【ジキルとハイド】とは、善良で温厚なジキル博士と粗野で凶暴なハイド氏という、一人の人間が相反する人格を持った、【二重人格】をテーマにした小説の題名。でも、現実的にも、人は皆【無償のやさしさ】と【無慈悲な残酷さ】の二つの面を併せ持っています。

子供の頃、特に生まれてから数年の間は【やさしさ】とか【思いやり】の人格はあまりなくて、むしろ【残酷さ】の側面が多くでているように思います。親や先生が自分の愛情を子供に浴びせながら、【人には優しく】ということを教えていき、子供に社会性がでてくるにつれて、人に対する【思いやり】、【やさしさ】が心の中に育まれてくる。そこから考えると、人は【残酷さ】を先天的に持っているのではないかと思います。

この二つの相反する人格は心の中に共存しています。ただし、それらは自分の力で心の外にでることはなくて、心の中で生まれる、ある【感情】が、いずれかの人格を外に押し出します。例えば;
愛情、喜び、共感、同情 → 優しさ
怒り、嫉妬、不信、余裕のなさ(パニック) → 残酷さ

ただし、大人になり、社会性が高まるほど、自分の心の中にある【残酷さ】を表面的には出さないようにするため、怒りや嫉妬といった感情を心の中で抑えつけ、できるだけ【優しさ】を外に出そうとする。でも、感情というのは時に抑えられないから、ふとしたときに【残酷さ】が出てしまうのだと思います。

この【無慈悲な残酷さ】に対して人は悩みます。自分はなんてひどい人間なのだと自己嫌悪に陥ることもしばしば。そして、その人格に直面した相手も大きなショックを受けたりします。
でもこれって実は全ての人が持っている部分で、普段は外にでないだけ。自分が【残酷さ】を人に対して出してしまったとき、反省はしなければいけないけど、その分その人に【優しさ】で償う努力をすればいい。そして、受け手からすれば、残酷な部分だけでその人が冷たい人間であるとも言い切れない。逆に、優しい部分だけで、その人が暖かい人間であるとも言えない。
その人の【ジキルとハイド】の両面を知り、それを自分が許せると思ったとき、それでもその人に対して愛情を感じることができたとき、その人のことをかなり深く理解したと言えるだろうし、その人はあなたにとって本当に大事な人なんだと思いますよ。

余談です。【エス】という映画があります。心理学の臨床実験で、模擬刑務所を舞台に、ボランティアで集められた人を『看守』と『服役者』に分けて、一ヶ月を過ごすという話。だんだん『看守』役の人が心の中の【残酷さ】を表に出していき、『服役者』を痛めつけていきます。そのきっかけとなったのはある人物の【怒り】。実話だそうです。興味があったら見てみてください。