“愛里跨(ありか)の恋愛スイッチ小説(胡桃ちゃん編28)” | 愛里跨の恋愛スイッチ小説ブログ

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傍にいる


28、Stand by you (傍にいるよ)



翌週。
いつものように出勤し、黙々と業務をこなした私。
ひわちゃんの元夫、智明さんは体調不良で休んでいて、
現場では彼の危急存亡の秋を語る社員も少なくなかった。
そのわけを知っている私は、一日二日と過ぎていくうち複雑な気持ちになる。
そして10月31日金曜日夕方。
今夜は紅の工房でレッスンがある日。
仕事が終わって会社を出ると、私はお決まりのコースで最寄り駅から帰宅の途につき、
流れるライトと黒い景色をぼんやり眺めていた。
車窓に映った自分の姿を見ていると、
紅と糸島へ向かう車中で話したことを思い出したのだ。




地下鉄2



<胡桃の回想シーン>


(紅の車の中)


胡桃「紅。智明さんのこと、ごめんなさい」
紅 「どうした。何故くるみが謝る?」
胡桃「だって。私の友達のことで、また紅に嫌な思いをさせてしまってるし、
  紅の心を傷つけたかもって思うと、私…」
紅 「ん?それは俺の過去のことを言ってるのか。
  それとも麻木田さんの家に入ったときのことを言ってるのか」
胡桃「それは…」
紅 「起きたことは仕方のないことだろ。
  くるみが故意に起こした問題じゃないし、君だってある意味被害者なんだから」
胡桃「うん…。そう言えばそうだけど」
紅 「心配するな。
  俺にとったらあいつらの揉め事なんて子供の喧嘩レベルだ。
  これくらいのことで動じたりしないよ」
胡桃「でも、まったく平気ってわけじゃないでしょ?」
紅 「まぁ、俺も完璧な人間じゃないから平気ってわけではないが(笑)
  何よりこの騒ぎの当事者がいちばん大変だろう?
  起きた出来事もそうだが、その後克服するまでがな」
胡桃「克服…」
紅 「そう。事件が起きて傷を負った者は、
  関係修復や傷ついた心のケアをしていかなきゃならない。
  それをなかったことにするまでには時間もかかるし、
  その壁を乗り越えるには、精神的にかなり強くならなきゃいけないからな」
胡桃「紅…」
紅 「彼ら自身が引き起こしたことだから仕方がないんだが、
  これからひわさんと麻木田さんが、互いに乗り越えなきゃならない。
  ひわさんの元旦那はもっとだ。
  俺も、そうやって生きてきた」
胡桃「うん…
  私ね、今まで穏やかに生きてきたのよね。
  悩みがまったくなかったわけじゃないけど、
  家族のことや友人や映研仲間のことで、これといった問題があったわけでもないしね。
  職場でも上司や同僚にも恵まれてるほうだと思う。
  だからひわちゃんや智明さん、それに佑のことも最近こんな風に大変になっちゃって…
  いざって時にどう対応していいかわからなくて、
  今は正直どう皆と付き合っていけばいいか悩んでるんだ」
紅 「そうだな。
  今回の問題はめったにあるようなことじゃないんだろうけど、
  平凡に生きてきたなら、突発的に事が起きた時の対処なんてわからなくて当然だ。
  でもな、相手がいる出来事は、自分だけでどうこうできることじゃないし、
  思い悩んだって回答は何も出てこない。
  だから、これまで通り接していけばいいんじゃないか?
  考えるべきは、くるみが無理をしないで自然体で関われる人たちかどうか、
  いろんなことがあっても、どこまで心を開くことができるかだと思うが」
胡桃「紅」
紅 「ん?」
胡桃「紅も焦さんや琥珀さんと何かあったの?
  だから“枇杷”の仕事がなくなってしまったの?」
紅 「ん?うん…。
  くるみとは何でも話すっていう約束だから言うが、
  この間皆が“枇杷”に集まった時に、焦さんから絶縁されたんだよ」
胡桃「えっ!?…もしかして、佑が紅さんに会いに行った日のことがキッカケで…
  彼が紅に何か迷惑なことしたんじゃない?」
紅 「いや。佑くんのことはまったく関係ない。
  これは俺と焦さんが長年抱えてきたことだから」
胡桃「あの、何も知らない私が言うのはおこがましいかもだけど、
  創大さんと作業場でお話した時、ちょっと気になったことがあったのね」
紅 「気になることか。創大に何を聞いた?」
胡桃「焦さんは萩焼の陶芸家で、紅も焦さんに技術を学んだのよね?」
紅 「ああ。そうだよ」
胡桃「紅は“枇杷”の仕事をずっと手伝ってたのに、どうして萩焼に戻らないの?」
紅 「……」
胡桃「創大さんが言ってたの。
  私に陶芸を教えている紅は、とても嬉しそうに土練りして手びねりしていて、
  その姿を見ると一緒に萩で仕事していたときのことを思い出すって。
  また萩焼の器を焼いてくれるようになればいいなって彼、私に染み染み話してたのよ。
  だから紅がまた萩焼の陶器を作れば、
  “枇杷”のお仕事だって戻れて、また焦さんとも」
紅 「くるみは何も心配しなくていい。
  今まで通り、君が安心してうちへ来れるようにするし、
  万が一以前のように厄介な奴が来ても、君を煩わせることはしないからな。
  何があっても、俺はくるみの傍に居るから」
胡桃「う、うん…
  (紅さんの言葉はすごく嬉しいし、ホッとできる。
  でも、何でも話すって約束なのにどうして理由聞かせてくれないの…)」



