“愛里跨(ありか)の恋愛スイッチ小説(星之くん編57)” | 愛里跨の恋愛スイッチ小説ブログ

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57、通りすがりの女のひとりごと





ゆっくりと白い封筒を手にした俺は、
ローテーブルのペン立てからカッターを取り出し、
躊躇うことなく封を切った。
開いたと同時にマンダリンの甘くフルーティーな香りと、
ローズの華やかで優美な香りがゆっくりと俺の首に纏わりつく。
まるでいつも茉がつけていた香水が化身となって、
緊張する俺を優しく癒してくれているように。
俺は沸々と沸きあがてくる茉への恋情を抑えきれず、
封筒から便箋を取り出して広げた。



『せのさんへ



 まず始めに、
 これはラブレターでも、お別れの手紙でもありません。
 だから勘違いしないでくださいね。


 あなたは出会った時から無礼で自分勝手で、
 こちらの都合なんてお構いなしに近寄って来た人。
 これが、私が正直に感じたせのさんの第一印象でした。
 女たらしで気が多くて自信家で、
 ハッキリ言って魅力なんて微塵も感じませんでした。
 でも。
 とても孤独で弱い人なんだとも思いました。
 すごく繊細で感受性が豊かで優しい人。
 優しすぎるから利用されて傷つけられる。
 それがあなたの長所であり、短所でもあるのだけど、
 すこしは自覚しなさいね。
 人を愛することを知らない私が語るのも変だけど、
 常にあなたに寄り添い、笑顔で居てくれる人達、
 向かおうとする方向を一緒に見つめてくれる人達を大切に。
 そしてあなたを全身全霊で愛していると言う人を愛しなさい。


 
 無事にうるはの統合治療が終わって、
 彼女の口からマナと共にいると言われても、
 その時には、彼女の中に私は居ません。
 統合して生まれ変わって再来なんて性に合わないし、
 よくあるHERO物のお話しみたいで笑ちゃう。
 私とせのさんの出会いにハッピーエンドはなかった。
 それが行きついた答えです。
 あなたが以前話していたように、
 私がうるはの中に生き残ったとしても、
 結局はあの子とせのさんが、
 そしてせのさんとあの子が愛し合う。
 そんな結果になるなら、
 私はあるべき時を生き、役目をはたして私自身を消す。
 それはレイも同意見で、
 彼女と一緒に行くと決めたから。
 元々、私は人を殺めた大罪人でアモールの厄介者ですからね。
 うるはの今後はタクに託し、彼が彩さんに託すはずです。
 だからあの子のことは何も心配はいらない。
 せのさんはこれからもるなさんとの愛を大切に育んで、
 自分の心に正直に生きてください。



 Ps、
 これは通りすがりに、
 あなたの人生にほんの少しだけ関わって、
 消えていった女のひとりごとです。     
              茉 』






手紙を読み終えて、
悲しくて、悔しくて、腹立たしくて、
俺は行き場のない感情を手紙にたたきつけ手放した。




星之「……なんてヤツだ。
  どっちが無礼で自分勝手なんだよ。
  人の気持ちなんてお構いなしに、
  近寄って来たのは君もだろ。
  これがひとりごと?
  通りすがりの女だって?
  人を殺めた大罪人で、
  アモールの厄介者なんて誰が言ったよ。
  涼火も流偉さんも、華月先生もダン先生も玉貴さんも、
  そして俺だって!君を愛していたのに!
  こんな手紙一通ですべてを終わらせるなんて、
  あまりに悲しすぎるだろ……
  君と俺の出会いにハッピーエンドはなかったと。
  それが行きついた答えなんだと、
  なに勝手に答え出して居なくなってんだよ。
  俺の本当の気持ちなんて知らないで、
  勝手に完結させてんじゃねえよ!」






静かな部屋にパソコンの起動音だけが流れる中、
ローテーブルの上のクシャクシャになった便箋を見ていると、
淡い寂寥感が広がって涙が溢れてくる。
しかしそれらを追い払うように俺の背後から声がする。
俺ははっとして涙を拭い、振り返りながら立ち上がった。




月 「誰かと電話でもしているのかと思えばひとりごとか」
星之「なる。
  お、おかえり。仕事お疲れさん。
  今からさ、涼火と流偉さんと三人で“英時”やるんだ。
  なるも久しぶりにやらないか?
  その前にそう、風呂だな。風呂入って来いよ」
月 「何を誤魔化してんだよ、せの」
星之「えっ」



なるは不機嫌そうに俺に近寄ると、
すぐにテーブル上のクシャクシャになった紙に気がついて拾い上げた。
これはまずいと思い、咄嗟に彼からそれを取り返す。
俺の言動をますます不審に思ったなるは更に苦った顔になった。



