愛里跨(ありか)の恋愛スイッチ小説(なごみちゃん編34) | 愛里跨の恋愛スイッチ小説ブログ

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34、綺麗な別れ

 

 

悲しい事件は世界中の到るところで起きている。
ひどいことに、一日で平均80人超が殺害される恐ろしい国だってある。
それは朝のニュース番組で観ることもあれば、
スマホのSNS主要ニュースで知ることだってある。
その悲惨な事実を知った時は皆、それぞれに胸を痛めるけれど、
辛い感情に襲われても数分で消されてしまう。
なのに、私に視せられたリアルな映像と骨の髄まで到達する痛みは、
消えるどころかどんどん増幅してこの世の地獄を顕にさせる。

 

 


何度も引き止めるかづきさんを避けるように歩く八神さんの視界に、
駐車場入口に立っている大きなマスクした黒ずくめの人物が飛び込んでくる。
しかしその人物が足を踏み出し敷地内に入った途端、
八神さんめがけて猛ダッシュで突進してきたのだ。
革手袋に握られた刃物の総毛立つような白光を見逃さなかった彼は、
ぐっと拳を握り全身に力を込めると覚悟を決めて身構えた。

 

 

新  「(これじゃ避けられない)
   ……クソッ!」
かづき「新くん、お願いだから」
新  「かづきさん、俺から離れて逃げろ」
かづき「えっ」
新  「いいから逃げろっ!!」

 

 

八神さんはしがみつくかづきさんを思い切り突き飛ばし、
庇うように立ちはだかった。
その放胆な勇士をめがけ、黒い悪魔は刃を腹に構え躊躇いなく突っ込んだ。
体と体がぶつかると残忍な刃は柔らかい肌を完全に捉え、
クリーム色の服を見る間に緋色に染めていく。
相手の攻撃を交わすように横にずれた八神さんは、
逃さぬように左手で犯人の肩口を鷲掴みにし、
右手でマスクを乱暴に剥ぎ取った。

 

 

要、好奇心

 

 

新  「お、女!?」
女  「くくくくっ。
   や……やった。
   言われたとおりにやった。
   あなたのために、
   やったわよ、依弦ー!」
新  「依弦!?」
女  「あはっ、あははははは!」

 

 

八神さんを襲ったのは木下さんの母親で、
彼女は血まみれの革手袋をした手を祈るように組むと、
天を見上げてその場に座り込んだ。
しかし八神さんはすぐに、
自分にしがみつくかづきさんの存在に気がつく。

 


新  「か、かづき、さん?」
かづき「あらた、くん……」
新  「かづきさん!?」
かづき「よか…た……」


彼女は突進してくる人物を確認すると、
咄嗟に八神さんの前に入って庇うように抱きついたのだ。
震えながら左手を伸ばし、
いっぱいに広げた指で彼の頬に触れた後、
力尽き地面に崩れ落ちる。
彼女の細い背にはナイフが刺さったままだった。
狂ったように高笑いする残忍な女の傍らで、
虫の息のかづきさんをゆっくり抱きしめる八神さん。

 


新  「かづきさん!
   どうして俺なんか庇った!?」
かづき「……だって、新くんは大雅の……
   大雅の大切な人、だから」
新  「大雅さんの……」
かづき「ようやく……大雅の役に、立てて……
   もう、許して、くれるかな……
   大雅、私を……許して……」
新  「かづきさん、しっかり!
   今救急車を呼ぶから」
かづき「新、くん……あり…がとう。
   大雅を、おねがぃ……」
新  「かづきさん!かづきさん……
   俺なんかのために……
   どうして逃げなかったんだよ!」

 


険しい表情を浮かべたままハンドルを握る東條さんの傍で、
彼の無事を祈るように両手を握りしめる私。
たった五分が、永遠の長さのように感じた。
ようやく駐車場の入口が見えてきて、
東條さんはウインカーを上げてハンドルを左に切るとすぐに車を停める。
八神さんの存在を確認した私たちは、慌てて車を降りたけれど、
駆け寄る東條さんは魂を奪われたように突然立ち止まった。
私は眼の前に広がる残虐な光景に、愕然として息を呑む。
それは隠し持っていたナイフをゆっくりと取り出し、
自らの胸に突き立てる木下さんの母親の自尽と、
赤く染まった地面に座り込み、
力を無くしたかづきさんを抱きしめて、
身体を震わせる八神さんの姿があったからだった。

 

 

 

 

