ある時父と祖母が例の小言の煩い伯母の元に旭川まで行った

なんでも病気で入院してるそうだ

「一緒にくるか?」

と言われたが嫌いな人に会いたくないので「宿題があるから」と断った

後でこれまた例の家庭裁判所で務めている伯父の元へも行ったそうだが

「お前も来れば良かったのに

寿司だろ、果物もお菓子も旨いもんたらふく食べれたのに」

「えー、良いなぁ」

「今度退院の日にまた行くけれど、どうする?」

「行きたい!」

それは本当に子供心から出た言葉だった

遊びに行けばお菓子が沢山食べれる♪とそんな軽い遠足気分だったのだ

この言動であんな事になるとは思ってもいなかった


まず昼間はその伯母の所へ行った

「アリカちゃん、よく来たわね、明日退院なのよ」

「そう…ですか」

この人の外面モードと内面モードの切り替えはどうなってるんだろう

一見ただの愛想のいいおばさんんしか見えないのに、誰も居ない時は鬼の形相で辛辣な事を言うから怖い

その後お寿司を食べに行き、夜は従姉の作ってくれた手料理だった

「うちのYは本当によく出来た子だ

アリカも料理位そろそろ出来るようにならないとな」

「…」

あなたの前で作ってないだけで、料理自体は小学校2年生の時から作ってますが何か

父をキっと見ると、えへらえへら笑っているだけだった

お前!自分の娘が貶されてるのに無視かよ

そして食べ終わって、さぁ、これから寝ましょうって時だった


「アリカ大事な話がある」

と伯父の方から切り出された

時間は夜23時を回っていたと思う

「もう眠いんだけど、どうしても今日じゃなきゃダメなの?」

「お前の方から聞きたいって言ったんだろう?」

この人は一体何を言ってるのだろう

「とにかく座りなさい」

この人がこう言い出したら、梃子でも動かない

仕方なく聞く事にした

「長い話になるから」

とオレンジジュースを出して貰った

「お前のお母さんは生きてるんだ」

「え?」

今までずっと死んだと聞かされていたので、まさに青天の霹靂だった

「あとお前には、3歳差のお姉ちゃんも居るんだ」

これはもっと聞かされていない話だったので驚いた

とにかく同じ話を何度もフィードバックさせながら話すので、要約するとこんな話だった


父による借金と母の育児ノイローゼが原因で離婚調停中に産まれたのが私

家庭裁判所の判定で母は姉が父が私を引き取る事になった

だけど父は東京勤務で周りに知り合いは居ない

そんな中で育てるのは大変だから施設へ入れてしまえというのが親族の総意

だけどそれじゃ可哀想だからと引き取ってくれたのが祖父母だそうだ


「嫌いになって別れたんじゃないんだから

大人になったら戸籍謄本調べて会いに行けるんだから

お前は我儘だから、誰とも上手くやっていけないだろ?

うちのYもあの子は嫌いだって言ってたぞ」

こっちだって大嫌いだ

いつも良い顔しておきながら、その人が居なくなった途端に悪口言う女なんて

ふと父の方を見ると、曖昧に笑って見せた

初めからこうなる事を判って誘ったんだ

自分の娘の事も自分で言えないのかと思うと、失望をした

この人には何度失望させれれば良いんだろう

「とにかくいつかお母さんに会った時に恥ずかしくない様に生きなさい

そしてまた一緒に暮らせば良い」

この人はどうしてこんなに馬鹿なんだろう

今更一緒に暮らした所で何になるんだろう

私は誰かから見て恥ずかしいか恥ずかしくないかを基準に生きなきゃいけないんだろう

そんなつまらない生き方してたまるか

一生他人から見て良い人生を選んで生きていけばいい

私はそんな人生まっぴらだ


帰りの車の中でやっと口を出た言葉が

「いつかちゃんと話さなきゃと思っていたんだ」

だったら自分で話せば良いだろうが!

「お菓子があるって言えば付いてくると思ったんでしょ?上手い手使ったね」

「お前がショックを受けると思ったから、お前の為を思って」

「そういう時だけ言うの止めてくれる?疲れたから寝るね」

閉じた瞼の裏で、ああこの人はまた自分の手では何も下さず他人を使ったなぁ

そしていつも自分が悪者になるのをとことん避けたがる

どうしてこんなに汚いんだろう