「なんで、ここから出て来るかなあ」
「すみません。ここから出たら裏に出るかなと、思いまして。このドア、使ってないんですか?」
「使ってないことはないけど。あんまりね」
ん?何?この汚い水の入った寸胴鍋は。
「ここで何してるんですか?」
「仕事だよ、仕事」
「これは、なんですか?」
この汚い寸胴鍋。
「これが仕事道具」
「これがぁ?」
「なんだよ、その言い方」
「あ、すみません…」
「で、あれが出来上がり」
ん?あれ?
佐藤の指差す方を見る。
「わぁ」
物干し竿に緑色の糸がズラーっと掛かって、風になびいている。
「え〜、緑色ぉ〜」
ちょっと近くで見ちゃおっと。
「おい、触んなよっ」
「触りませんっ」
物干し竿に近寄って、糸をマジマジと見る。
「ん?ちょっと草の臭いがする」
「今染めたばっかりだからね」
あ、あの汚い水で?
さっきの寸胴鍋を振り返り見る。
「あの汚い水でって言いたそうな顔だな」
あ、バレてる…。ここは、笑うとこだよね。
「はははっ」
「やっぱり、そう思ってたんだ」
あ…。
「それよりご飯出来て呼びに来たんでしょ?」
「あ、そうでした」
「じゃ、戻って食べよ」
「はい」
「俺は表から入るけど、シンイチはあのドアから戻っていいよ」
「…そうします」
なんで佐藤さんは、表から出入りするんだろ?こっちの方が近いのに。
ま、いっか。先に戻ってお茶注いじゃおっと。
ま、いっか。先に戻ってお茶注いじゃおっと。
裏口のドアから戻り、急須にお茶の葉を入れ、湯を注いでいると、表の入口から佐藤が入って来る。
あれ?佐藤さん、なんかさっきまでとイメージが違う気がする…。
「あっ!長靴じゃない」
「…外で履き変えたけど、何か問題あり?」
「あ、いえ。問題ないです」
履き変えるために表に回ったんだ、きっと。
「お、なかなか美味しそうなのが出来てるじゃん」
「ありがとうございます」
佐藤は流しで手を洗うと、サッと料理の用意されているテーブルの椅子に座る。
「食器とかも勝手に使わせて頂きました」
「ここにあるの全部、ペンションのだから、どれ使ってもいいよ」
「佐藤さんの個人持ちじゃないんですね」
「ああ。俺はシンイチみたいにフライパンとか抱えて来なかったから」
「…」
半笑いだし。
