を信じていない証左です。

感染者が出たからこの事実が明るみになっただけで、これ以外に相当数の「掟破り」もあったと思えます。結局、信じてないのに、いじめの様に、飲食店は時間制限など押し付けられる。

 

【このままでは、飲食店がコロナ禍の最大の犠牲者に】

度重なる営業時間制限や酒類提供の中止などにより、全国の飲食店は疲弊し破滅の淵に立たされています。このままでは多くの飲食店の閉店や倒産が避けられません。飲食店の閉店や倒産はそのまま、各店に酒類や食材を卸している納入業者の疲弊や連鎖倒産、そしてそこに関わる人たちの失業や困窮に結びつきます。世界でもっとも安全で豊かな外食文化と評されるまでになったわが国の飲食業界のバリュー・チェーン、長年にわたる関係者のたゆまざる努力のたまものが、この数か月で急速に破綻し、崩れはじめています。

日本人的美徳なのか、飲食店から公には反発が少ないのが現状です。しかし、食を通じて世界に日本の魅力を伝えてきた飲食店が、声も上げられないまま次々に店を畳んでいくのは、なんとも耐えられないことです。

  

【ゼロか100ではない。感染も倒産も抑えるために、意味のある制限策に見直して欲しい】

このたびの制限策が、さまざまな飲食店を一括りにして同じ制限時間で押し切ってしまっていることにも疑問を感じます。「一律20時閉店・酒提供19時ストップ(または酒の提供自体を禁止)」では、飲食店の存続が困難となるばかりか、制限時間を一律にすることが店内や交通機関に密状態を作る原因にもなっています。他の先進国では、レストランの稼働席数を50%までに抑えるなど※2の条件をつけながら、客席入れ替え・回転可能な営業を認めるなど、飲食店の負担をすこしでも和らげるための政策が行われているところもあります。飲食店の営業時間の制限を、感染対策の状況に応じて、そしてその業態や内容に応じて、より合理的なものに見直すことを、切に提言したいと思います。

 

【飲食店を守ることも、「いのち」を守ることにつながります】

医療現場のひっ迫、医療従事者の負担を少しでも和らげるために、感染対策が喫緊の課題であることは言うまでもありません。私たちもその対策に対して出来る限りの協力をするとともに、前線で戦っている医療従事者の皆様に対して敬意と感謝を持ち続けなくてはなりません。※3

しかしながら地域経済を支えている人々の最低限の雇用を守りながら感染対策を進めることも、「いのちを守る」という点で重要性に変わりはありません。グローバル大企業が担う「二割の雇用・三割のGDP」だけでは、日本の地域社会は支えられません。私たちの願いは、飲食店の経営が最低限の健全さを保ち、飲食店が雇用の受け皿であり続けることです。コロナ禍による経営破綻と生活破綻の連鎖を、何とか防ぎたい。地域社会を支えている声なき多くの人たちの「命」も、救いたい。そう、願っています。