不顕性感染について
さて、今年もノロウイルスが流行する時期(10月~3月)がやってきました。
昨年は静岡県・広島県における学校給食で大規模な集団感染が発生し、
『不顕性感染』が注目を浴びました。
今回のテーマは、不顕性感染についてです。
不顕性感染とは?
ノロウイルスの主な症状として、嘔吐・下痢・腹痛などが知られております。
しかし、ウイルスに感染しているのにも関わらず、上記のような症状が現れない場合もあり、その状態を不顕性感染、その状態の人を不顕性感染者と言います。
この不顕性感染者は、一見健康に見えるのですが、便などからウイルスを排出している場合があります。そのため、気付かないうちに感染を拡大させてしまう場合があり、注意が必要です。
ノロウイルスの感染力は?
ノロウイルスの怖さはその感染力です。
多くの場合、感染者からは糞便1gあたり109 個(10億)個以上、嘔吐物1gあたり104~108個(1万~1億個)程度のウイルスが排出されていると言われております。(目安:1 gは1円玉と同じ重さ)
それに対して、10~100個程度のウイルスが何らかの形で口に入ると感染してしまいます。
このことから、ノロウイルスに汚染された食品や器具、感染した人などを感染源として、容易に感染が拡大することが予測できます。
もし、自覚症状があれば、十分な対策をとることができますが、症状がなく、自分も周囲の人も感染していることに気付かない場合はどうでしょうか。
昨年度静岡県の小学校における学校給食では、
調理従事者4名の手指を感染源に発症者1000名以上、
広島県の中学校における学校給食では、運搬者1名を感染源に328名にまで感染が拡大しました。
いずれも感染原因と推測された方々には自覚症状がなく、事件発生後、原因追及のため行われた検便でノロウイルスの保有が確認されたとのことです。
このように、始まりは少数の人でも、感染者が触れた食品、調理器具、衣服、施設に接触したことによる接触感染や経口感染、嘔吐物・便などによる飛沫感染等で、大規模な集団感染になる場合があります。
ノロウイルスの対策、予防方法は
予防ポイントをいくつかご案内いたします。
① 手洗い
調理前、食事前、トイレの後など適切なタイミング・方法で手洗いをしましょう。
② 加熱
加熱は中心温度85℃~90℃で90秒間以上が目安です。
③ 調理器具等の消毒
洗剤で十分に洗浄した後、次亜塩素酸ナトリウムなどで消毒しましょう。
④ 健康管理
普段から感染しない様に食べ物等に注意し、本人・ご家族に症状がある場合は、速やかに報告し、対策をとりましょう。
詳しくは以下、厚生労働省ホームページ「感染性胃腸炎(特にノロウイルス)について」をご覧下さい。
(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/norovirus/
)
感染の拡大を防ぐには、早期に感染の有無を把握し、施設全体で対策をとることが重要であり、今回のテーマの「不顕性感染者」の発見には検便が有効です。
弊社では、ノロウイルス検査を2種類の方法で取り扱っております。
是非ご施設様の衛生管理に弊社をお役立て下さい。
【参考文献】
(1)野田衛「ノロウイルス食中毒・感染症からまもる!! その知識と対策」公益社団法人日本食品衛生協会、2013年
腸管出血性大腸菌とは?
気温・湿度の上昇により、食中毒が発生しやすい時期になってきました。そこで今回のテーマは、食中毒菌のひとつ『腸管出血性大腸菌』についてです。
腸管出血性大腸菌とは?
O-157,O-26,O-111等に代表される大腸菌です。
大腸菌は家畜や人間の腸内に存在します。ほとんどは無害ですが、このうちのいくつかは、人に下痢などの消化器症状や合併症を起こすことがあり、病原大腸菌と呼ばれています。病原大腸菌のうち、ベロ毒素を産生し、出血を伴う腸炎や溶血性尿毒症症候群(HUS)を引き起こす大腸菌を腸管出血性大腸菌と呼びます。
症状
無症状の方から、重症の方まで様々ですが、主に腹痛・下痢・血便などを起こします。典型的な症状として、2~9日の潜伏期間の後、激しい腹痛を伴う頻回の水様便、続いて血便が見られます(血便は出血に近い場合もあります)。発熱は多くの場合、37℃台と軽度です。発症者の約5%が溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症(痙攣や意識障害)などの合併症を起こし、時には死亡する事もあります。
どのように感染するのか?