物思いにふける



電車を降り外に出ると、久しぶりに琥珀さんから連絡が入ってきた。
彼女はずっとレッスンを紅に任せてることを謝罪し、
連絡できなかった理由と現状を話してくれた。
紅や佑とのその後を気にかけていた彼女に、私は明るく近況報告したのだ。


胡桃「琥珀さん、やった!焦さんと付き合うことになったんですね!」
琥珀『うん(照)でも、まだ信じられなくて複雑な心境よ』
胡桃「どうしてですか?やっと想いが伝わって両思いになれたのに」
琥珀『うん。それはすごく嬉しいんだけど、師弟関係で私生活もそのまま。
  お互い工房や店もあるから、何ら変化がないしまだ実感がね』
胡桃「あぁ…なんだかそれ分かります。
  私も紅さんと付き合うようになって、彼女としての実感が湧いてきたのは最近だし」
琥珀『そう。しかし、くるみちゃんもいろいろ大変だったわね。
  ひわさんと麻木田さんのことや、佑くんとのことも』
胡桃「はい。連絡がひわちゃんから入ってきたときは、
  本当にどうなることかと思いましたけど、紅さんのお陰で助かりました。
  それに佑のことも…
  紅さん、まったく動じてないなんて言ってくれて、
  知れば知るほど、彼ってすごいなって感じます」
琥珀『そうね。紅は無愛想だけど、頼りになる男だからね』
胡桃「そうですね。
  本当は今、私のことやひわちゃんのことより、
  紅さんの仕事のほうが大変だと思うんですよね」
琥珀『ん?紅の仕事?』
胡桃「はい。あの、琥珀さん。聞きたいことがあるんです」
琥珀『ん?何?』
胡桃「紅さんは何故“枇杷”の仕事を辞めさせられたんですか?」
琥珀『紅から聞いたのね』
胡桃「はい。焦さんから絶縁されたって聞きました。
  でも、その理由までは話してくれなくて…」
琥珀『それはね、紅が頑なに萩焼の器を焼かないって焦さんに言ったから』
胡桃「えっ」
琥珀『どうして紅が頑なに言うのか、私にも正直分からない。
  でも、事故のことが関係してるのは確かだと思うのよね』
胡桃「あの爆発事故が…」
琥珀『焦さんは今でも、紅が戻ってくると信じてるのよ。
  それに紅の萩焼の腕は、焦さんに引けを取らないくらい素晴らしいわ。
  だから、また器を焼いてくれるキッカケになるならって思って、
  くるみちゃんのレッスンをお願いしてるのもあるの』
胡桃「そうだったんですか」
琥珀『ええ。貴女が傍に居てくれたら、
  殻に篭った紅の心の扉を開けることができるって感じたから』
胡桃「私が…」
琥珀『くるみちゃん。うちでのレッスンは京都の作品展が終わったら再開するから、
  もう暫くは、紅に陶芸の基本を教えてもらってね』
胡桃「はい」
  


私の心はなんだか複雑だ。
まだ器の焼き方ひとつ碌にできない私が、
この道のプロとしてやってきた紅さんの力になれる?
何年も硬く閉じた紅の心をほぐして気持ちを変えることなんてできるの?
彼の心も読めず、やっと彼女としての実感を得られたばかりなのに、
いったい何ができると言うの…



