官僚の犬


ご主人様は文部科学省の官僚だ。
俺はその家に飼われている犬だ。
この家には息子がいる。
大学まであるエスカレーター式の学校だ。
二年連続留年さえしなければ確実に進級できる学校だ。
ちょっとまて。
ここの主人は文科省の役人だぞ。
教育方針を決める役人のはずだぞ。
理想を言えばカリキュラムに沿って行けば
東大に入れるものを提供すべき所だぞ。
なのに私立?
公立じゃ効率が悪い?
要はバカを作ったほうが息子のライバルが少なくてすむ。
優秀な人が増えると就職先だって困る。
某司会者の息子はそれでテレビ局に就職したのだ。
しかし息子は棒に振る。
昏睡強盗したからだ。
彼は高校時代にも万引きした経緯があるそうだ。
こんなことなら入学させなければ良かったのにと思ってしまうが
将来のことなどわかるはずはない。
よくお受験で合格したと聞くが俺に言わせりゃ出来レース。
幼稚園児を見て優劣なんて分かるか。
分かるのは親の履歴書から見える家庭環境。
つまり、お金持ちかどうかだ。
よっぽど飛び抜けて優秀な園児でもない限り
普通のサラリーマン家庭で大学まである
エスカレーター式の学校に合格するのは難しい。
某野球選手の息子が合格できたのはこのためだ。
お母さんの教育方針が良かったからじゃない。
このお母さんは本まで出しているそうだが勘違いも甚だしい。
その子が合格できたのはズバリ寄付金を期待されてのことだ。
この学校に医学部があるのは凄い額の寄付金が集まるからだ。
一方、ライバル校には医学部がない。
ちょっと前まで付属は高校からしかなかったからだ。
それだと寄付金は必要ない。
寄付金の有無で合格は決まらないからだ。
結局は金が有る無しで人生は決まってしまう。
人間は生まれながらにして平等ではない。
貧富の差が存在する。
人の上に人を作り、人の下に人を作る。
人の世はなんと無常なのだろう。
官僚の犬で良かった。

クライマックス


俺は引退した競走馬だ。
現役時代は重賞勝ちまくりで
今は悠々自適で余生を送っている。
それもこれも両親のおかげだ。
両親とも重賞馬。
いわゆるエリート一家だ。
ある時、馬車馬がやってきた。
一見、優秀なサラブレッドのようだ。
走る姿も遜色ない。
聞けば、サラブレッド候補になったこともあったが駄目だった。
理由は両親とも馬車馬だったから。
もし、両親が馬車馬でなかったら
重賞を勝てたか分からない。
ライバルが減ったことに感謝だ。
それにしても似ているなぁ。
オーナーの所にだ。
オーナーは大物宗教家。
誰もが羨む大金持ちだが、幼い頃は貧乏で学校を出ていない。
全てを手に入れている彼も学歴コンプレックスだけは克服できなかった。
そんな思いはさすまいと二人の息子には大学までエスカレーター式の
学校に進学させた。
ちなみに彼は大学まである学校の創設者なのだが、
息子達には偏差値の高い学校に進学させている。
ようは人の上に人を作りたかったのだ。
両親が優秀だと恩恵を受けるのだ。
俺も恩恵を受け生活している。
あぁ、馬車馬のように働かなくて良かった。
赤い目のカラス


黒いだけで不気味がられ嫌う人間達がキライだ。
だが、例外はある。
ヒナの時、命を救われた。
お婆さんだった。
周囲は嫌うものばかり。
唯一お婆さんだけが愛情を注いでくれて
成長すると野生に返してくれた。
当然だ。カゴの鳥ではないのだ。
野生に帰ったといっても寝床が違うだけ。
すぐそばにいた。
お婆さんが気になるからだ。
それはボケ始めていたためだ。
自動車に引かれそうになったのも一度や二度じゃない。
なんとか救う事ができたが今後は保証できない。
それにしても不思議なのは事故の責任が運転手側にあることだ。
お婆さんが明らかに悪いのだが歩行者に責任はない。
一方で電車だと真逆。
電車運転手に責任はない。
線路と車道では違うのだ。
おかしい。
しばらくするとお婆さんは居なくなった。
どうやら施設に入ったようだ。
一安心だが、俺の戦いは続く。
人間のイジメから仲間を守るためだ。
悩みは尽きない、寝れないのだ。
だからいつも充血中。