腸管出血性大腸菌に汚染された食品などを経口摂取することで感染します。ごく少量の菌数(50~100個程度)で発症するため、二次汚染が起きやすいという特徴があります。
※二次汚染・・・感染した人から、入浴・タオルの共用・便の処理などを機会に、他の人へ感染すること
腸管出血性大腸菌が原因となった食中毒事例
【O-157が原因となった食中毒】
1996年、岡山県邑久町や大阪府堺市をはじめ、全国各地でO-157を原因とする集団食中毒が多発しました。有症者累計178,777名、死者累計12名にも上りました。
大きく報道されたこともあり、ご存知の方も多いのではないでしょうか。学校給食により食中毒が発生したことから、学校給食に関する衛生管理が見直されました。
【O-111が原因となった食中毒】
2011年、焼肉チェーン店における集団食中毒が発生しました。181名の患者のうち、34名が溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症し、5名が脳症で死亡するなど、重症例が多いことが特徴でした。O-111を原因する死者が出たことは、国内初めての事例でした。この食中毒事件以降、牛生肉に対する規制が厳しくなり、牛生レバーが禁止されました。
予防するには?
①水道水以外の使用を避ける
②用便後の手洗い・消毒の徹底
③症状のある場合は調理作業に携わらない
④生野菜などはよく洗い、食肉は中心部まで十分加熱する
◇腸管出血性大腸菌は熱に弱く、1分75℃以上の加熱で死滅します。
⑤逆性石鹸溶液(100~200倍希釈)での消毒
⑥腹痛による下痢が続いたら、すぐに医師の診察を受ける
以上の予防策を徹底し、
腸管出血性大腸菌による食中毒を防ぎましょう
菌を持っていても症状が現れない場合があります(健康保菌者といいます)。
健康保菌者が菌を拡散しないために、施設の厨房等で調理業務に携わるときは、定期的な腸内細菌検査(検便)を実施することが重要です!
腸管出血性大腸菌の発生状況
2014年の速報はコチラ
また、2012年に保育所における感染症対策ガイドラインが改訂されています。
詳細は下記リンク先をご参照下さい。
ノロウイルスについて
2013年も終わりに近づき、皆様どのような一年をお過ごしでしたでしょうか?
今回の有研健康通信では、12・1月に発生のピークを迎えるノロウイルスについてご説明致します。
ノロウイルスとは?
以前は「小型球形ウイルス」と呼ばれていました。とても感染力の強いウイルスで100個以下の個数でも発症すると言われています。
(感染者の吐物には1gあたり10万個前後)
保育施設・高齢者施設などの集団生活の場においては、集団発生に注意が必要となります。
また、ノロウイルスに効果のある抗ウイルス剤はありません。その為、治療に関しては自然治癒による回復を考え、安静に過ごす必要があります。
冬場は要注意!
ノロウイルスによる食中毒は一年を通して発生していますが、11~2月の冬期に全体の70%が集中して発生しています。ノロウイルスは手指や食品などから経口で感染し、腸管内で増殖する事により嘔吐・下痢・腹痛などの症状を引き起こします。
予防するには?
もっとも重要な予防方法としては「手洗い」です。帰宅後・食事前には流水・石鹸による手洗いを行うようにしましょう。
石鹸自体にはウイルスを不活性化する効果はありませんが、手の汚れなどを落とすことでウイルスを手指から剥がれやすくする効果があります。
もし、ノロウイルスに感染している方が嘔吐などをしてしまった場合は、使い捨てのエプロン・マスク・手袋を着用し、ウイルスが飛び散らないように静かに拭き取ります。
拭き取った後は、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約200ppm:塩素濃度約5%の原液を250倍で希釈)で浸すように床を拭き取り、その後水拭きをします。拭き取りに使用した物は、ビニール袋に密閉して廃棄します。
ノロウイルスに感染していても、症状を示さない不顕性感染もある為、食品を取り扱う方はウイルスに感染しないように注意を払うことが大切になります。
また、ノロウイルスによる感染性胃腸炎を発症された後に職場に復帰される方や不顕性感染者の早期発見の為にも、有研で承っているノロウイルス検査を受けて頂くとより安心して頂けると思います。
年末年始は忘年会や新年会・初詣などで多くの人との接触があるかとは思いますが、しっかりと予防をして頂き、年末年始をお過ごし頂ければと思います。