琥珀さんや創大さんからお願いされ、思いの丈を聞かされて戸惑うばかりだ。
人生経験豊富で大人の紅さんが、
私とのレッスンでまた萩焼に目覚めてくれたら嬉しいと正直思うけど…
私は自宅に帰ると二階に駆け上がり、着替えを持ってバスルームへ入った。



シルエット2


その頃、佑も仕事を終えて駐車場に向かう廊下を歩いていた。
彼の足取りは決して軽いものではない。
ジャケットのポケットから携帯を出すと着信を確認し、
携帯画面をぼんやり見ている。



<佑の回想シーン>


♪~♪~♪~♪~♪(佑の携帯着信音)


佑 「もしもし。くるみ」
胡桃『佑、お疲れ!』
佑 「おお。お疲れさん」
胡桃『仕事終わった?』
佑 「ああ。今終わったとこ。
  くるみは今何処に居るんだ?」
胡桃『今ね、BAOに居るのよ。
  今日から三日間、新作が100円だってCMでやってたから慌ててき来ちゃった』
佑 「えっ。新作借りるのか?
  俺、昼休みに今夜観るやつ3本借りちゃったよ」
胡桃『それ旧作?』
佑 「うん」
胡桃『だったらさ、それ来週に回して今日は新作観ようよ』
佑 「えーっ。新作何本借りるつもりなんだ?」
胡桃『ん?今持ってるのは2本だけど』
佑 「じゃあ、その2本と俺が借りたので計5本、全部鑑賞すればいいじゃないか」
胡桃『5本って…一本が90分と仮定しても450分で、7時間半だよー』
佑 「いいじゃん。明日も観れば。
  ピザーロでスペシャルミックスピザと、
  カロリーオフコーラ頼んでやるからいいだろ?」
胡桃『ん?んーっ…よし、それで手をうった』
佑 「おし!交渉成立!
  電話で話してたら時間がもったいないから、今から迎えにいくよ」
胡桃『うん!じゃあ、これ借りて待ってるね』
佑 「おお!」



キス3


佑 「くるみ…今頃何してるんだろう。
  やっぱり、今夜もあの男のところへ行ってるんだろうな(苦笑)
  俺に連絡なんてしてくるわけ、ないよな…
  はぁーっ」



佑は携帯をポケットに入れると深く大きな溜息をついた。
それと同時に、背後から呼び止める声が聞こえ、
佑はびくっとして立ち止まり、振り返ってその人物を確認した。
その声の主は外科の生島医師で、職場では彼の良き相談相手でもある。




病院



(福岡市早良区、某総合病院一階社員通路)


生島「山吹、お疲れさん。
佑 「あっ。生島先生、お疲れ様です」
生島「どうした?大きな溜息をついて」
佑 「ここのところ、ずっと残業続きでしたから疲れたなーって。
  先生はもう上がりですか?」
生島「ああ。患者が安定したんで、一度うちへ帰ろうと思ってね。
  スタットコール〔※1〕が多くて、最近の俺のベッドは医局のソファーだったからな。
  いい加減うちに帰らんと、妻と娘二人に逃げられる(笑)」
佑 「そうですか(笑)
  でも、先生はいいですね。
  家に帰ったら、笑顔の奥さんと娘さんたち、
  そして温かい料理が先生を出迎えてくれるんですから」
生島「ん?山吹は結婚決めてる彼女は居ないのか?
  時々、食堂で女性スタッフと話しながら食事している姿を見かけるが、
  あの子は彼女じゃないのか」
佑 「あっ、はい。それがとても複雑で…
  正直どうしていいか分からないんですよね、俺」
生島「そうか。俺でよかったら今からでも話し聞くぞ?」
佑 「いいんですか!ありがとうございます!」
生島「おお。そこに入って話そうか」
佑 「はい!」


二人は駐車場手前にある売店横の休憩所に入ると、
自動販売機で缶コーヒーを買い、椅子に腰掛けた。
たばこに火をつけ、ふーっと煙をはく生島先生は、
コーヒーを見つめる佑に話しかける。



