“愛里跨(ありか)の恋愛スイッチ小説(柚子葉ちゃん編19)” | 愛里跨の恋愛スイッチ小説ブログ

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19、披瀝の後のLiebe




萄真 「心中をぶちまけあおうと言った張本人だからな、俺は。
   今日は包み隠さず話すさ。
   その代わり、柚子葉さん。
   君も偽りなく本音をぶちまけてもらうからな」
柚子葉「……」
杏樹 「二人とも、ケンカしないで。
   元はと言えば、私が至らないことを言ったせいだもの。
   柚子葉さんと久々里さんが揉めたら、本当に申し訳ないから」
萄真 「大丈夫だよ、馬木さん。
   これは揉めてるんじゃないよ。
   それに、君が話してくれたことはとても大切なことだ」
杏樹 「は、はい」
萄真 「お互いのことを話して分かり合えないなら、
   それこそこれから先も揉めてしまう。
   互いを壊してしまう。
   親友ならこんな時こそ信じて言い合えるはずなんだ。
   だから君も、柚子葉さんに話したんだろ?」
杏樹 「そうですね」
萄真 「君もだ、柚子葉さん」
柚子葉「(私だって真剣な気持ちで言ったわよ)」
萄真 「俺が君を茶化して真実を誤魔化してるって、
   本気でそう思ってるの?」
柚子葉「……」



萄真さんはまったく動揺していない。
しかも半ギレの私から視線を外さず、
これからどんなモーションを起こすか。
震える口からどんな言葉が飛び出すのかと、
その雰囲気を楽しんでいるようにも感じられる。
悪ぶれた様子もなく平気で私のことを恋人だと言い切るこの人。
こんな時でさえ、ぞくっとするくらい魅力的で柔和な表情をする。
本当に卑怯だよ。
私だけいつもオドオドハラハラさせられて。
場所を選ばずいつもどストレートに体当たりしてきて、
発せられる言葉は瞬時にハートを貫き潰すくらい鋭くて。
痛いのに、すごく痛いのに。
なのに……なんて、柔らかさを湛えた目をしているの?
この罪作りな微笑みにほっとして泣いてしまう私がいる。
正直悔しいけど、
この甘美な瞳にいつまでも見つめられていたいと願う私もいる。



萄真 「ふっ。
   シャーロックホームズ張りの名推理をして」
柚子葉「(何を言いたいの)」
萄真 「すごい剣幕で俺の神経を疑うとまで言い切っておいて、
   今度はだんまりなんだ」
柚子葉「……」
萄真 「じゃあ、俺から話すかな。
   それとも、君から先に話す?」 
柚子葉「ほ、本音をぶちまけるって言われても、
   これ以上何を話せばいいか」
萄真 「君がさっき俺に聞いただろ。
   子供のこと。
   あの問いに『路美さんは俺の元カノだ』と素直に答えた。
   それだけで君の中で、俺は無神経な男に成り下がったんだろ」
柚子葉「そ、それは、ちがう……」
萄真 「持ってる全ての知識と思い込みだけで、
   勝手にストーリーを組み立てて。
   憶測で話す前にもっと違う言い方で聞こうとはしないの」
柚子葉「誰もが、萄真さんのように思いをストレートに言えるわけじゃない。
   私だって何度もそうしようと思ったわ」
萄真 「一つでも疑問を感じたなら素直に聞けばいいだろ」
柚子葉「そう簡単にはいかない」
萄真 「頭の中であれこれ考えすぎて膨らみ過ぎれば、
   そのうち自分では処理できなくなる。
   だからあんな突拍子もない言葉になるんじゃないの」
柚子葉「そ、それは」
萄真 「本音だけでいい。
   それだけでほかに何もいらない。
   どうしてそう思えないんだ?」
柚子葉「だからそれは」
萄真 「俺はいつも本音で言ってる。
   大切な人にだけは本音でぶつかってる。
   柚子葉さん、君にだ。
   なのに君はどうして」
柚子葉「萄真さんが好きだからよ!」
萄真 「……」
柚子葉「す、好きだから、嫌われたくないのよ。
   嫉妬心、虚無感、劣等感。
   言葉にすればするほど、嫌な自分を見せてしまう」
杏樹 「柚子葉さん」
柚子葉「杏樹さんだってそうでしょ?
   柑太さんが好きだから、嫌われたくないから、
   彼への想いを今日まで私にも言えずに一人で苦しんでたのよね」
杏樹 「うん。そうだね」
柚子葉「自分に自信が持てないから、
   自分を守るため、これ以上心の傷を増やさないためにって、
   自然とそういう思考になる。
   大切な人なら、失いたくない人なら尚更なのよ」
萄真 「好きだから、か。
   やっと本音で話してくれたね」
柚子葉「……あっ。
   (しまった!勢いで彼に告白してしまった)」




