いい話です。両親から捨てられるように祖父母に預けられてから、人を信じることのできない大学生の慎一が唯一恋愛感情を持っていた高校時代の先生「夏姫」と6年ぶりに偶然に再開し恋人同士となる。慎一は本当に人を好きになることを知るが、その一方で夏姫には歩太という男の影があって、そこでの恋愛感情からくる嫉妬が生まれる。信じていいのか、やっぱり信じてはいけないのか、その狭間で思い悩む。

そして3人に共通しているのが、身近な人の【死】に対して残ってしまったある【思い】。取り返すことができないだけに、こころの中にはずっと残り続けていて、それが【こころの傷】となっている。

「誰に何を言われても消えない後悔なら、自分で一生抱えていくしかない」という言葉が出てきます。すごく印象に残りました。

嫉妬や後悔といった、人間の【暗い部分】が切々と書かれているのだけど、なにかこう、すごく身近な感じがしてすらすらと読めてしまいました。本当に好きだからこそ出てきてしまう理不尽な感情と態度。それがすごくいい感じで書かれています。『君に会いにゆきます』の市川拓司とはまた違ったタイプですが、これも頭の中に映像が浮かんでくる、そんな小説です。是非。