月 「慌てて取りかえすところをみると、
  僕に見られちゃまずいものなのか?」
星之「いや、これは……そ、そう言うんじゃないんだ。
  これは大したものじゃなくて」
月 「だったら見せられるだろ。
  ああ!ふっ。そうか。
  僕が男性モデル専属になってから、
  職場でも家でも話せる時間も減ったしな。
  最近じゃ、夜のお相手もしてないし、
  せのをほったらかしにしてたもんな。
  その腹いせに浮気でもしたのか。
  相手は誰。女?それとも男か」
星之「なに言ってんだよ。
  俺は浮気なんてしてないし、それどころじゃ」
月 「そうか?
  こんな手紙一通ですべてを終わらせるなんて、
  あまりに悲しすぎるんだろ?」
星之「……」
月 「久しぶりに、せのの本当の気持ちとらやを、
  膝を交えてじっくり聞きたいもんだ」
星之「(俺が言ってたことを聞いていた!?
   何時から。どこから!)」




なるは荷物を床に投げると俺の腕をぐっと掴み、
ソファに突き倒して馬乗りになった。
そして気が動転し言葉を失う俺を食いつくように見ている。 
なるはきっと、俺が真実を話すまで解放してはくれないだろう。
それどころかこのまま沈黙を続ければ、
些細な誤解で大切な関係に亀裂が入るかもしれない。
観念した俺は深い溜息の後、重い口を開いた。



星之「この手紙は茉からだ」
月 「えっ」
星之「今日、仕事の帰りに、
  臨時の要件で流偉さんとアモールに立ち寄った。
  その時に涼火から預かり物だと渡されたんだ」
月 「なんで、今頃」
星之「涼火の感情の問題もあって今になったらしい」
月 「じゃあ、さっきのひとりごとは」
星之「手紙の内容にムカついて、
  俺ひとりが馬鹿みたいに叫んでただけだ。
  気になるなら手紙、読んでいい」
月 「それは……」
星之「そのほうが誤解を招かない。
  それに、俺はなるに隠し事なんてない」
月 「そ、そうか。ごめん。いきなり」




なるは軽くキスをしてゆっくり俺から下りると優しく起し、
隣に座って渡した手紙を読み始める。
そして読み終えると俺に「ありがとう」と言って手渡した。



星之「ふっ。読んで思わなかったか?
  身勝手すぎるって。
  これまですったもんだ周りを巻き込んでおいて、
  俺の気持ちを知ってる上でこんな手紙を残すなんて」
月 「僕は……」





暫く何か考え込んでいたけれど、
なるは冷静沈着に答えた。



月 「この手紙は、思いやり溢れる彼女の、
  せのへの愛そのものだと思う」
星之「はぁ?
  無礼で自分勝手でって、散々俺をけなしてるのにか?」
月 「うん。
  せのは当事者だから冷静になれないんだろうけど、
  第三者の僕にはそう感じる。
  どんなに愛しても手に入らず、
  ましてやいちばん関わってほしくない美羽さんに、
  おまえを奪われるくらいなら、
  いっそ自分を消してしまおうってね」
星之「……」
月 「まぁ、流偉さんと天飛さんとの過去があるから、
  彼女の罪滅ぼしなのかもしれないけどね。
  そして僕と結ばれてほしいと願うのも、
  美羽さんに奪われるよりはましってことかな」
星之「そう、なのかな……」
月 「おまえはどうなんだ。
  本当の気持ちって何だ。
  甘い別れの言葉でも期待してたのか」
星之「いや。そうじゃない。
  俺との出会いにハッピーエンドはなかったと思うなら、
  茉にとってはそうなんだろう。
  でも俺は違う。
  彼女との出会いがあったからなると再会できた。
  あのあがきがあったから今があるんだ。
  なのにこの出会いをなかったことにするのは、
  あまりに悲しいじゃないか」
月 「うん……確かにそうだな」
星之「……」
月 「大丈夫か?せの」
星之「ああ。俺には、おまえが居る」



俺は手に持っていた手紙をじっと見つめていたが、
目を閉じて意を決すると破ろうとした。
しかしなるが俺の腕を掴んで、手紙を再び取り上げられる。



月 「破って捨てるなんて、
  それこそ茉さんをなかったことにするつもりか?」
星之「……」
月 「それなら僕が預かっておく」
星之「お、おい」
月 「本当に大丈夫で吹っ切れているなら、
  この手紙の存在があっても全く気にならないはずだ。
  おまえの気持ちが落ち着くまで僕が大切に保管しておく。
  茉さんが本当にレイさんと旅立って、

  美羽さんの中で息づいていないなら、
  この手紙は唯一、彼女が生きていた証しだからな」
星之「なる……ありがとう」 



俺は自分の手となるの手を重ねて感謝する
なるも「寂しい思いをさせてごめん」と言いながら、
俺を抱きしめて濃厚なキスをした。
久しぶりに本音で話したからか、
彼の肌の温もりに触れて安心したからなのか、
なるの胸の中で俺は眠りに落ちていった。






(続く)



この物語はフィクションです。
実在の人物や団体などとは関係ありません。
 


 

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