キス16


愛の告白。
高級レストランの個室じゃなく、
デートスポットのような素敵な場所でと、ずっと夢見てた。
ゆっくり回る観覧車の中とか、夜の海で波の音を聞きながらとか。
恋愛ドラマで観たようなムードある雰囲気に酔いしれて、
二人見つめ合いハグして甘い時間に浸る……それなのに。
私は萄真さんの巧みな誘導尋問に、
あっさりと引っかかり想いまで暴露してしまった。
杏樹さんも私たちの掛け合いに始めは戸惑っていたけれど、
顔を真っ赤にして両手で顔を隠す私を見て笑い始める。



緊迫していた雰囲気が和みに変わった時、
急に廊下から男性の声がして私と杏樹さんはドキッとする。
しかし萄真さんだけはその声に動じず、
誰かがここへ来ることを知っていたように余裕の笑み。



男性の声「お客様、大変申し訳ございません。
    ここは高級レストランです。
    他のお客様のご迷惑になりますので、
    大声での会話はお控えいただけますか?」
萄真  「そんなに大声だったか。
    おい。いつから聞いてた?」
男性の声「い、いつからと、申しますと?」
萄真  「もう下手な芝居はいいから入ってこいよ」



萄真さんに促されて閉められていたドアがゆっくりと開く。
そこに立っていた人物を見た瞬間、
私も杏樹さんも息を呑み、完全に動きを止められる。
入ってきたのは仕事帰りの柑太さんで、
私たちが知らない間に萄真さんが呼び出していたのだ。
照れ気味な彼は私たちに微笑みながら椅子に腰かける。


男性の声「へ、下手な芝居ってなんだよ」
柚子葉「柑太さん」
柑太 「や、やぁ、柚子葉さん。馬木」
杏樹 「お、お疲れ様です。
   (ど、どうして、増川トレーナーが来るのよ……)」
柑太 「喫緊の問題があるから至急来いって、
   おまえのメール見てびっくりだよ。
   何か只ならぬことがあったんだって思って、
   タクシーに飛び乗ってきたんだぞ」
萄真 「見ての通り、聞いての通りの一大事だ」
柑太 「ふざけんな。
   仕事帰りで疲れ果ててる僕を少しは労えよ」
柚子葉「萄真さん、いつ柑太さんに連絡をしたの」
萄真 「あぁ。
   馬木さんが柚子葉さんを気にして帰りを待ってたって聞いた後」
柚子葉「メールする素振りなんて、全く見せなかったのに」
杏樹 「……」
萄真 「今夜じゃないとうまく話せないと思ってね。
   こんなにあれこれ絡まってたらさ。
   それで?柑太、どこから盗み聞きしてた」
柚子葉「盗み聞ぎ!?」
柑太 「どこからって。
   それは、その。
   悪い。途中から」
柚子葉「途中って、どのあたりから?」
柑太 「と、途中は途中だよ。
   あぁー!どこからでもいいだろ」
杏樹 「(もしかして。
   私の想い、増川トレーナーに知られてしまった!?)」
萄真 「だったら話は早いな」
柚子葉「萄真さん」
萄真 「ん?」
柚子葉「始めから柑太さんに聞かせるつもりだったの」
萄真 「いや、違うよ。
   柑太を呼んだのは君と柑太が何かあったと聞いて、
   栗田まで絡んでるとなると厄介だなと思った。
   だからこいつ抜きでの話はないなって判断したんだ。
   その結果、馬木さんまで巻き込んでしまって申し訳ない」
杏樹 「そ、そんな、申し訳ないなんて」
萄真 「柑太に君の大切な想いを知られるのはマズイかな」
杏樹 「いえ。マズイとかじゃなくて、
   私の心の準備が、まだついてないっていうか……」
柑太 「本当。そういうとこ、萄真の悪い癖だよ。
   いつもは冷静沈着で英明果敢なんだけど、
   こと恋愛に関しては不器用なところがあってさ。
   ワンマンっていうか、傲慢っていうか。
   萄真、少しは乙女心も理解しろよ」
萄真 「るせえ。恋愛下手なおまえが言うな」
柑太 「そのセリフ、そっくりお返しするよ」
杏樹 「あ、あの。
   久々里さんが増川トレーナーを呼んだのは、
   柚子葉さんとのことを知りたいからですよね。
   それなら、ゆっくり三人でお話してください。
   私はこれで失礼しますから」
柚子葉「あ、杏樹さん、帰るなんて言わないで」
萄真 「俺が無茶ぶりしてしまったからね。
   本当に申し訳なかった。
   でも、君も真相を知るべきだと思うよ」
杏樹 「で、でも」
柑太 「馬木」
杏樹 「は、はい」
柑太 「何一人で帰ろうとしてるの」
杏樹 「だって、増川トレーナーは柚子葉さんを」
柑太 「僕は、君の話も聞かせてもらう。
   君の口からはっきりと」
杏樹 「……」
柑太 「それに。
   今は教官としてでなく、一人の男として話を聞く」
杏樹 「えっ」
柚子葉「柑太さん」
柑太 「その前に。萄真」
萄真 「あ?なんだ」
柑太 「おまえとは決着をつけないとな」
萄真 「はぁ?なんだそれ」
柚子葉「(決着って)」
萄真 「決着ね。
   ふっ。
   決着つけるっていうなら、
   俺もおまえにはっきりさせたいことがある」
柑太 「な、なんだよ。
   (萄真……マジギレしてないか。
   完全に目が据わってる)」
萄真 「今日の夕方、研修センターで起きた事。
   包み隠さず話せ」
杏樹 「あっ」
柚子葉「……」
柑太 「は?」