東條さんから八神さんを連れて咲路へ帰るように言われた私は、
頼りなく彼の腰を抱え、寄り添うように店のドアを押す。
「おかえり」「遅かったな」と三人の明るい声がして、
いつもの優しい微笑みが出迎えてくれた。
けれど八神さんにかけたストールがするりと滑り落ちると、
血だらけの姿が顕になる。
それを見た倭さんとにわかさんは驚いた表情を浮かべ、
完全に固まってしまい暫く言葉を失う。
しかし緊迫する状況下でも、神道社長だけはとても冷静で、
事態を察したのか穏やかに言葉をかけた。

 

 

にわか「新さん!?」
倭  「新!どうしたその血!
   怪我したのか!?」
神道 「新。大雅は無事か」
新  「……」
なごみ「あ、あの。
   東條さんはご無事です。
   救急車で病院へ、向かいましたが……ご無事です」
神道 「無事なら良かった」
にわか「救急車って。東條さんはお怪我を!?」
なごみ「いえ。怪我をしたのはかづきさんで、
   東條さんが付き添うと」
倭  「な、何故、かづきさんが」
にわか「なごみさん、かづきさんの容態はひどいんですか?」
なごみ「そ、それは」
神道 「新。大丈夫か?」
新  「……俺のせいです」
神道 「ん?」
新  「かづきさんが刺されたのは。
   俺を庇ったから」
なごみ「新のせいじゃない!
   悪いのは木下さんのお母さんで、木下さんがすべて悪いんだから」
新  「……守りたかったのに、守れなかった。
   彼女を、大雅さんの大事な人を、俺は守れなかった……」
なごみ「新」
神道 「なごみさん、何があったのか詳しく聞かせてくれるかな」
なごみ「は、はい」

 

 

体を震わせて床にうずくまる八神さんの背中を擦りながら、
私は知りうるすべてを神道さんたちに話した。
にわかさんは両手で口を塞いで目を潤ませ、
倭さんは項垂れる八神さんを心配そうに見つめている。
深淵のような深い悲しみが咲路全体を包み、
皆の心に怒りに似た激しい感傷を残したのだった。

 



嘆かわしい事件から十日が過ぎた。
あの後、木下さんの母親は現場で絶命し、
かづきさんも懸命な救命処置の虚しく、
病院に着いて間もなく息を引き取った。
世間では都会の死角で起きた通り魔事件として報道され、
それも少しずつ忘れ去られようとしている。

 

 

それと並んで咲路でも、通常の落ち着きを取り戻しつつあった。
倭さんは新しい環境にも馴染み、神道さんの許で俳優業に精を出していた。
にわかさんは東條さんを気遣いつつも、悩める女性たちの相談に乗っている。
そして東條さんは、かづきさんの葬儀、初七日を終えて仕事復帰した。
悲しみのかけらも見せることなく、いつもの穏やかな笑顔を浮かべて。
後に知ったことだけど、
かづきさんの父親、日下覚善は「恥さらし者は私の娘ではない」と拒否した。
彼女の亡骸は望み通り、東條さんの許へ帰ったのだ。

 

 

私も仕事に復帰し、惰性の日々を過ごしていたけれど、
心の中では釈然としないままだった。
何故、かづきさんは駐車場で八神さんを待っていたのか。
私に視せられた未来予知では、彼と突進し襲いかかる刺客が争う姿だった。
でもまだこの状況で、それを口にすることはできなかった。
そんなことよりも、私が一番気掛かりなのは八神さんのこと。
この十日間、私の自宅で引きこもっている。
会社帰りに咲路に立ち寄り、貰った食事を差し出しても、
まったく手をつけようとしない。
食べも飲みもせず、眠りもしない生きた屍のような八神さんを、
これ以上見るなんて堪えられない。

 

 


ある日の夕方、考えたに考えた末に東條さんに相談する。
すると彼もずっと八神さんを気に掛けていて、
一緒に行こうと言ってくれたのだ。
鍵を開けて薄暗いリビングに入り、シーリングライトをオンにする。
そこに無表情のまま壁に凭れ座っている無精髭を生やした八神さんがいた。
完全に衰弱しきっているその姿を見た東條さんは大きな溜息をつくと、
彼の前に胡座をかいて座り込んだ。

 

 

