主人公は作家。彼のファンだといって接近してきたはるか。彼女の積極的で直接的なアプローチに彼も惹かれていき、付き合いを重ねるようになる。毎日のメールのやりとり。でも彼の奥さんにその付き合いがばれる。彼女にも付き合っている人がいたことを知り嫉妬心を抱く。

一読するとあまりに積極的な彼女に振り回される男を描く不倫話なのですが、その彼女の裏側にすごい【寂しさ】を感じる小説です。信じていた相手(前夫)に裏切られた深いこころの傷、それでも本当に彼を愛することができた喜びと不安、こういったものが彼女の行動に現れているようで、なんだか切なくなりました。主人公の一人称で話が進んでいくのですが、主人公の淡々さとの対比でよけいに彼女のこころの動きが感じられる小説です。

この作家の小説は妙にこころに残る言葉があります。最後にそれをいくつか。

『嫉妬する私は四度苦しむ。嫉妬に苦しみ、嫉妬している自分を責めて苦しみ、自分の嫉妬があの人を傷つけることをおそれて苦しみ、嫉妬などという卑俗な気持ちに負けたことで苦しむのだ。つまりは、自分が排除されたこと、自分が攻撃的になっていること、自分が狂っていること、自分が並の人間であることを苦しむのである。』

『あなたのことを考えると、なぜだか不安な気持ちになる。それでいて、とても勇気づけられる。不安で、怖くて仕方がないくせに、あなたと一緒ならなんでもできそうな気がする。すべてが不確実なときは、すべてのことに可能性がある。』

『愛するという言葉はもともと日本語にはなく、オランダの宣教師によって伝えられたもの。その原義は「大切にする」ということ。』