萄真さんと柑太さん。
お互いに怒ったような目をして顔を見合わせている。
私はこんなピリピリした二人を今まで見たことがない。
本当に私と杏樹さんがこの場に居ていいのかと思うほど、
部屋の空気は一変したのだ。
口火を切ったのは柑太さんで、
私に接する態度と思いに矛盾があると指摘した。
萄真さんは無言のまま彼が話し終えるまで聞いていた。
けれどまったく表情を変えずに反論を始める。



杏樹 「すごいね、久々里さんって」
柚子葉「えっ」
杏樹 「病院でも感じていたんだけど、
   彼の愛が、柚子葉さんへの愛がね、半端ない」
柚子葉「そ、そんなことないよ。
   萄真さんと私じゃ、どう考えても釣り合わない。
   今でもまだ現実を受け止められないのに」
杏樹 「私には分かるよ。
   彼の言葉に乗っかる魂。
   柚子葉さんの想いを知った後だからかな。
   それとも彼の愛が揺るぎない確かなものだから、なのかな」
柚子葉「萄真さんの愛……」


星光


侃々諤々の論争は数十分続いたが、
結果は柑太さんが具の根も出ないほどだった。
それでも最後には二人ともスッキリした表情をしていて、
お互いの顔を見て失笑する。



柑太 「はいはい。僕の負け。完敗だよ」
萄真 「勝ち負けの話じゃない」
柑太 「そうだな。
   栗田のことは僕が何とか治める。
   柚子葉さんには指一本触れさせない」
萄真 「それならいい。
   それに馬木さんや研修生にもだぞ」
柑太 「改めて言われなくても分かってるよ。
   僕の役目だ」
萄真 「ああ」
柑太 「あーあ。
   あのコンビニで柚子葉さんと会ってからずっと、
   僕が支えてるって思ってた。
   おまえだってその事実も僕の気持ちも、理解してると思ってたのに」
萄真 「柑太」
柑太 「それなのになんだよ。
   いきなり俺の恋人だなんてさ」
萄真 「俺は想いをありのまま彼女に伝えた。
   その問いに柚子葉さんが答えてくれた。
   それだけだ。
   おまえは彼女に何を伝えた」
柑太 「そ、それは。
   ふっ。何も、だよな……
   よし!その話はこれで終わろう」
萄真 「ああ。そうだな」
柑太 「二人とも悪かったね。
   みっともないところを見せてしまって」
柚子葉「全然。みっともなくないよ」
杏樹 「増川トレーナー。
   私。お二人の本音、聞けて良かったです」
柑太 「そっか」



柑太さんは照れる杏樹さんにゆっくり近寄ると、
優しく頭を撫でて微笑んだ。
私はそんな彼の優しさを見て少し安堵した。
これならきっと、杏樹さんの気持ちと真摯に向き合ってくれると。
レストランを出た後、柑太さんは杏樹さんを、
萄真さんは私を送ることになった。
帰り間際、萄真たちは何か話していたけれど、
私は、柑太さんと二人きりになると動揺している杏樹さんが気になって、
寄り添いながら「大丈夫だよ」と声をかけた。
それぞれの胸中を披瀝しあった時間は平和に穏やかに終わる。
熱いLiebeをぐっと受け止め抱きしめたまま……


夜の街


萄真「柑太」
柑太「ん?何」
萄真「すまなかった」
柑太「えっ。
  な、なんだよ、いきなり。
  なんで謝るんだよ」
萄真「おまえの気持ち、知ってたのに。
  俺は……卑怯な男だよな」
柑太「あ、謝るなよ。
  真から負けた気持ちになる」
萄真「これ以上気持ちを誤魔化したくなかった。
  彼女の心が傷つく出来事が起きれば起きるほど」
柑太「……」
萄真「俺にとっておまえは大切な親友だから、
  虫がよすぎるって分かってるけど、
  失いたくないんだ。
  おまえも柚子葉さんも」
柑太「そんなの……当然だろ」
萄真「馬木さんを頼むな」
柑太「ああ。僕の大切な後輩だ」
萄真「そうだな」
柑太「(なんで謝るんだよ。
  柚子葉さんが萄真を好きだって知っていた。
  三人で行ったうなぎ屋“慕情”で。
  彼女が流した涙で、疑いが確信に変わった。
  僕じゃ、自分の死を簡単に受け入れる彼女を支えられない。
  そう悟ったから萄真、おまえに柚子葉さんを託そうと決めたんだぞ。
  なのになんだよ、これ。
  簡単に謝んなよ。
  嘘でも最後まで堂々としてろよ。
  こんなんじゃ、諦めもつかねえだろうよ)」


訪問者


(続く)


この物語はフィクションです。

 

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