東條 「なんてザマだ」
新  「……」
東條 「なごみさんから話は全て聞いた。
   あの日何があったか、そして今日までのおまえのことも」
新  「……」
東條 「いつまで仕事を休むつもりだ。
   忌引はとっくに終わったぞ」
新  「……」
東條 「新、いつまでこうしてるつもりだ?」
新  「あぁ……大雅さん」
東條 「やっとまともに話したな。
   明日から仕事に復帰しろ。
   にわかちゃんも神道も、おまえが居なくて困ってる。
   いつまでもなごみさんに心配や負担をかけるな」
なごみ「東條さん、私は全く負担なんてないです。
   ただこのままだと新の身体が持たないと思って」
新  「俺は……頼りない男です。
   一人の人間も守れない」
なごみ「新」
東條 「そうだな。
   今のおまえは誰も守れない頼りない男だよ。
   なごみさんに危険が迫っても、また同じことになる」
新  「……」
なごみ「東條さん」
新  「ふっ。そうですよね。
   かづきさんも守れず、なごみも守れない。
   こんな俺なんか、咲路にもなごみの傍にも居ないほうが」
東條 「あの日!かづきはおまえに、最後なんと言った」
新  「……なんと」
東條 「新。今のおまえはかづきの死を無駄にしてるだけだ。
   あいつは捨て身でおまえを守ったんだぞ。
   『私の大切な人』だと言って力尽きたんだろうが。
   悲しいのはおまえだけじゃない。
   彼女を守れなかった私だって辛いんだ!」
新  「大雅、さん」
東條 「これはかづきから、おまえ宛の手紙だ」

 

 

東條さんはジャケットのポケットから一枚の封筒を出し、
八神さんの手のひらに乗せた。
表には達筆で綺麗な文字で『八神新様』と書いてあり、
私にはその白い洋封筒がキラキラと輝いて見えた。

 

 

新  「かづきさんが、俺に……」
東條 「彼女のバックに入っていた。
   ……付き合ってる頃は楽しかったよ。
   屈託なく笑う彼女をファインダーから覗き見た時、
   結婚を決意して……あの頃は人生で最高に幸せだった。
   でも結婚して間もなくして啀み合いが始まり、
   事故に遭って私は彼女の浮気を知った。
   それがキッカケでお互いに本音で語り合うこともせず別居した。
   離婚してからもずっと敵対心をむき出しにする彼女に、
   何も言えないまま時だけが過ぎた。
   いつか本心を素直に伝えようと思いながらも、結局何も言えなかった。
   なのにかづきは私に、本心の詰まった数枚の手紙を残して逝ってしまった」
なごみ「大雅さん」
東條 「卑怯だろ。
   自分だけ気持ちを伝えて、私の気持ちは聞かないなんて。
   卑怯過ぎるだろ、自分だけ綺麗に別れを告げて」
新  「大雅さん」
東條 「新、おまえに私のこの悔しさが分かるか。
   天を仰いで何度話しかけても、何も答えてくれないこの虚しさが!」
新  「大雅さん……すみません!
   お、俺、何もできなくて、本当にすみません……うぅ」
東條 「新。私たちは、どんなに辛くても、どんなに悲しくても、
   やるべきことをする、そういう天命を与えられてるんだ。
   この辛く苦しい気持ちをバネにしてやるしかないんだぞ。
   真の悪魔退治はまだ終わってないんだ」
新  「はい」   
      

手渡された手紙をぐっと握りしめて男泣きをする八神さん。
その肩をぽんぽんと叩く東條さんの目にも涙が浮かんでいる。
潤んだ瞳で彼らの姿を間近で見守る私も、
改めて自分の天命を受け入れる覚悟を持ったのだった。

 

 


〈かづきの手紙〉


『大雅へ。
突然のお便りをお許しください。
あなたがこの手紙を手にしている時、私はきっとこの世には居ないでしょう。
まず、あなたに謝りたい。
あなたを裏切って、たくさんあなたを悲しませて本当にごめんなさい。
今更何を言ってるんだって、あなたは思うでしょうね。
こんなことになって、自分の過ちに気がつくなんて本当に情けない。
あなたから譲ってもらった財産全てを木下依弦に奪われて、
私は一文無しになってしまいました。
でも、そのお蔭で真の財産がなんだったのか気がつきました。
新くん、にわかちゃん、倭くん、あなたが大切にしている人たち。
それが一番の宝物で財産なんだと。
もし大雅が私の犯した罪を許してくれるなら、
私もあなたの宝物たちを遠く遥かな場所から見守りたいです。
どうか身体に気をつけて、大雅らしく生きてください。
私の夫になってくれたことに心から感謝。

                       東條かづき

 

追伸。
ここに麹町駅四番出口ロッカーの鍵を入れていきます。
茶封筒には私の知るうる三諸の悪事の全てが入っています。
私の代わりに悪魔退治をお願いします』

 

ハグ
(続く)

 


この物語はフィクションです。

 

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