この間久しぶりに歌舞伎を観ました。



片岡仁左衛門の特集があったのですが


歌舞伎は殆ど退屈になってきた私にとっても

流石な演技に観てよかったと思いました。集中力が続く。

バレエでも歌舞伎でも、トップが面白いかどうかは別ですが、現仁左衛門さんにはどんな役でも引き込まれます。




演目は「松浦の太鼓」というものだった。
主人公は「赤穂浪士」の討ち入りのある吉良家の隣に住む元藩主松浦、という設定。


ドキッとした。


この間見た「マルサの女」もそうだったけど

この元藩主も「正義に拘る」という人物で、話だった。





お隣の家に「正義の為」赤穂の浪士がいつ討ち入りするのか、を待っている元藩主。


事件後1年9か月たっても騒ぎが起こる気配がないので、何をしとるのだ、と正義に燃える心が止まらない。



いざ、太鼓が鳴って討ち入りが始まると自分も加勢いたす、とばかり馬に乗って出かけようとするのを家人に止められるシーンまである。




つまりは、仇討ち、怨恨をはらす、正義だ、

武士として正しいぞ!



みたいな話なのだが





「マルサの女」、でも感じたことですが


あれ正しい、これダメ、の主張が強い作品に

最近私は途端に冷めてしまう。



そんなものは人の数だけ有る気がするし、他人の意見はどうでもよい、私が決める、と思う。





振り返ればコロナ後、ニュースもSNSもこんな話ばかり。

他国の戦争や小さな芸能人の痴情のもつれにも、集中攻撃とか賛否両論が個人を明かさない場でガンガン繰り広げられる。



そういう争いのエネルギーに生きるって、そぐわないんですよね・・・・・。

正しいとか正しくないとかを他人に認めてもらいたい、
他人の心を支配したい、みたいなの、

催眠療法士にとって「空しいなあ」ってことでしかないから。

個人的なブログでせいぜい、自分の信条を言うぐらいしかできない。




だから

仁左衛門は上手いなあ、藩主って感じがするよなあ、と思いながら、作品の主張には言葉がありませんでした。



・・・これからたくさんの血が流されるというのに、隣は呑気でいいよな、


という言葉以外には。私は。







少し前、「マルサの女」の鑑賞直後に思ったのは


「何が正しい、正しくない、という主張はわかったけど、各人あのような行為に走る理由の部分、説明が足りない」、でした。



芸術作品で思想や概念が知りたいわけではない、
人の心の形成過程などを知りたいのです。

その過程が分からないうちは、各登場人物を「正しい、正しくない」などと言えない、という感じです。

法律上正しい、正しくない、などというのを芸術作品で学ぶ必要はありません。




=人がトラブルを起こす理由を知る、バックグラウンドを学ぶ、が大事だと思うのです。

 


芸術には他者理解や不幸の法則を学ぶというのが欲しい、と感じてしまう。



赤穂浪士の時代や劇作家の価値観、倫理、の正しい、正しくない、はどうでもよろし。


各人の価値観であり、宗教みたいなものの話はどうでもいい。





他人を傷つけるような駄目なことを生む構造を理解し→予防する、みたいなことをしないで


「世間ではあれ正しい、これ正しい、だからやれ、従え」みたいなのを言って済ます、

このイージーさがそもそも迷惑行為やトラブル、犯罪などのもとになるわけで。




多くの人は理性で犯罪は防げるみたいな考えですけど

警察沙汰にならないレベルの迷惑事からみたら、その力、理性の力のレベルはわかるはず。


脳(催眠)の法則から言えば、たかだか心のMAX10%の力でしか迷惑事や犯罪は止まらない。




例えば愛することを教えてもらっていない人が、いきなり大人になったら他人を愛せなんていうこと自体が無理な訳で。

 

言葉はそのレベルなのだ。


それを愛することが正しい、みたいな価値観叫ぶだけで他人に強要しても出来ないし、無理してやろうとする人は病んだりします。




正義の主張より世の中を改善するのは、

例えば、モノみたいに他人を利用しようとする人はどうやって育つのか、みたいな心理、環境、集団欲(世間の価値観のエネルギー)を理解し、適切に対処していくことだと思います。






未だに恨みや敵討ちの話はドラマでも多いですね。



何か事件が起きて失ったものがある人に、怒りを我慢せよとは思いませんけど


被害側の人間って「人か獣か」の道を選ばされる様なところに立たされるのではと思います。


そこで他人が決めた「これが正義だ!」みたいな概念に走って、自分の道を失わないのは大事なことではないでしょうか。




怒りを出すだけ出したら、「理由」を多角的に分析することが、再発防止や少なくしていくことにつながる、

これだけは理として覚えておいてほしいなと思うことです。

ではでは。