生島「それで?何を悩んでる。
  ナースとの間で三角関係にでもなってるのか。
  それとも好きでもない女に言い寄られてるのか?」
佑 「どちらも当てはまるけど、どちらでもないって言うか…」
生島「なんだ。分かりやすく話せよ」
佑 「はぁ…。俺、好きな女性が居るんです。
  同じ大学で学部は違ってましたけど、サークルも一緒でした。
  大学卒業してから7年間ずっと毎週会ってた女性です」
生島「ん?毎週会ってるなら問題ないじゃないか。
  相手だって気に入らなきゃ、7年もずっと君と一緒に居ないだろ」
佑 「はい。俺もそう思って安心してたんですよ。
  別に付き合おうって言葉に出して言ったわけではなかったけど、
  これまで一緒に居ることが当たり前になってたから、
  これからも彼女とずっと一緒だって思ってたんですけど、
  相手はそうではなかったんですよね。
  その女性に最近男ができて、初めて知ったんですよね。
  俺は本気で彼女が好きだったって…」
生島「うーん。そうか」
佑 「その男にも偶然会ったけど、俺なんか勝ち目がないくらいの人物で、
  くるみはその男にゾッコンで…」
生島「くるみさんっていうのか。好きな女性は」
佑 「はい…。
  しかもそのタイミングに、俺にもある女性が言い寄ってきて、
  その人から、くるみが居たときと同じように過ごしてほしいって言われてる。
  彼女と観た同じ映画を観て、彼女と行った店やコンビニで同じものを買って、
  飲んだり食べたりしてくれって言うんです。
  俺は正直、そういうことを望む女性の気持ちもよくわからないから、
  今夜もその人と会う約束をしてるんだけど、どう接していいのか…」
生島「そうか…ふーっ(たばこを消す)
  それはきっと、対抗意識だろうな」
佑 「はぁ」
生島「君が好きになったくるみさんと同じ立場に自分の身を置いて、
  君がどう対応してくれるか見てるんだろう。
  君の表情やしぐさを観察して気持ちを確認してるのかもしれない。
  現実にどうだ?同じ気持ちでその女性を接していられるか?」
佑 「いえ…
  そういうことをすればするほど思い出すんですよ。
  あいつの顔や声を…最近じゃ夢にまで見てしまう」
生島「そりゃあ重症だな。
  山吹はまだくるみさんのことが好きで、男ができても諦められないんだな。
  だから、他の女と居ても心は満たされないわけで」
佑 「はい…」
生島「心から愛する女の存在が自分の心に常駐すると、
  どんなにいい女が近寄ってきたってその代わりにはならないもんだ。
  他の女と居て寂しさを気を紛らわすことはできても、心の奥底までは埋めてくれない。
  自分の傍に居て安心をくれるのは、心から愛するその女本人しか居ないわけだ。
  くるみさんを上回る何かがその女性にない限り、君はずっと彼女への想いを引きずる。
  彼女に彼氏が居てどうしても叶わない恋なら、
  なるべくくるみさんに触れないようにすべきだな。
  今日も今からその女性に会うんだろ?」
佑 「はい…」
生島「そんな要望、二人のこれからのためには絶対によくない。
  影武者デートはやめようって断るべきだな。
  そしてくるみさんに触れない場所で楽しくできるか、試してみたらどうだ?」
佑 「そうですね…そうします。
  先生。お疲れのところ、俺の話を聞いてくれてありがとうございました」
生島「おお(微笑)話を聞くくらいしかできないけどな」


ブーン、ブーン…(生島の携帯バイブ音)


生島「ちょっと待った。まさか急変じゃないだろうな…
  なんだ、うちからだ」
佑 「よかった」
生島「(携帯を取り出る)もしもし…ああ、今から帰るところだよ。どうした?……
  ん?それで教えたのか……うん……うん。そりゃまずいな……
  とにかく今から戻る…じゃあ…(切る)」
佑 「ご自宅で何かあったんですか」
生島「ああ。やれやれ、今度はうちからスタットコールだ。
  じゃあ、今日はこれでな。
  今度一杯やりながら愛についてじっくり話そうな」
佑 「はい。是非」


生島先生は慰めるように佑の肩をぽんぽんと軽く叩く。  
佑はぐっと目を瞑り、先生から言われた言葉を全て受け入れるように、
手に持っていた温い缶コーヒーを一気に飲み干した。
駐車場入り口で別れた佑は車に乗り込むと、
和音さんとの待ち合わせ場所へと向かったのだ。





夕暮れの渋滞


お風呂から上がって着替えを済ませた私は、
急いでレッスンとお泊りセットを用意するとそそくさと家を出る。
国道202号線から糸島に入り、紅さんの家まであと10分の距離を走っている頃、
紅さんの自宅では新たな問題が発覚していた。
険しい顔で仁王立ちする紅さんの前に憤慨する女性が立っていて、
彼に向かって鬼の形相を浮かべ罵声を浴びせている。
その傍らに居る創大さんは、二人の様子を固唾を呑んで見守っていた。


(糸島、紅の自宅裏口前)



紅 「よく俺に会いに来れたな!
  どうして俺の家を知ってるんだ!誰に聞いた!」
鞠子「お義姉さんによ!」
紅 「はぁ!?お前、兄貴んちまで押しかけたのか!
  いったいどういう神経してんだ!」
鞠子「だって急を要する事だし、お義兄さんにも関係することだからよ!
  わざわざ遠くから九州まで会いに来たんじゃないの!
  こんなところで立ち話なんかしてないで、
  いい加減、家へ上げてくれたっていいじゃない!無神経な人ね!」
紅 「無神経?無神経なのはどっちだ!」
創大「(耳元で)紅さん、くるみさんがもうすぐ来ます。
  どうしますか?」
紅 「すまん。ここじゃくるみが来たときわからない。
  お前はリビングに居て、あの子が来たら母屋の作業場へ通してくれ」
創大「はい。何かあったら言ってください」
紅 「ああ」
鞠子「ふん!何年立ってもこの言動、紅は変わらないわよね」
紅 「とにかく!俺はこれから仕事があるんだ!帰れ!」
鞠子「このまま帰れないわよ!貴方のお父さんのことでしょ!?
  それに私は貴方の元妻よ!どうも思わないの!?」
紅 「ああ。思わないね!
  親父?ふん!俺に親は居ない!
  俺の親父は俺が24歳の時に死んだんだ!
  それにお前があの男を選んで別れてからはもう赤の他人だ!
  今更女房面して俺の前に現れるな!」
鞠子「はぁ!?あのね、それだけじゃないのよ!
  今、私を追い返したら困るのは貴方とお義兄さんよ!
  もしもの時に財産分与の件もあるし、
  きちんと書類にサインしてもらわないと私も困るのよ!」
紅 「なんだ、金か。
  俺も兄貴もあいつの本性を知って、とっくの昔に放棄した。
  だからあの男のものは全てお前にくれてやる!
  そのままあの男と一緒に地獄まで持っていけばいい!」
鞠子「最低!悪魔!血も涙もないあんたより、よっぽど匡さんのほうが人間らしいわ!
  少なくとも匡さんは、私をそんな風に罵ったりバカにしたりしないわよ!」
紅 「そうか。そりゃ幸せなことだな」
鞠子「許せない…絶対に許せない!
  匡さんが助かって、紅なんかこの世から居なくなっちゃえばいいのよ!!」




紅さんの家に着いてエンジンを切り、空を仰いで車を降りた私。
気がつけば辺りはすっかり暗くなり、
野鳥のさえずりと屏風のように立ち並んだ木々を揺らす風音が微かに聞こえる。
森閑と静まり返る漆のような森林に、
紅さんをののしる女性の大声がいきなり響き渡り、耳に飛び込んできた。
私はその声に驚き、きょろきょろと紅さんの家を眺めた後、
意を決して再び甲高い声のするほうへ恐る恐る歩き出したのだ。



足6


(続く)



この物語はフィクションです。



※1、スタットコール…救急車で運ばれてきた患者が思ったより重症な時や、
  病棟で入院中の患者が急変した時など、科別を問わず診察中以外の医師や看護師、
  スタッフがその場に駆けつけること。
  



☆愛里跨のひとこと☆

皆様、こんにちは♪愛里跨でございます(*^.^*)

いつも私のブログを見てくださってありがとうございますラブラブ

お待たせいたしましたが、やっと小説28話更新することができましたアップ

まだ完全復活というわけではないですが、何とか元気を取り戻しつつあります(*゚ー゚*)

今回、私の身近に起きたことはある意味成長痛と心得て、自分らしく邁進しようと思います目

これからも皆様からパワーを頂きつつ、お仕事&執筆活動も頑張っていきますので、

皆様キラキラ今後とも宜しくお願い致しますね(●´ω`●)ゞ





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